第79話 立ち塞がる諸問題
オーマン国からプロバイダル王国に向けての運河やその運河を航行する三本マストの大型帆船が造船されていく。
俺がその大型帆船を造船する間にも、俺の妻達の手で、水を溜めるためのロックフィルダムや、この運河の要でもあるカンザク大河に繋がる巨大な何段にも分かれた
俺が三本マストの大型帆船を造船している乾ドックまでの水面の高さの調節と水量を溜めるために所々に土魔法を使って巨大なロックフィルダムも造っている。
そしてこの運河の要である、巨大な何段にも分かれた閘門を見つめると感慨深かった。
この閘門一箇所で巨大な人造湖が出来上がり、オーマン国の首都近くで大型帆船を造船中の乾ドックまで広がる事になるのだ。
出来上がった巨大な何段にも分かれた閘門を開け閉めするためと、大型帆船を引っ張るための馬が何頭も集められてくる。
その何頭もの馬が何段にも分かれた関門を開け閉めするための巻き上げ機の長いハンドルに繋がれてこれを動かすのだ。
閘門も出来上がったので、流れ込む川の水で水位がドンドン上がっていく。
俺の妻達は模型を造って水が溜まる様を予想はしていたものの、実際に初めて目にする巨大な人造湖である。・・・上空から見ると琵琶湖の形によく似ている。琵琶湖の一番長い距離が約63.5キロ程あるがその約2倍の130キロに及ぶ人造湖になった。パナマ運河が98キロで、スエズ運河が162キロですので大運河といっても過言がないできになった。
俺も妻達も人造湖を造る為に巨大な閘門を造り上げれたことや、今まで見たことも無い程の巨大なダムや堤が出来上がったことに安堵と共に達成感で心が溢れ、流れ込む川の水によって海のように広がり溜まり始めた人造湖に驚嘆して言葉も無かった。
巨大な何段にも分かれた人類の英知が詰まった閘門の造りを見て呆れよりも、恐れを覚えたようだ。
それは閘門による人造湖で出来上がった運河を船でお披露目のために見ることが出来たオーマン国の豪商や重鎮達も同じである。
巨大な何段にも分かれた閘門も出来上がり、水量が溜まり始め、ついには運河の水位が造船所の乾ドックにまでチャプリチャプリと音をたてながら上がってきた。
これでオーマン国からプロバイダル王国を流れるカンザク大河の支流に、運河が繋がったのである。
乾ドックでは三本マストの大型帆船の進水式がオーマン国の豪商や重鎮達も立ち会うなか厳かにとり行われる。・・・真正カンザク王国ではラッパやドラム以外の楽器が開発されて、音楽隊も編成されつつあるが、まだまだ聞けたものではないので、「ピ~~」という甲高い笛の音が吹かれる中での進水式だった。
三本マストの大型帆船は白鳥のような優美な船体を持つためそのまま『白鳥丸』と命名した。・・・見たまんまで、俺のネーミングセンスの無さがよくわかる。
笛の音を合図に乾ドックの扉が開かれて人造湖の水が入ってくる。
白鳥のような三本マストの大型帆船が乾ドック内に流れ込んだ水でふわりと浮かびあがり運河へと進みでていく。
一枚の絵を見ているようである。
帰国と体験航海の旅が始まった。
大型帆船の三本のマストに何段もの帆が張られていく。
ここでも技術者集団は力を発揮しているのだ。
帆船の原理を・・・(俺の付帯脳にある宇宙エルフ族の知識を使って、)技術者集団に講義したところ、大型帆船の帆を張ったりの実践を行ってくれたのだ。
大型帆船の帆を張るのに技術者集団にいた猫族の出身者は身軽に高いマストに張り付くとスルスルと昇って行き、あっという間に帆を張り終えて、高いマストからくるくる回りながら飛び降りるのだ。・・・他の種族は決してできない芸当だ。それを見ていた乗客から拍手が起きた。
三本マストに張られた帆が風を受けて大きく膨らむ、その風の力を借りて大型帆船は飛ぶように進む。・・・最初の操船では上手くいかない事が続いたが何ごとも経験と訓練と慣れである。
俺の妻達が真白な水兵服と色とりどりのネッカチーフをつけて立ち働く。
それを見ていたアリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹が同様な水兵服を着たがった。
これで、船の中には水兵服が流行ったのだ。
およそ1週間程の船旅、・・・(本来なら俺の造った?俺達の造った白鳥丸の平均速度が約7ノット、時速13キロで10時間ほどの船旅で着くのだが人造湖の調査(水深を測っておかないと座礁する危険がある。)と乗員の帆船の習熟訓練(技術者集団がいつも手伝えるわけではないの)で手間取った。)運河からプロバイダル王国を流れるカンザク大河の支流に出る場所に造った何段かの閘門に辿り着いた。
その閘門を使って徐々に白鳥のような大型帆船が下がっていき、ついにはカンザク大河の水面に降り立った。
船から歓声が沸き起こる。船が下がるのを乗客たちが船縁に立って、その間中、目を皿のようにして見ていたのだ。
関門自体も上手く作動したし、船も傷つくことなくカンザク大河の支流へと進めることが出来たのだ。
世界樹教を広めることによって、魔の森の世界樹教の本社に詣でるのもブームになっていたが、この船旅がきっかけとなって白鳥のようなこの大型帆船に乗り巨大な閘門を利用して、オーマン国の世界樹教の分社に行くのが新婚旅行の定番になったのは別の話である。
