第109話 ヤマト帝国の敗戦
カボサン王国側の迎撃の準備が整った所で、ヤマト帝国の最大領主軍は領地での終結を終えアンリケ公国に向かって進軍を開始している。・・・泥鰌髭の奴は10万もの軍を従えて、先頭で意気揚々としている。
ヤマト帝国の最大領主軍は進軍先であるアンリケ公国の途中で邪魔をするように立ちふさがるカボサン王国の王城に向かって真直ぐに進軍してきたのだ。
それにカボサン王国の王城に入った俺を見ている。
俺との出会いで大恥をかかされた奴は何としても俺の首を挙げようと全軍でカボサン王国の王城に突撃してくるはずだ。
泥鰌髭子爵領主軍主体のヤマト帝国軍10万人がアンリケ公国に向かって、
『ザッザッ』
と足音高く進軍してくる。
インドラ連合国に参加しようと思っていた諸国も、これほどの軍が動いたことからヤマト帝国の勝利は間違いないと思って寝返っていった。
中立の立場を取ろうとした諸国も同様である。
更には夜盗や逃散した農民が勝利の上前を得ようと参加してきた。
ヤマト帝国軍は進軍すればするほど人員が増える。
反面、インドラ連合国に参加を宣言し、カボサン王国王城に既に集結をしている者達も、ヤマト帝国軍が進軍すればするほど王城から逃げ出す者が多くなる。・・・中にはインドラ連合国に参入すると残って、
「この戦闘で難民が出た場合は受け入れる。」
等と言っていたアンリケ公国の後方にあるヤマト帝国のおとなし気な地方領主の率いる軍7千がカボサン王国の王城に入らずそのままヤマト帝国軍に加わった。
やっぱりスパイだった。
わかってはいたが、それでも俺はガックリとした。
そのままその領主がカボサン王国王城に入って内側から反乱でも起こされたり、後方からアンリケ公国に襲いかかられたら戦いどころの話では無くなる。
泥鰌髭子爵主体のヤマト帝国軍が進軍を開始して二日目の早朝には、カボサン王国の王城から遠くにその進軍による土煙が見えてきた。
二つの着弾観測所の出城にいる俺やヤシキさんが双眼鏡によりそれを確認をすることができた。
出城の屋上から狼煙の合図で
『ヤマト帝国の軍隊を見ゆ!』
をカボサン王国の王城に送る。
敵ヤマト帝国軍は、カボサン王国王城を眼下に見える、小高い丘の上で一撃で攻撃できる位置に集まって来た。・・・地図で予定した地点だ。孫子の兵法でも地の利として高きを尊んでいた。当然丘の上から駆け下れば勢いが増す。如何にも突撃しか能がない集団の考え方だ。
そこで泥鰌髭子爵主体のヤマト帝国軍は領軍を待つつもりか、総大将の泥鰌髭子爵が幔幕を張り巡らして、さらには土魔法が使える魔法使いにより土の城壁を造り始めたのだ。
カボサン王国の王城の手前で付け城のような仮設砦を造るつもりのようだ。
ステータス画面で確認すると、後から6つの軍団と亀のように行軍が遅い豚皇太子の督戦部隊が集結してくるようだ。
これによりカボサン王国の王城攻略に向かてきた敵、ヤマト帝国の総兵力は豚皇太子の督戦の為の部隊を除いても約10万強に膨れ上がり、かたやカボサン王国の王城守備の為に集まってきた、インドラ連合国に参入した国の総兵力は1万にも満たなかったのだ。
1万余りから1万を切って7千名程に減ってしまった。
理由は目前に迫った敵であるヤマト帝国軍の余りにも数の多さに驚いて寝返った者がいたのだ。
城に残っていても、10万もの将兵で襲われればともに城を枕に討死にする事になるとその夜のうちに出て行ったようだ。・・・『窮鼠猫を嚙む』と言う寝返りした者が城内で暴れてもらっては困るので裏門の警備は緩めにしておいた。
