第55話 第二王女の到着

 陛下から話を聞いてから二週間が経過していた。

いよいよ今日は隣国の第二王女が来国する日である。


「あぁ、もう二週間経ったのかぁ。なんだか気が重いなぁ」

「そうですね。何かあっという間でしたものね」

「とりあえず王宮行くか」


 樹は重い腰を上げた。


「おはようございます」


 王宮に入っていつものように応接間へと通される。

そこには陛下と公爵の容があった。


「ああ、おはよう。こんな早い時間からすまないな」

「いえ、それは構いませんよ。早起きはいい事ですから」

「ははは、間違えないな」


 陛下は豪快に笑った。


「それで、その曲者姫様はあとどのくらいで到着予定なのですか?」

「後、1時間と少しかと」


 そう公爵が言った。


「はぁぁぁ」


 樹が大きなため息をついた。


「珍しいな。お前さんがため息なんて」

「そりゃ、ため息も出ますよ。僕より曲者ってどんだけですか!」

「お、お前さんも自分が曲者な自覚はあるようだな」

「まぁ、色々暴走してますからね」

「それが分かってるなら自重してもらいたいんだがな」


 陛下は苦笑いした。


「お、そろそろ時間か」


 おしゃべりをしているうちに1時間が経過したようであった。


「樹とアリアよ、貴族用の検問所まで迎えに行ってきてくれ」

「分かりました」

「承知しました」


 樹はやっとの思いで立ち上がった。


「お疲れ様です」


 検問所は王宮から歩いて10分ちょっとの所にある。

樹は検問所のトップであるオリバーに声を掛けた。


「あ、樹さん。それにアリアさんもお疲れ様です。いよいよ姫様が来ますよ」


 そう言うと門の外に目をやった。

一台の馬車がこちらに向かっているのが分かる。

 近づいて来るとその馬車がいかに高位な家のものかが直ぐに分かる、豪華な装飾がされていた。


「オリエンス王国から参りました」


 護衛の騎士が馬から降りてそう告げた。


「お待ちしておりました。国内から護衛に参加させて頂きます、綾瀬樹と申します」

「アリアと申します」

「これはこれは、学長、副学長自らが護衛して頂けるとは。感謝致します」

「では、王宮を目指して行きましょう」


 樹がそう言うと馬車は徒歩でついて行けるくらいゆっくりと進んでいく。

その後ろを樹たちは歩いて護衛に務めていた。


「到着しました」


 10分ほどで王宮の前へと到着し、馬車は止まった。


「お嬢様、王宮へと到着致しました」


 騎士がそう言うと中から少女が降りて来た。

歳は樹より少し下で、金髪を腰の位置まで伸ばし、赤い瞳をしていた。

服装はいかにもお嬢様って感じだ。


「ふんっ」


 降りて樹と顔を合わせると何故かそっぽを向かれた。


「え、俺、何かした?」

「いえ、特にしていないと」

「だよな」


 どうやら、曲者という噂は間違って居ないようだ。


「お待ちしておりました」

「ようこそ我が国へ」


 限界で陛下と公爵が待っていた。


「どうぞこちらへ」


 王宮のメイド長により、皆は応接間へと通された。



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