第77話 ゾンビ騒動の終焉と運河造り

 オーマン国からプロバイダル王国への帰路にあるオーマン国の深い緑の森の中において、オーマン国特有のシャーマニズムの宗教儀式によってゾンビが大量発生してしまった。

 俺や俺達の妻、この国の王の白神虎が聖魔法を使ってゾンビを次々と退治していった。・・・火魔法は魔獣や魔獣植物がいる場所では禁忌の魔法だ緑の森が延焼するでしょ!

 緑の森の大量発生したゾンビは退治され、残ったのはこのゾンビの大量発生を招いた元凶であるシャーマニズムの術者とその術者を喰らったゾンビだ。

 この森の奥深くに目的とするその二体のゾンビはいた。

 シャーマニズムの術者は亜人のキツネ族で、何でもキツネの宰相の弟だというのだ。・・・キツネの宰相はどこまでもたたるやつだ。

 術者を喰らったゾンビは白熊の亜人族の族長の成れの果てで、白かった毛が抜け落ちて黒い腐りかけた肌をさらしていた。

 白熊の亜人族の族長が亡くなったので、シャーマニズムの亜人族のキツネが呼ばれて族長の最後の言葉を白熊の氏族が集まって、葬儀の一環としてゾンビ化が行われた。

 そこで手違いが起きたのだ。

 白熊の族長の力の方が強くて、ゾンビの術を解こうとする前にキツネの術者が白熊の族長に倒されてしまったのだ。・・・術者としての力はあったが、現実の肉体的力の差が出た。やっぱり「力は正義」か、いやこの場合「力は迷惑」だ!

 多数の葬儀に参加していた白熊の全ての氏族、本家や支族の者が次から次へとゾンビに喰われてそいつらもゾンビになる者が多発してしまった。

 葬儀に参加した白熊の氏族の中には、火魔法を使う者もいたが、深い緑の森に逃げ込んだゾンビには火魔法は禁忌である。

 彼等は魔法を封じられた形で、ゾンビとなり暴れ回ることになった。

 亜人国家のオーマン国にはシャーマニズムのシャーマン、術者のように黒魔法は使えるが、聖魔法を使える者はほとんどいなかったのだった。・・・聖魔法使いさえいれば、その場であっという間に対処できたのに。ここまでゾンビの数が増えるといつかは魔力切れでゾンビに食われてしまうだけだ。

 ライオン族や熊族と同様に力の強いゾンビとなった白熊族を倒し切れる者が少なかったこともこのゾンビ禍を防げなかったのだ。

 俺や俺の妻達の聖魔法によってゾンビ退治は順調に進んでいった。

 残るは、深い緑の森の中に隠れるように潜んでいた術者と白熊の族長の二体のゾンビだけとなった。

 俺はその二体を見つけたので、そのゾンビに向かって聖魔法の塊を創って頭の上に落とした。

 白熊の族長のゾンビは、輝ながら落ちてくる巨大な聖魔法の塊に気が付いて、その大きさから逃げ出る事が出来ないと悟ったのか、両手をあげて頭上で巨大な聖魔法の塊を受け止める。

 シャーマニズムのキツネの術者のゾンビはコソコソと白熊のゾンビが聖魔法の塊を受け止めている間に、その勢力範囲から逃げ出そうとするのを、セイラとセレスが聖魔法のドームの二重掛けで阻止する。

 白熊のゾンビの両手が俺の聖魔法の塊でジワリジワリと光の輪を出しながら消えていくのだ。

 白熊のゾンビの支えている両手が肘部分まで消え、頭を消し去り始めると、一気に聖魔法の塊が白熊のゾンビを押しつぶした。

 キツネの術者のゾンビもセイラとセレスの聖魔法のドームで逃げられないと悟ったのか、白熊のゾンビの横で丸まっていた。

 キツネの術者のゾンビも白熊のゾンビとともに俺の放った聖魔法の塊に押し潰されて消え去っていったのだった。

 これで、オーマン国の王城近く緑の深い森で発生したゾンビ騒動は終焉したのだった。

 この森の入り口付近に、内乱の被害者のウサギの元国王や、一応亡くなっている事になっている先の女王白虎・・・(白愛虎と融合しているので本当に亡くなっているのか⁉)、元凶のキツネの宰相夫婦、ゾンビ騒動の白熊の亜人族の族長、キツネの宰相の弟のシャーマニズムの術者等の鎮魂碑を建てて、花を添えて冥福を祈った。

