電話以外の方法も考える
今までは欲しいと思ったアイテムを作るのは、そんなに難しいことじゃなかった。
なんとなく作っていれば、なんとかなった。それは、この世界……――、ゲーム内で使うアイテムだったから。
でも今回は違う。今回は、現実世界とゲームの世界を繋ぐアイテムを作ることになる。だから、とっても難しい。
今まで、こちらの世界とゲームの世界をつなぐアイテムを作った人はいるのかな。私のように、何かしらアイテムを作ることのできるスキルを持った人なら、あり得るかも……。
もしそういった人が今までにいたとしたなら。その人たちは一体どうやってアイテムを作ったのかな……。
「私が難しく考えすぎなだけだといいんだけど……」
思わず言葉が漏れ出る。だって、別世界を繋ぐアイテムだもん。普通のアイテムとして作成して、結局繋がりませんでしたとなったら、割とショックを受けるよ。
パソコンの電源が急につかなくなったくらいには困っちゃうよ。
「とにかく作ってみたらいいんじゃないですか」
多分、私が戸惑った表情を浮かべていたんだろう。ずんだ餅さんは笑った。
「そもそも、ゲーム会社の人だって、緊急事態に備えて何かしらの手立てを考えているはずです。いくら何でも、まだ雇用契約を結んだばかりの新入社員さんだけに、この案件を一任するってことはないでしょう」
それもそうか。当たり前のことだけど、ずんだ餅さんに言われて気づいた。確かに、こちらの世界の現状を全部把握することはできないにしろ、何かしら情報を得られる方法はナイトメア・ソフトウェアさんだって持ってるはずだよね。
そもそも、シュウさんみたいにナイトメア・ソフトウェアの社員さんでゲームにログインするのも仕事の一環になってる人たちもいて、今現在もこのゲーム内に取り残されている人もいるかもしれない。
「そうです! 他のナイトメア・ソフトウェアの社員さんで、このゲームの世界に取り残されている人を探すというのはどうでしょうか」
まぁ、電話もどきを作ってみて、シュウさんと連絡が取れるようになってからだけど。思わず口走る。すると、ずんだ餅さんが意地わるそうな笑みを浮かべて言う。
「それはいい考えです。……でも、一体どうやって?」
べちん。いったん期待にふくれあがり、舞い上がった気持ちは、すぐさまずんだ餅さんの言葉でしぼんで、地面に落ちる。
「ナイトメア・ソフトウェアの社員さんいらっしゃいますかと呼びかけたとして。もし本当に社員さんがここにいたとして。呼びかけに普通に応じてくれるとは思えません、危険ですからね」
確かに。
「それに、呼びかけに応じてくれた人がいたとしても。それが本物の社員さんであるかどうかの確認を取る方法を考える必要があります」
うわぁ、簡単なことじゃなかった。頭を抱える私に、ずんだ餅さんはぼそっと言った。
「……まぁここに一人、既にいるっちゃ、いるんですけどね……」
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