カボサン王国王城に残るのはアンリケ公国軍とカボサン王国軍と両国との関係の深い本当に小さな地方領主が二人残っているだけだった。・・・残った二人も不安げだ。
ヒタヒタとヤマト帝国軍の集まる足音が聞こえる。
泥鰌髭の仮設砦がヤマト帝国軍の流れを堰き止めるダムのようになり、進撃してきたヤマト帝国軍将兵で膨れ上がる。
このダムが決壊した勢いと数の力でカボサン王国の王城を押し潰すつもりだ。
泥鰌髭の奴は勝利を確信したのか、その夜は兵士に姿を変えた妾数名を連れて来ていたので、応援に駆け付けた諸国の王や有力領主を仮設砦に集めて勝利の宴会をしていたようだ。・・・気の緩みが軍紀の乱れになる。
それでも功に焦ったヤマト帝国軍の将が抜け駆けで夜襲を行って来るかもしれない、これには気を付けなければいけない。
この時点では、すでに護衛戦艦も武装豪華貨客船も艦砲射撃予定地点に到達して艦砲射撃の準備がととのっていた。
まんじりともせず一夜を過ごした。
敵ヤマト帝国軍に抜け駆けの将は現れず、敵ヤマト帝国の全軍10万有余が朝日と共に続々と到着してくる。
敵ヤマト帝国軍の人数が多くなりそろってくると、突撃の緊張感か、ざわざわしはじめる。
早朝、アンリケ公国の途中に立ち塞がるカボサン王国王城を一撃で粉砕すべく、ヤマト帝国軍は豚皇太子の督戦部隊以外は全軍が小高い丘の上に到着し終わった。
泥鰌髭子爵は全軍が揃ってやっと土魔法で作った仮設砦の中で鎧兜に身を包み、幕僚等の居並ぶ中突撃の命令を出すために椅子に座った。
突撃の先頭はアンリケ公国からヤマト帝国に裏切った国や領主の一軍だ。
彼等は突撃の最初の穂先だ。
怖気付けば後方から殺され、突撃してもカボサン王国の王城までたどり着けないだろうに。・・・いわゆる捨て駒にされたのだ。
その時、艦砲射撃予定地点に到達していた護衛戦艦と武装豪華貨客船の主砲が敵ヤマト帝国軍の仮設砦に向かって砲口をむけた。
着弾観測所にいる俺から、これから起きる惨劇の幕開けである詳細で効果的な着弾ポイントが護送戦艦と武装豪華貨客船の砲撃指揮所に送られる。
朝日に敵ヤマト帝国の全軍が鎧兜を光らせながら、突撃の為の整列が終わった。 俺はステータス画面を通じて短く護衛戦艦と武装豪華貨客船の艦長と船長役のモンと白愛虎に
「撃て!」
と短く命令する。
護衛戦艦と武装豪華貨客船の主砲から
『ズン』『ズン』『ズン』
と砲口から赤い炎と黒々とした煙が吐き出された。
ついにインドラ連合国とヤマト帝国との最初の戦いの火蓋が切って落とされた!
カボサン王国の王城でも遠くからでも腹に響くような砲撃音が聞こえる。
しばらくして、
『シュル』『シュル』『シュル』
と悪魔の囁きのような飛翔音が聞こえたと思ったら、
『ズドーン』『ズドーン』『ズドーン』
と腹に響く着弾の爆発音が聞こえると、初弾で敵ヤマト帝国軍の仮設砦が噴火にあったように吹き飛ばされる!
勝利の前祝で仮設砦に集まっていた泥鰌髭の奴と幕僚、その取り巻きの国王や有力地方領主が吹き飛んだのだ。
この一撃でヤマト帝国の指揮官系統がまとめて消えた。
気の緩みや軍紀が乱れていても、一応一つに纏まっていたものが、この一撃で烏合の衆へとなって浮足立ち逃げ出す事しか考えないようになってしまったのだ。
残った砲弾は、敵ヤマト帝国軍の突撃の為に集まっていた軍馬や将兵の中央に着弾して舞い上がる。
先頭でカボサン王国王城に突撃しようと槍を手に持って震えていた、インドラ連合国を裏切った国々の将兵達も舞い上がる。
心のうちでは笑っていた、優し気な感じのヤマト帝国の地方領主軍に対しても同様の悲劇が起こる!
