第33話 組織のアジト

 樹とアリアは洞窟の中に足を踏み入れた。

樹は魔力を平行に広く流すイメージをし、この洞窟内を把握している。


『ライト』


 アリアは光魔法の初級魔法であるライトを使い、洞窟の中を照らしてくれている。


「なんだか、気味が悪いですね」

「そうだな」

「きゃぁぁ!」


 アリアが悲鳴を上げて樹にくっついてきた。


「な、なんですか!?」

「ただのコウモリじゃないか。おどかすなよ」

「だ、だってぇ」


 アリアは涙目だった。

こういう所は普通の女の子だと思う。


「それより、前から何か来るぞ」


 樹の気配探知で前から二人、近づいてきているのを感じた。


「な、なんだ貴様ら!!」


 相手も樹たちに気づいた様子だった。


「仕方ない。やるか」


 樹は一瞬で相手との間合いを詰め、みぞおちに拳を打ち込んだ。

もう一人もアリアがかかと落としをお見舞いしていた。

生では初めて見る技であった。

出くわした男二人は気絶していた。


「悪く思うなよ。こっちも仕事なんだ」

「これで、確証持てましたね」

「ああ、間違えなくヤツが居る」


 確証を持った二人はさらに奥へと進んでいく。

その突き当りに分厚い鉄製の扉があった。


「ここだな。ぶち破るか」


 樹は身体強化をすると思い切り扉を蹴り飛ばした。

すると分厚い扉は向こう側へと倒れた。


「これはこれは、お二人さん。今回もまた荒っぽいご登場ですね」


 そこにはグレーのスーツにフチなし眼鏡、オールバックの組織のボスが居た。


「見つけたぞ今回こそは逃がさない」

「おや、私のお友達があなた方を歓迎しに行ったのですがね。やはりあいつらでは相手にもなりませんか」

「ああ、お前のお友達なら今頃、夢の中だろうぜ」

「そうですか」


 ボスはパチンと指を鳴らした。

すると、どこからともなく手下と思われる男女が現れた。


『ファイアーボール』

『ライトアロー』


 魔術師どもが魔法を放ってこようとしている。


『断絶結界』


 樹は結界の中でもかなり強力なものを展開した。

この断絶結界はありとあらゆる物理、魔法攻撃を跳ね返す。

自分たちが展開した魔法で敵は吹っ飛んでいった。


「「クソが!!」」


 残りの連中もナイフや剣で襲い掛かってきた。


パーン、バン、バン


 乾いた銃声が鳴り響いた。

アリアお得意の麻痺弾による攻撃だ。

ほどなくして、手下連中は全滅した。


「後は、お前だけだぞ」


 辺りには砂ぼこりが舞っていた。


「ふっ。やはりお二人の前には相手にもなりませんか」

「ああ、準備運動にもならないぜ」

「私たちを侮りすぎですよ」

「なら、これはどうかな」


 ボスはスーツの内ポケットからあオイルライターを取り出した。


「何をするつもりだ?」

「ここの空間は砂ぼこりで満ちている。そこに発火物を置いたらどうなる?」

「ふ、粉塵爆発……!」

「その通りだぁ!!」

「まずい!」


 樹はアリアを連れて出口へと向かって全力で走った。


 ドゴーンッ!


 後ろで凄い音共に衝撃が走った。

天井は崩れ落ち、組織の連中は下敷きになっていた。


『物理結界』


 樹は物理衝撃に強い結界を展開し、何とか、爆発の衝撃を逃れ、洞窟の外へと出てきた。

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