第26話 助けた少女の正体
樹は一気に全力の殺気を放った。
ひるんだ所を掴まれていた手を捻り上げて、後ろに倒した。
「お、おい、お前らやれ!!」
男たち二人が腰からナイフを抜き、一人は樹、一人はアリアに襲いかかってきた。
樹はそれを綺麗にかわし、みぞおちに拳をねじ込んだ。
「ぐっわぁ」
うめき声と共に男は気絶してしまった。
アリアの方はナイフを叩き落とし、顔面に回し蹴りをお見舞いしていた。
ただのメイドと思っていたアリアの戦闘スキルに残ったリーダー格の男は驚いた表情をしていた。
「き、貴様ら、何者だ!?」
樹とアリアはポケットからプラチナに輝くギルドカードを出した。
「え、Sランだと……!?」
男は絶望の縁に立たされた表情をしていた。
「分かったなら、そのお友だち連れて、さっさと去れ」
「は、はいぃ。お、おい、お前ら立て。行くぞ」
倒れた奴らに方を貸しながら去って行った。
「大丈夫か。災難だったな」
樹は助けた少女に声をかけた。
「は、はい。危ない所を助けていただきありがとうございます」
少女はお礼を言うとペコリと頭を下げた。
年は樹と同じくらいだろうか、金髪を胸の位置まで伸ばし、青色の瞳がとても美しい。
「無事で何よりだよ」
「私、フェラリーと申します。ここの領主である、テオドール伯爵の長女です」
フェラリーと名乗った少女はニコッと笑った。
「「領主の娘さん!?」」
樹とアリアは驚いた。
「申し遅れました。私、Sランクの冒険者をしております、綾瀬樹と申します」
「樹さまにお仕えしております、アリアです」
「あなた、普通のメイドじゃないでしょ? 普通のメイドにあんな戦闘技術は無いわ」
フェラリーがぐいっとアリアに迫ってきた。
「実は、私もSランクの冒険者でして」
「やっぱり! そんなことだろうと思ったわ」
フェラリーは何故か得意気な顔をしている。
「領主のご息女がお一人で街を歩いていたのですか」
「ええ、護衛とかはうっとおしいですから。それと敬語は要りません。あなたたちは私の恩人ですから」
そう言ってフェラリーは微笑んだ。
「そうか、まあ、なにはともあれ領主の娘さんを助けられてよかったよ。それじゃあ、気を付けてな」
樹たちは立ち去ろうとしていた。
「お待ち下さい!」
フェラリーに呼び止められた。
「どうした?」
「良かったら、うちに来ませんか? お父様にも紹介したいですし」
「俺たちは構わないけど、いいのか?」
「もちろんですわ!」
フェラリーの強い要望により、樹たちはフェラリーのお屋敷にお邪魔することにした。
数分歩くとひときわ大きなお屋敷が見えてきた。
流石は領主の屋敷だ。
「ここが私の家です。さあ、入ってくだっさい」
フェラリーは屋敷の扉を開けた。
「ただいま戻りました」
「おお、戻ったのか遅かったじゃないか。おや、そちらはどなた様だね?」
フェラリーと同じく金髪に筋肉質な男性が正面の階段から降りてきた。
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