再会

 しかしこの転送、まだ2回しか経験してないけれど、かなりつらい。どうせなら、一瞬で転送してくれた方がいいのに。


 私は、下を見て思わず目を覆う。高所恐怖症の私に、この仕打ちはひどい。宙に浮かせて運ぶなんて、ほんと、もう嫌。相手の性格の悪さがにじみ出てるんじゃないかな。


 数分後、体が下降を開始する。どうせまた、前と同じ場所でしょ。そう思っていたけれど。どうやら今回は違ったみたい。


 以前連れてこられた場所は、原っぱが広がっていた。でも今回は、街だ。街、といっても、見た感じ、誰もいないしどこかさびれている。


「……」


 下ろされた時、ふとシュウさんの顔を見た。シュウさんはなんだか、考え込んでいて声をかけるのがはばかられた。


 周りを見渡す。まるでゴーストタウン。真っ暗なのが、余計に怖い。こんなところに呼び出すなんて、やっぱり性格が悪いと思う。


「よく来てくれたね」


 ふと後ろを振り返れば、そこには前にあったあの男性が立っていた。私を見て、にっこり笑う。


「君の特殊スキルは、とても魅力的だ。手が増えれば、できることが増える。でもそれが間違った人に渡ってしまっている。それは、問題だ」

「間違った人に渡ってしまったという根拠はあるんですか」


 私が尋ねると、男性は真顔になる。


「僕には分かる。君にはその能力、ふさわしくないとね」

「あなたの基準ですか」


 私は思わず呆れた声が出る。


「そりゃあそうだよ、僕はこのゲームを作ったいわば、この世界の神みたいなものだからね」


 男性はふんと鼻をならす。その自信はどこから来るんだろう。私は思わず首をかしげたくなる。


「この世界の神って、いったいどういうことですか。すべての人のステータスが見えて、特別スキルを持つべきでない人にスキルが渡っているのが分かる、とかですか」


 私の言葉に、男性は首を横に振る。


「いや、そもそもすべての特別スキルは、僕に渡るべきだ」

「は?」


 私は思わず口走る。しまった、心の声が出た。ものはついでだ。言いたいことをこのまま言っちゃおう。


「そもそも、すべての特別スキルが誰か一人の手に渡ることはないと思います。このゲームは、現実とリンクしているゲームなのですから。誰かが一人勝ちするゲームではありません。みんながそれぞれ、自分の長所を見つけるゲームでもあります」


 私の言葉に、男性が首をかしげる。


「特別スキルを持っているのは、何かを変えたいと思っている人だけです。特別スキルの数だけ、自分を変えたいと思っている人たちがいるということです。ですから、あなた一人だけに、その力を集中させるわけにはいきません」


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