第136話 クーデターその後
俺は今回のクーデターの首魁公爵邸の用心棒を倒してから、急いで結婚式のパレードに戻ろうとした時、クーデターの首魁公爵邸から一人のインドラ合衆国の士官学校の制服を着た女生徒が出てきたのだった。
彼女は俺の父親の廃棄帝とヤマト帝国の女帝である義妹のカサンドラの推薦を受けヤマト帝国からインドラ合衆国の士官学校にヤマト帝国の国費で入学している才媛だ。
当然士官学校の生徒だからインドラ合衆国の機密保持のため、俺や俺の妻達が面接を行い名前も顔も精神的内面も良く分かっている。
彼女はカサンドラとは母親の関係から従妹の関係でセシリヤという名前だ。
セシリヤの左手には血染めの生首の髪を掴み、右手には血の滴る宝剣が握られていた。
御淑やかな公爵令嬢とは言えない姿だ。
セシリヤの真青な顔や制服には返り血が飛び散っていた。
セシリヤは俺に膝をつき臣下の礼をとり、血塗られた宝剣を背に隠して、血染めの生首を差し出して
「クーデター計画の首謀者であるわが父の首です。
お検め下さい。
主様達の命を奪おうとして国の秩序を忘れ、国を乱し、国民の不安を増大させたので、私の手で討ち果たしました。
ただ、クーデター計画の首謀者の一族郎党は捕らえられたのち、斬首の刑が相当でしょうが、我が一命に変えて幼い弟達の助命を嘆願します。」
と述べると、父親の生首をそっと床に置き、自分の首に宝剣をあてて
「お父様、私もそちらに参ります。」
と自害しようとする。
俺はセシリヤの後ろに転移して首の後ろを叩いて気絶させる。
公爵邸の制圧部隊の指揮官はサコンさんだったので、セシリヤの身柄を預けて戴冠式と結婚式のお披露目パレードに戻る事にした。
クーデター後のクーデターに関係した15家の貴族達に対する制圧状況が巡検士部隊が主体となった制圧部隊から伝えられてくる。
公爵邸については公爵を討ったセシリヤのおかげで公爵邸内に残っていた者達は武装解除され公爵邸内で関係者など全員が軟禁されている。
また、督戦の為、現場にいた下級貴族の5家のほとんどの家臣団がクーデターの現場にいたため制圧は直ぐに終了し、家屋に残っていた者は武装解除のうえ現場指揮官の男爵邸に集められて軟禁した。
残りの子爵以上のクーデターに加担した15家中の10家で、特に身分の高かった公爵邸と伯爵邸以外の8家に対する制圧については、子爵以上の8家も先の5家よりも身分が高いとはいえそれ程多くの家臣団がいるわけでなく、8家の館が近かったこともあり、8家の中で一番大きな子爵邸にクーデターが発生すると同時に立て籠もった。
事前に巡検士によって、その子爵邸の詳細な家屋の状況が調べられている事から、子爵邸の弱点を突き内部に侵入して8家の一族郎党全てが捕縛された。
この者達は制圧に対して見苦しく抵抗して、自らクーデター計画に加担していたことを示すような状況であった。
戴冠して女帝となったカサンドラと俺との結婚をヤマト帝国の帝民に知らせるパレード中に起きたクーデターは失敗に終わったのだ。
クーデター計画に参加した家々の者達も取り押さえらえ、武装解除のうえその家々に軟禁していった。
クーデター計画に参加した家々の見苦しい抵抗に比べて、伯爵邸の対応は見事であった。
巡検士部隊長ウコンさんが指揮する制圧部隊が伯爵邸に赴いたところ門前には年老いた執事と守備隊長が待ち受けていた。
守備隊長が門を開けて執事が制圧部隊を案内する。
制圧部隊が案内された場所は、伯爵邸内にある墓所であった。そこには小学校の体育館ほどの先祖の霊を祭る祈祷所があった。
その祈祷所の扉を執事と守備隊長が開く、祈祷所内は薄暗く血と死臭が漂っていた。
制圧部隊長のウコンさんが部下を外に待たせて祈祷所内に入ると、祈祷所内で待っていた伯爵自らが奉書を差し出す。
それを制圧部隊長のウコンさんが受け取ると、伯爵は口から血を流して倒れた。遅延性の毒物を飲んでいたようだ。
倒れた時にはもはやこと切れていた。
ウコンさんが祈祷所内に入ると、伯爵夫人、側室達が膝を縛って喉を懐剣で突いてこと切れており、嫡男を含めすべての子供達も見苦しくないように喉から血を流して横たえられていた。
哀れを誘ったのが幼い子供達の亡骸であった。
制圧部隊長のウコンさんが亡骸を検めた後、老執事が亡骸の埋葬の許可を求めてきた。
ウコンさんが許可を与えると祈祷所内の裏手の墓所から伯爵邸の正規武装の守備兵百人が武器の代りに棺を担いて現れた。
制圧部隊に一瞬緊張が走る。
守備兵が伯爵達を棺に納めると再度棺を担いて整列すると祈祷所から出てきた。制圧部隊長のウコンさん指揮のもと祈祷所裏手の墓所まで制圧部隊が整列する。
制圧部隊長のウコンさんが
「伯爵一家に敬礼!」
と号令をかけると制圧部隊兵士が抜刀して剣を顔の中央で立てる。
その中を守備隊が粛々と進む。
墓所内に守備隊が入ったところで制圧部隊長のウコンさんが
「なおれ!」
と号令をかけると制圧部隊兵士は一斉に納刀した。
墓所前で制圧部隊が整列する。