閘門を下った、白鳥のような大型帆船が今度はカンザク大河の支流を下ってプロバイダル王国の王城近くの河川に造った港にむかって進み始めた。
子供達が支流を風に乗って進む初めて見た帆船を追いかけるようにして対岸を走る。
帆船の高い三本マストはプロバイダル王国の王城からでも見ることができる。
湖竜や大亀が引かないでも支流を航行できる高い三本マストに白い帆が風を受けて進み優雅な船がプロバイダル王国王城近くにある港に寄港した。
高いマストの白い帆が縮小されて接岸する。
プロバイダル王国女王と女婿の俺の帰国である。
ようやく整い始めたプロバイダル王国の重鎮達が並んで出迎える。
三本マストの船を見ようと王都に住んでいる住人達も集まってくる。
俺や妻達がタラップを降りてくると一際大きな歓声が沸き起こる。
最近では識字率が向上したので、週に一回ではあるが新聞が発行されている。
その新聞に
「閘門を使った大きな人工の湖を造り上げた運河が開通した。
新たな三本マストの大型帆船が造船された。」
と三本マストの大型帆船の版画刷りで掲載されたのだ。
接岸すると直ぐに、オーマン国の豪商の積み荷が降ろされる。・・・俺の荷物は魔法の袋にいくらでも入るので手ぶらである。
プロバイダル王国の王城に丁度立ち寄った貨客船を使って、オーマン国国王の白神虎や重鎮達はオーマン国に戻ることになった。
その貨客船には、
貨客船を引っ張る湖竜は、閘門の仕組みに少し驚いていたが、閘門で出来た広い人造湖に出ると、狭い運河をずっと貨客船を引っ張ているよりも楽なようなのだ。
そのうえ人造湖が海のように広がっていることから
ただ新たに出来た人造湖では好物の水スライムの他は、流入する川魚が少しいるだけで、将来的に湖竜の餌の問題が生じる恐れがあった。
そこで人造湖はもちろんのこと流入している河川の魚類などの生態系を調査したところ、鰻のように海で産卵孵化して淡水にのぼる降下回遊するものや鮭のように淡水で産卵孵化して海に戻る遡河回遊するもの、アユのように海や河にいる両側回遊するものが見られられた。
それで前世のダム湖の横に魚道を設けられていたことを参考にして、同様な魚道を閘門の横に設置した。・・・閘門が出来上がるまでの流れ込んだ水の排出として使っていたものを整備しただけなのだ。
出来るだけ生態系は守らなければならない。
これで、人造湖内でも湖竜や大亀が生活出来るようになった。・・・湖竜や大亀のおかげで好物の水生魔獣、水スライムの大量発生が抑えられたのだ。
水スライムについて調べているうちに、こいつは悪食なので毒苔でも食べないかと思って毒苔の入った水槽に入れて見た。
毒苔は水の中でも藻のようになって繁殖するのだ。
その藻を食べると水スライムが透明から紫色になって死んでしまう、そのうえ水スライムの体表に藻が纏わりついたと思ったら、湖底に沈んで藻に喰われていた。
毒苔で水スライムの退治は毒苔の大量発生に繋がる。・・・本末転倒で研究は止めた。毒苔の藻を食べてくれる動物はいないだろうか?
運河が出来た事による、最初の航海でプロバイダル王国はオーマン国と良い取引が出来た。
オーマン国からプロバイダル王国への帰りの便ではオーマン国の豪商が再度貨客船に乗ってオーマン国の特産品を満載してきた。
その特産品を売るためにプロバイダル王国に商館を建てると張り切っていた。
父親の豪商もプロバイダル王国に来たので豪商の双子の兄妹は、父親のもとにしばらくいると言うのだ。
経済が活性化して新たな版図が広がったのだ。
それに伴って亜人種が大量に真正カンザク王国やプロバイダル王国に職を探して移民してきた。
またその反面、魔の森程危険性が高くないオーマン国の深い緑の森でのハンティングが真正カンザク王国とプロバイダル王国の二つの国の貴族の
貴族の落としていく金でオーマン国の経済は潤った。
ただ、貴族の
余りにも問題が大きくなるようならば、ハンティングを中止すると通達をしたところで、
当分の間、オーマン国内でのハンティングを中止し、貴族の子弟と言えども強姦殺人という重罪を犯したことから、それ相当の刑事的責任と民事的責任を取らせたのだ。
インドラ連合国は人種の
問題は人種差別や民族意識、貴族の特権意識だ今回のように人類対亜人種の問題は極力避けたいと思っていたのだ。
ただ俺の妻の中には白愛虎やルウがいるだけで亜人種の受けが良いのだ。
亜人種といっても決して一枚岩ではないのだ、宇宙エルフ族を先祖とするエルフ族とドワーフ族や魔獣を先祖とするものとの間でも人種問題もおこっているのだ。・・・それである意味三つ巴の感じなのだ。
宇宙エルフ族自体が宇宙の開拓者で、
現在の宇宙エルフ族の移民船R-1が辿り着く遥か昔に、この惑星に降り立っていた者もいたと考えられるのだ。
それもあって移民船R-1で降り立った宇宙エルフ族は、この惑星に住んでいるエルフ族や血族的に同類のドワーフ族を集めて保護しようとしていたのだ。
インドラ連合国自体が強固になるためには、人類と亜人種、エルフ族やドワーフ族がともに発展できる国造りをしなければならないのだ。
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