反抗
朝起きて、仕事に行って……。この当たり前の毎日が、もう少しで終わりを告げるかもしれない。そう思うと、私はとても嬉しくなる。
仕事に行ってからも今日の夜のことを考えると、仕事がはかどった。ああ、私に足りなかったのは娯楽とそれに回すための時間だったのかもしれない。
忙しいと寝ることだけに集中してたけど、楽しいことを考える時間は大事だったんだ。私はそんなことを考えながら仕事をこなす。
そんなとき、金本部長がやってきて言った。
「この仕事、やっといて。明後日までに」
「この量は今日中には無理です。明日はお休みですし」
私が言うと、金本部長はさも当たり前のように言う。
「休日出勤してくれればいいよ」
いやいや、休日出勤してくれればいいって何よ。私の大事な休みだよ。それをそうしてくれて構わないみたいな上から目線で言われても困るよ。
「いえ、私も予定がありますので急に言われても困ります。他の方に頼むか、ご自分でなんとかしてください」
私ははっきりと言った。すると、周りの視線が自分に集まっていることに気付く。
その表情はどれも、驚きに満ちた表情。そうだよね、今まで私、金本部長の仕事、断ったことなかったもん。
そう、今の私はもう、金本部長を怖いと思わない。嫌われたくないと思わない。仕事上の人間関係が崩れたらまずいとは思わない。だから、言いたいことを言える。だってもう、辞めるんだから。
「……」
金本部長は黙る。
「もう、仕事与えないぞ」
「だから私、もうこの会社辞めるんで。引継ぎが終わったら辞職するんで。あ、ちなみにもう、休日出勤しませんし。溜まっていた有休も消化させて頂きますので」
私の言葉に、金本部長の顔が赤くなる。あ、怒ってる。そして部長は何も言わずに私の席から離れていった。やった!
ただ、気がかりなのは私がそうやって引き受けてきた金本部長の仕事、誰かがやらされることになるんじゃないかと、ちょっとだけ心配。
そんなことを考えていたら、大藤さんが職場の入り口に立っているのが見えた。
「休憩行ってきます」
私はそう、向かいの席に座ってるお局様に声をかけて、大藤さんのところへ走り寄る。彼女は笑って私に小声で言った。
「紗蘭ちゃんの嫌いな上司、なんか怒ってたね」
「私が反抗期だからだと思いますよ」
私も冗談めかして答える。あんな部長のことに時間を費やしたくない。私は、話題を変える。
「あ、そうそう。今日何時くらいにログインします?」
「私? えーとね、何時にしようかな……」
私たちは、職場を離れて休憩室へと向かったのだった。
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