埋葬が終わり老執事と守備隊長と老女官長が現れて、我等三人の命と引き換えに他の守備隊兵士と女官達の助命を懇願した。
俺の意向を知っている制圧部隊長のウコンさんはそれを了承した。
すると三人とも伯爵と同様な遅効性の毒物を呷っていたのか、血を吐いてくたりと倒れた。
今度もまた、守備隊の兵士が三つの棺を担てあらわれた。
また三人を棺に入れると墓所へと引き換えした。
埋葬が終わると、うら若い女官頭と守備隊副官が自分達自身が縄をうった女官や守備隊兵士を従えて現れた。
ウコンさんは助命の意志をはっきりと表すため、うら若い女官頭と守備隊副官の縄を解くと、二人は制圧部隊長のウコンさんを連れて伯爵邸内に案内し目録や遺書を差し出した。
これにより伯爵家の制圧が終了し、クーデター計画に加担参加していた者達全てが捕らえられた。
その間にパレードは盛況のうちに終了した。
クーデター計画のとおり、旧皇后派の重鎮である公爵や伯爵とその縁に繋がる者達が首謀者だった。
巡検士達によって残りの伯爵邸等今回のクーデター計画に加担した者達の家屋が調べられていく、当然一族郎党全てが獄に繋がれたのだ。
旧皇后派に反対していた第二宰相を中心とした内務大臣達が、反逆者は従来どおり一族郎党全て死刑が相当だと死刑を求めた。・・・第二宰相を中心とした内務大臣派については、豚皇太子の粛清を受けて家族達身内を亡くした者が多い、今までの法律に照らしても当然と言えば当然なのだが?
それに対して、廃棄帝や女帝となったカサンドラは、反逆者とはいえ一族郎党全てを死刑にするのはおかしい、その者達が今回クーデター計画に加わっていたか等その全容を調べてから罪の軽重を問うべきだと、一族郎党全ての者に対する死刑に反対した。
俺は死刑は首謀者のみとして、クーデター計画に実際に加担した者等は、その者の役割を調べて罪の軽重を問い、鉱山などに犯罪労働者として期間を決めて働かせる事を提案したのだ。
その他、一族郎党でクーデター計画に加担していなかった者は、俺達の結婚を理由に特赦を行い、罪を一切問わない事を更に提案した。・・・フッフッフ(悪い笑いだな、何にでも恩を売っておけば、なにがしかの見返りがある。それに無駄な血は流したくないのだ!)
彼等の罪に対しては俺の提案した意見が一応通ったのだ。
ヤマト帝国のクーデター計画に加担参加した者達全てが取り調べを受けたのだ。
俺と俺の妻達は、短い時間であるがその者達全てと面接し取り調べを行った。
俺と俺の妻達は精神感応の力を使って、その者達全ての精神内にまで入り込み真意を探れるのだ。
精神的な異常がない限り、性格異常でも典型的なペテン師でも事件直後であれば、精神内までは騙せない。・・・精神的な異常も性格異常な者も、調べるこちらの精神的には辛いものがある。
内面的に調べていくと大半の者は
『公爵や伯爵、あいつらが悪い!
あいつらさえいなければこんな事にならなかったのだ!
だから俺は、私は悪くない!』
と考えて他人に罪を擦り付けて自分を救おうとしていた。
これらの者は実は、クーデター計画に加担し積極的に参加していた者であり犯罪労働者として一番過酷な鉱山に送られた。
クーデター計画に加担し積極的に参加していた者であっても、首謀者以外は死刑にしないで犯罪労働者として一番過酷な鉱山に送られていった。
俺がクーデター計画の後始末のために手始めに、士官学校の生徒で公爵令嬢のセシリヤの取り調べと、見事な最後を見せた伯爵家の復活と復旧である。
公爵令嬢セシリヤの度胸があり、クーデター計画に加担していた父親を切って、自ら命を絶とうとしてまで家族の命を救おうとした。
その父親の最後を聞いて母方の祖父や祖母が自害したのは別の話である。
また見事な最後を見せた伯爵家の態度が称賛された。
セシリヤの母方の祖父母のように自害される前に、公爵家の血縁や伯爵家の血縁の主だった者を俺と女王セレスの前に集めて自害の禁止を言い渡した。
その上で公爵家と伯爵家の復活と復旧を告げたのである。
やはり、貴族それも大物貴族の復活と復旧である。
一族郎党が今まで同様に罪を問われるのかと暗い顔をして集まっていた者の意見が白熱した。
流石に識字率が低いこの世界、大物貴族の縁に繋がる者とは思えない、時には掴み合い、殴り合ってまで意見を通そうとする場面が俺や女王セレスの面前で行われた。
俺は掴み合い、殴り合っている者の退場を願った。・・・聞いちゃいないので、風魔法で強制的に帝王城から押し出した。
残ったのは伯爵家の長女の忘れ形見の男の子だった。
クーデター計画に参加していた親類縁者は事が破れると、一族郎党ことごとく処罰され近親者は死罪を賜るかもしれないと思っていた。
クーデターの首魁の一人伯爵家の長女は後難を恐れて離縁され実家に戻る途中で恨みを持った家臣に石礫を投げつけられていた。
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