季節

「和臣、お迎えだぞー!」


 輝かないゴールデンウィークも終わり、学校に行けば、うるさい田中が叫んでいる。


「んー」


「お前.......! 当たり前だと思いやがって! 俺はまだ許してないからな!」


「田中最近いい感じじゃん」


「それとこれとは別だ!」


 席を立って、そのまま葉月の後について帰る。

 あれから学年中に俺達の噂が飛び交ったが、全てが葉月を賞賛する声であり、葉月は女子男子共に付き合いたいランキング1位を獲得していた。

 ちなみに俺は圏外。泣くぞ。


「和臣、今日は町田さんが来るのよね」


「ああ。清香と遊ぶんだってさ」


「そう。.......ねぇ、和臣って料理得意?」


「簡単な物しか作れないな。カップ麺とか」


「.......それは料理では無いわ」


「今日明恵さんいるから、教えてもらったら?」


「ええ」


「自炊できるようにならないとなぁ」


「自炊はしてたのよ。でも、さらに上を目指すのよ」


「.......いつも1品料理だもんね。キャベツ!みたいな」


「素材を生かしてるのよ」


「.......」


 それから。


 季節が流れて。


 夏の仕事も。

 楽しい文化祭も。

 涙の体育祭も。

 田中の持ち物に、ビーズの小物が増えたのも。

 優止の携帯の待ち受けに、メガネの女性が載ったのも。

 ウチの店に、笑い上戸な常連さんが増えたのも。

 父さんに、武将のような将棋仲間が増えたのも。

 ゆかりんが女優デビューしたのも。

 清香がおめかしして学校に行ったのも。

 兄貴が「口うるさい」と彼女にフラれたのも。

 姉貴が化粧に時間をかけるようになったのも。



 全部、違う季節の話。


 俺の身長が急に伸びて、漢の友情が崩れかけたのも。

 葉月と2人で、寒い中自分の番号を確認しに行ったのも。

 京都で釘次先輩にニヤニヤといじられたのも。

 兄貴がまた見合いをしたのも。

 変態がちょくちょく俺の周りをうろつくのも。

 変態と酒を飲んだのも。


 全部、違う季節の話。


 葉月の隣りで過ごした、季節の話。


 俺の普通の、物語。

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