その4 木の盾
フリントさんが帰った後、私はるんるん気分で傷薬を作り続けていた。その視界の端には、フレンドリストのダイアログボックス。そこには、フリントさんの名前が入ってる。
この世界に来てから初めてのフレンド。フレンド上限までフレンドが増えることなんてないと思うけど、フレンドができると、なんだかうれしいよね。
しかし、目玉商品にしようと思ってた商品、もう売れちゃった。何か新しい商品を考えないと……。そう思っていると、店の前で物音がした。
ふと顔を上げれば店の前に、一つの木の盾が。そして、走っていく人影。あれだな、持ち物整理をしていて邪魔になった装備を捨てたってところでしょ。
カンナおばさんからもらった地図を見直してみると、どうやら近くに武器防具を扱うお店があるようだし。そこで新しい装備を買ったから、これはもういらないって感じかな。
でも、ポイ捨てはいかんでしょ、ポイ捨ては。私は大きなため息をつきながら、木の盾を拾い上げる。ゲームの初期装備といえば、木の枝や木の剣、木の盾が上がる。
「防御力が心もとないから、とりあえず私が装備しとこうかな……。なにか、付与しよう」
私は、木の盾を眺める。よし、思いついた。
「このアイテムに言霊・物語付与のスキルを使用します」
今回作るのも、これまたロマンシリーズ。ロマン防具。拾った木の盾には中央に大きな爪痕がついていた。そこから思いついた内容を、そのまま言葉にしていく。
『身代わりの木の盾。ドラゴンのひっかき攻撃を防いだこれを装備することで、一度だけどんな攻撃も無効化できる。ただし、最初の攻撃のみを無効化。連続攻撃なら、一回分のみ無効化し、二回目からは防げない。また、どんな弱い攻撃でも一回とカウントするため、本当に必要なときに装備するのがおすすめ』
そう言うと、木の盾が淡い光を帯びる。来ました、アイテム変化のお時間です。そして光が収まった時には、見た目は全く変わらない木の盾がそこにあった。
アイテム説明欄を見て、私は小さくガッツポーズ。よし、これで何か戦闘に巻き込まれても、一度は防げる。間違って使わないように、今は装備しないでおこう。私は、盾をトランクに収納する。
しかし、これだけ好きなようにアイテムの内容を変更出来たら、ゲームバランスが大変なことにならないかな。そう私が思った時だった。
『スキル言霊・物語付与の使用回数上限に達しました。日付が変わるとリセットされます。またプレイヤーのレベルが上がると、使用回数上限が上がることがあります』
システムダイアログが立ち上がった。あ、やっぱり使用回数上限があったか。説明なかったけど。とりあえずは、1日3回が上限みたい。
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