第28話 クリストフ家のお風呂

 夕食をご馳走になるとアリアとエリーヌ、カミーユさんはお風呂に入りに行ってしまった。

樹とクリストフさんが取り残される形となった。

その間、樹はクリストフさんと他愛もない話をしていた。


「ここの風呂って三人で入れるほど広いんですか?」


 樹は昨日、お風呂を遠慮したので知らなかったのだ。


「ああ、カミーユは大の温泉好きでな、風呂だけはこだわりたいと聞かんかったんじゃよ」

「へぇ、僕もお風呂は好きなので気持ちわかるなぁ」

「おお、そうなのかね。うちは地下から汲み上げた温泉のかけ流しだからな。きっと樹も気に入ると思うぞ」

「それは楽しみです」


 元日本人の樹としては風呂はかなり大事だ。

一日の疲れが取れる気がする。


 その頃、お風呂では。


「アリアさん、割と胸大きいんですね。羨ましい」

「私、着痩せするのよね。エリーヌもこれから成長するわよ」

「本当ですか?」

「ええ、私もエリーヌと同じ年の頃は今のエリーヌより小さかったわ。それより、あっちの方が凄いと思うわよ」


 アリアはカミーユさんの方を指さした。


「あら、私ですの?」


 カミーユさんは少し驚いた表情をした。


「このハリのある胸! どうしたらこのハリを保てるんですか?」


 アリアとしては将来のために聞いておきたかったのだ。


「うーん、適度な運動かしらねぇ」

「本当にそれだけですか?」

「ええ、そうよ。おじいさんは剣術が達者でね、よく稽古付けてくれるのよ。そのおかげかしらね。だからアリアちゃんも大丈夫よ。ちゃんと運動してるんだから」

「だと、いいのですが……」


 その頃、樹たちは。


「どうしてこうも女の子たちは風呂も買い物も長いんでしょうね?」


 ポットで淹れてもらったコーヒーも底をつきかけていた。


「まあまあ、そう言うでないよ。人生長いんじゃから気長に待たんと」

「まあ、そうですけどね」


 この余裕、年の功というやつだろうか。


「上がったわよ」

「樹さま、お先に失礼しました」

「気持ちよかったぁ」


 女子たちがお風呂から上がったようだった。


「お、じゃあ、俺も入ってこようかな。クリストフさんはどうされます?」

「ワシは朝風呂派じゃから、一人でゆっくりと入ってくるといい」

「じゃあ、お言葉に甘えて」


 樹は脱衣所で服を脱ぐと風呂場へと入った。


「おお、こりゃ、広いなぁ」


 綾瀬家の風呂も広いと思ったがそれ以上だった。

樹はザブンと広すぎる湯舟に浸かった。


「ふぅ、疲れが取れていくなぁ」


 その時、風呂場の扉が開く音がした。


「あれ、クリストフさん、やっぱり入ることにしたのかな?」

「樹……さん」


 そこにいたのはバスタオルを巻いたエリーヌだった。 


「えっ……!?」

「お背中お流しします」

「何で!? どうしたの!?」

「こうしたら樹さんは喜ぶとアリアさんが」


 あのメイド自分が失敗したから今度はエリーヌにやらせてみたのだ。


「大丈夫だから。上がってて。ね?」

「そう、ですか……では、」

「ふぅ、アリアには後で説教だな」


 そんなことを考えながら樹は広いお風呂を堪能した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る