なんくるないさー修学旅行
旅行
秋。高校生最大のイベント、修学旅行。
うちの高校は、高校二年生の秋に沖縄修学旅行がある。
「飛行機こわ」
「和臣、まだ動いてもないぞ! 早く飛ばねぇかなー!」
「なんで田中の隣り.......うるさい」
「やべぇ、興奮する」
「高瀬ー、席代わってー! 隣りが変態ー!」
「俺も嫌だ」
後ろからの静かな拒否にも、田中は怯まない。
「あ、動いた! 和臣、飛ぶぞ、飛ぶぞ!」
「良かったじゃん」
もう俺は座席前の画面でテトリスをやると決めた。
「あ! 和臣、やばい耳キーンてなる」
「ああ.......縦横ミスった.......」
縦棒来ないかな。
「うおお! 飛んでる! めっちゃ飛んでるぞ!」
「ああ.......なんでまた.......」
3回連続で赤いS字が降ってきた。早く縦棒が欲しい。
「おおおおお!!」
「「田中うるさい!」」
周りの奴らから怒られても、田中は窓に張り付いて騒いでいた。俺のテトリスは瀕死、そろそろ縦棒が来てもいいと思う。
「ああ! きた! 来たぞ縦棒!」
やっときた縦棒をはめようとして。
「和臣ー、暇」
突然田中がのしかかってくる。縦棒は横に回転し俺のテトリスは死亡。
「あああ!!」
「うわ、和臣テトリス下手くそ」
「誰のせいだ!? せっかく縦棒来たのに.......!!」
一発逆転のチャンスが。田中、死刑。
「和臣、しりとりしようぜ」
「やだ。俺はテトリスをやる」
「何時間やる気だよ! 俺は暇なんだよー!」
「1万まで数数えてろよ。そしたらしりとりしてやる」
「1、2、3.......」
これでしばらく静かになるだろう。周りから俺を讃える拍手が聞こえてきた。
田中は80まで数えた所で寝て、俺のテトリスが何度目かのニューゲームを終えた時、飛行機は地上に降りた。
「田中、着いたぞ」
「.......ん? え? 沖縄?」
「そう、沖縄。俺から離れるなよ、こんな所で迷ったら本気で帰れない。俺が」
「.......情けねぇ.......」
修学旅行は3泊4日。1日目の今日はクラスごとに各所を周り、明日は班ごとのレクリエーション。残りは自由行動。
「和臣、フラフラするなよ。本気で帰れないからな」
資料館をまわっていただけなのにずるずると田中に引き戻される。その日は田中の後を着いて歩いて、きちんとホテルに着いた。
「おお.......ちゃんとホテルに着いたぞ」
「中学の時は迷子になったもんな」
部屋は高瀬と同じ部屋。高瀬は荷物を置いてさっさと部屋を出ようとした。
「ん? どこ行くんだ?」
「.......呼び出された」
「え。まじか、さすが」
「.......修学旅行マジックだろうな。じゃ、行ってくる」
正直高瀬を好きな女子は多いと思う。あいつ足はやいし。
やることがないので部屋を出て1階の売店に向かう。階段で葉月に会った。
「あ、葉月」
「和臣? あなたここで何してるの?」
「売店行こうと思って」
「.......一緒に行きましょう。あなたきっと帰れないわ」
「さすがにホテルの中じゃ迷わな.......」
じろりと睨まれ大人しく後に続く。
「.......高瀬くんって、彼女欲しいのかしら?」
「え。何? まさか俺捨てられるの?」
泣くぞ。泣きわめく。
「違うわよ!」
べしんっと叩かれる。
「.......あなた高瀬くんと同室でしょ? 何か言ってなかった?」
「呼び出されたって言ってた」
「その、何か、こう。嬉しそうじゃなかった?」
「うーん、どうだろ。嬉しくない事はないだろうけどな。あいつ今彼女いないし」
「そ、そう! そうよね!」
急に元気になった葉月がスタスタ階段を降りる。
「和臣!」
「なに?」
「.......」
葉月は周りを確認して、ちょっと小声で言った。
「自由行動、一緒にまわりましょ?」
「ええ.......いいんですかぁ? 葉月さん」
「.......どういう反応よ」
「行く。絶対行く。楽しみ」
「そう! ならいいのよ!」
売店に行けば何故か木刀が売っていて、買おうか迷っていると田中が目の前で木刀を買っていたのでやめた。
そして夜。部屋に山田とうるさい田中がやってくる。
「和臣! 怪談大会だ!」
「.......雰囲気合わねー」
「ホテルだからこその雰囲気! ほら電気消せよ!」
不覚にも山田の怪談が怖かったことは、誰にも内緒にしておくことにした。
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