第27話 オーセールの領主様

 かなりガッチリとした体格をした男性が階段を降りるとフェラリーに尋ねた。


「おや、そちらはお客さんかね?」

「はい、お父様。こちらは冒険者の樹様とアリア様です。危ない所を助けて頂きました」

「そうだったのか。娘が世話になったな。感謝する」


 そう言って領主様は頭を下げた。


「僕らは当然のことをしたまでですから、頭を上げてください。領主様とあろうお方が、易々とこんな若造に頭を下げるもんじゃありませんよ」

「いやあ、若いのに人間ができておる。ワシは国王陛下より、この街の統治を任せられているテオドールと申します。さ、どうぞ上がってくれお茶でも飲もうじゃないか」


 半ば強引に領主邸の応接間に通された。

そこで、メイドさんがお茶を淹れてくれる。


「樹君は紅茶かコーヒー、どちらがいいかね?」

「あ、じゃあコーヒーでお願いします」

「アリアさんはどうする?」

「で、では、私も樹さまと同じで大丈夫です」

「そうか、二人ともコーヒー派か。ワシはコーヒーはあまり得意では無くてな」


 そう言って領主様は笑った。


 アリアも普段は紅茶を飲むことが多い。

ここでは、樹に合わせてコーヒーを飲むことにしたのだろう。


「お待たせ致しました」


 樹とアリアの前にはコーヒー、領主様とフェラリーの前には紅茶が置かれた。


「ほう、二人とも、その若さでSランクとはなかなか腕が立つんだな」

「いえ、そんなことは」


 樹はコーヒーを一口すすった。


「これ、美味いな」

「確かに美味しいです」


 アリアも樹と同感なようだった。


「このコーヒーが気に入ったのなら後で豆をあげるぞ」

「え、いいんですか? 是非お願いします」

「ああ、構わんぞ。ところで樹くんたちはどうしてこの街に来ていたんだ?」


 領主様から問われた。


「はい、実は、公爵様の御息女の護衛として参りました。今日は一日暇になったもので観光でもしようかと思いまして、二人でこの街を周っていたのです」

「何!? 公爵殿の御息女がいらしていたのか……」


 領主様は驚いた表情を見せた。


「公爵令嬢の護衛を任されるとは、相当、腕が立つのだな」

「いえ、そんな事は」

「謙遜も行きすぎると美学では無くなるぞ」


 領主制は目を細めて優しく笑った。


「では、我々はこの辺で失礼しようと思いますよ」

「なんだ、もう行くのか。もっとゆっくりして行けば良いのに」

「そろそろ戻らないと夕食に遅れてしまいまので」

「そうかそうか。またこの街に来ることがあれば是非、寄ってくれ」

「はい、その時はご挨拶に伺います」


 樹とアリアは席を立つと領主邸を後にした。


「綾瀬樹か……なかなか面白いやつみたいだな」


 そう呟くと領主テオドールは不適な笑みを浮かべた。



「ただいま戻りましたー」


 樹たちはクリストフさんの屋敷に戻って来た。


「おぉ、戻ったかね」

「観光は楽しまれましたか?」


 クリストフ夫妻が出迎えてくれた。


「ええ、ここはなかなかいい街なようですね」

「それは何よりですよ。さ、夕食が出来てますからお二人もご一緒にどうぞ」


 樹たちは夕食を頂く事にした。







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