物的証拠をカズアキさんへ
私は、受付嬢さんたちの待つ休憩室に急いで戻った。よかった、クエストマスターさんに、本物の受付嬢さんじゃないってばれたらどうしようって、内心ひやひやしていたんだ。でも従業員さんの顔と名前を憶えてないってことだよね。まぁ、このクエスト受注所でどのくらいの人数の人が働いているか知らないから、それが大人数だったら仕方がないことだとは思うけど。今回は、クエストマスターさんが従業の顔を覚えてなかったことが、功を奏したらしい。
休憩室に入ると、私はすぐさま受付嬢さんたちに取り囲まれた。
「大丈夫だった!? 何もされてない!?」
「え、は、はい」
私がしどろもどろになりながら答えると、受付嬢さんたちの顔が安堵の表情に変わる。
「よかった、もし本物の受付嬢じゃないってことがばれたらすぐにでも乗り込むつもりだったから」
お局さんが勢い込んで言う。こういう時、お局さんは本当にありがたい存在だ。しっかりと味方につけておけば、いざというときに助けてくれる。これは、どこの職場でもだいたい同じだよね。
私は受付嬢さんから預かったICレコーダーのような機械を私の腕についている腕時計に重ね合わせる。すると、ポップアップ画面が立ち上がる。
『レコーダーのデータを腕時計にコピーしますか』
私は「はい」のボタンを押す。実はもう、今日はスキルの上限まで使い切ってるんだ。1つ目は、ICレコーダーみたいなこの機械の使用を私にもできるよう改造したとき。2つ目は、ギルドマスターさんの腕時計を改造したとき。私の腕についてるこの腕時計。3つ目は、1つ目を改造したときとほぼ同時に作り出したこの腕時計。実はこれ、録画や写真撮影ができちゃう機能を搭載した、なんちゃって腕時計なんだ。
ちなみに私がICレコーダーらしきこの機械を自由に使える権限は、今日付けで破棄されるよう設定してある。元々そういう約束で受付嬢さんと話をつけてたからね。
これで、必要な物的証拠はこの腕時計型記憶装置に集約された。あとは、これをどうやってゲーム会社の人に届けるかだけど。これは、カズアキさんに任せるのが一番いいかな。
私は、受付嬢さんにお礼を言って、休憩室を出た。そして再び従業員用入口を通って建物の外へ出る。扉を出た先に、シュウさんとカズアキさんが待っていた。私は、カズアキさんに腕時計型記憶装置を渡して言う。
「うまく行きました。必要な物的証拠はこの中にすべて入っています。これごと、カズアキさんのお店のお得意様にお渡し頂ければと」
そして、腕時計型記憶装置の使い方をカズアキさんに伝える。これで、この件も一件落着になるといいな。
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