敵ヤマト帝国に、いかに強力な魔法使いが参戦していたとしても、この圧倒的火力によって、あらゆる魔法障壁は粉砕されていった。
死の女神は敵ヤマト将兵には身分を越えて公平である。
最初の艦砲射撃で生き残った敵ヤマト帝国軍の将兵は命令系統が乱れたために、浮足立って腰が砕けて慌てて後退しようとする。・・・怒号する部隊長の一部は突撃しろと喚き、また一部は後退だ逃げろと喚く。混乱の火に油を注いだようだ。
突撃を声高に命令する部隊長が部下に殺された。
「反乱?反乱だ!」
と喚く声がさらに混乱を加速させる。
俺は観測所から着弾位置をずらして再度、一斉艦砲射撃の命令を行う。
再度の艦砲射撃の命令を受けて護衛戦艦と武装豪華貨客船の主砲から
『ズン』『ズン』『ズン』
という砲撃音と煙とともに吐き出された直径45センチもある巨大な砲弾15発が、大混乱に陥って逃げようと右往左往する敵ヤマト帝国軍に襲いかかる
『ズドーン』『ズドーン』『ズドーン』
と腹に響く爆発音と共に最初の艦砲射撃と同じような惨劇が行われていくのだ。
敵ヤマト帝国軍の敗因は艦砲射撃を受けた時、指令系統が壊滅し、いまだ密集体勢で整列していたことだ。
その密集体勢は従来であれば、そのまま一点突撃強行突破の攻撃を行い敵の城を
密集体勢で突撃命令を受ける前で整然と整列していたことから、壊滅的な被害を受けてしまったのだ。
また、第二回目の艦砲射撃の際でも、指揮系統の乱れで整然とした回避行動がとれず、あまりにも密集していたために右往左往するだけで逃げることが出来なかったのだ。・・・中には第一回目の艦砲射撃で出来た大穴に分隊を飛び込ませて助けた分隊長もいた。後でこいつは部下にしよう!
この護衛戦艦と武装豪華貨客船による二度の一斉艦砲射撃によって、敵ヤマト帝国軍10万余りの将兵の内の2万余りの将兵が戦場の露と消えてしまったのだ。
確かに艦砲射撃による死傷者は多数いたが、指揮系統の混乱と
「反乱!」
の叫びで疑心暗鬼を生じて同士討ちをはじめたのだ。
寄せ集めの教育を受けていない、突撃の勇気を出させるために毒苔を大量に食べさせた農民の集団だ、知能を欠いて、反乱の言葉が敵味方関係なく襲い掛かる原因となった。・・・毒苔は本当に危険だ!前世では特攻する兵士に大麻を使ったという。毒苔はこの世界の大麻だ!
その後三度目の艦砲射撃が行われた。
この時は出城から逃げ惑う将兵を効果的に叩く地点が告げられての艦砲射撃で、今回も2万有余の将兵が亡くなった。・・・同士討ちと艦砲射撃によって亡くなった4万有余の将兵の御霊を祈るのみである。
生き延びた敵ヤマト帝国の将兵はいまだ6万にものぼるが多数の者が負傷してしまい、戦闘への意欲、士気を欠いてしまっていた。
四度目の艦砲射撃が行われた。
負傷し戦闘の意欲を欠けば逃げるしかない、逃げる為に曲がりくねった悪路に将兵が集まって身動きが出来なくなったところを砲撃した。
逃げる為に前の倒れた将兵を踏み潰してでも逃げようとする将兵の塊に砲弾が落ちていく、突撃の為に将兵が並んでいる時以上の効率で将兵を吹き飛ばした。
今回も2万有余の将兵の命を奪ってしまった。
これで五度目の艦砲射撃を受ければ全滅も有りうる事から降伏するしか道はなかった。
敵ヤマト帝国軍の生き残った将兵4万有余が武器を投げ出して降伏の意志を示した。
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