 このゾンビ騒ぎの元凶になったのはオーマン国の独自の宗教として根付いていたシャーマニズムなのだ。

 シャーマニズムの術者は黒魔法が使える。

 オーマン国では病気や怪我をしても、聖魔法使いがほとんどいない事を良い事にして法外な高い治療費が請求される。

 その聖魔法使い達は、感染症対策等考えてもいないために異物を巻き込んで治療したりするため、悪くすると死亡するなど、ろくな治療も受けられないのだ。

 聖魔法使いの医療技術がなかったこともあって生活に溶け込んだシャーマニズムによる治療が行われ、シャーマニズム信仰が根付いていってしまったのだ。

 シャーマニズムの対策としては高度な治療が安く受けられる病院建設が重要な役割を果たすはずだ。

 オーマン国の王都内では人口過密で病院を建てられなかった事から、王都の裏門横の郊外に病院を建てた。

 病院長に打って付けの人材がいる。

 聖魔法が使え、宇宙エルフ族の高度な知識と医療技術を持つオーマン国王になった白神虎だ。

 病院長に白神虎が就任し、副院長には同様の知識と技能有する未来の女王のヨウコさんが就任したのだ。

 また、宗教的な側面を持つシャーマニズムに変わるものとして、世界樹の木を病院の入り口の広場に植えて世界樹教の神殿も建てたのだ。

 魔の森で毒苔の治療を受けていたエルフ族の女の子達数名が治療にあたっていた白神虎やヨウコさんを慕ってオーマン国に現われたので、世界樹教の巫女になってもらった。

 オーマン国において土着信仰のシャーマニズムという信仰心に対抗して、世界樹教を立ち上げたのだ。

 信仰心については、信仰心の薄いと言われる日本人も正月の初詣やお盆の頃の墓参り等をしている。

 しかし大陸では他国や他民族から侵略を受ける国々は深刻である、侵略に負けない精神的な拠り所として信仰心が篤くなっていったのだ。

 良くアメリカのテレビドラマなどで見る、法廷での宣誓等がその表れともいえると思う。

 まあ、何はともあれ世界樹教を信じることにより、少しでもシャーマニズムによる今回のようなゾンビ騒動が起きないようになれば良いのだ。

 今回のゾンビ騒動を起こすようなシャーマニズム、原始的な宗教にすがるのは無知と、その恩恵と死者からの伝言等と言う奇跡を目にするからである。

 恩恵はシャーマニズムの宗教による治療であり、それに対抗する為に病院を建てた。

 無知に対しては識字率を向上すれば防げると思うので、識字率の向上のために病院の隣に付属の医療大学とオーマン国王立幼年学校や将兵学校を建てた。

 付属の医療大学は聖魔法使いが無知ゆえに感染症対策など考えないで、平気で異物を巻き込んで治療したりするためだ。・・・治療しているのか悪化させているのか分からない状態なのだ。シャーマニズムの術者に流れていた患者が聖魔法使いのもとを訪れるようになれば生活の中でのシャーマニズム信仰が薄れると思うのだ。

 付属の医療大学の学長は病院長の白神虎が兼任するとして、オーマン国王立幼年学校や将兵学校についてだが、ヨウコさんについて来ていた実兄の巡検士部隊長のジロウさんを、インドラ連合国の大使兼駐留武官としてオーマン国に滞在してもらい、王立幼年学校や将兵学校の校長兼教師に任命した。

 俺の配下になった山賊の親分のジャックはライオン族の親衛隊隊長と気が合い、仲良くなったのでしばらくオーマン国の将兵学校にいると言う。

 また同様に俺の配下に加わっていたキャサリンとシンディも両側からジャックの手を握ってオーマン国にいさせてくださいと懇願された。

 三人に滞在の許可を与えた。

 ただし各国の将兵学校直属の武道教官として、各国の将兵学校で手の付けられない問題のある将兵がいれば手伝ってもらうことにした。

 三人とも武道においては俺やモンに及ばないものの、アカネや白愛虎とは同等の力を有する。・・・フッフッフ(悪い笑いがこみあげてくる)良い人材を見つけたものだ!

 ジャックは俺の影武者としても使える。

 それに今の新王誕生という、政情不安なオーマン国にいてもらうだけで睨みがきくというものだ。

 それに例の新国王に対する挑戦者が挑んできても、ジャックを国王の代理人として働いてもらうことにしているので安心なのだ。

 二流や三流どころの挑戦者なら白神虎自らが一掃できる、一流の挑戦者とも互角に戦うことができる、それでも傷ついてしまっては今後の国家運営が大変だ。

 ジャックを始め三人とも、オーマン国の屯田兵制度の普及と監督の作業をさせることにした。・・・俺に代わって監督作業を行うのだから、殺生与奪の権利までもつ巡検士に三人とも任命した。・・・巡検士部隊長のジロウさんがいるので大丈夫だ、大丈夫のはずなのだ・・・‼

 政情安定のためにオーマン国では白神虎が、ヒアリ国ではルウの仮の戴冠式を無事終わらせたが、一年後には正式な戴冠式を行う予定にしている。

 オーマン国の一年後の正式な戴冠式を行う際には、オーマン国からプロバイダル王国までの間を俺が作った直線の舗装路の隣に運河を造り、その運河を利用して他国の使節団の送り迎えや、運河に停泊させた巨大豪華貨客船をホテル代わりに使ったりするつもりだ。

 そんな先の事を考えながら、オーマン国からプロバイダル王国との間に横たわる深い緑の森の中を抜ける道路を造りながら進むのだ。

 強固な岩盤があり、道路工事は難しかったが無限の魔力量を誇る俺の前ではさほどの事はなかった。

 土魔法が使えるオーマン国の国民も手伝ってくれたのだ。

 技術者集団にも何名か土魔法が使える者がいたので手伝ってもらっている。

 ただ当然、オーマン国の重鎮達の中には直線で舗装された道路に疑問を投げかける者が大勢いる。

 いつ来るかわからない敵のために国民に不自由を課すよりも、国民の利便性を優先する等と言う考え方はまだ受け入れがたいものであった。

 そのうえ、この深い森の中を走る道路の横に運河を造り上げることにした。

 これにはオーマン国のほとんどの重鎮達には受け入れがたいものであり、反対の声が上がっていた。・・・川の活用がはほとんどされていない。川岸で魚釣りをしていても水スライムが襲ってくるのだ。オーマン国の多くの住人が水が怖くて川には近寄れないのが現状なのだ。

 硬い岩盤に阻まれて、俺や俺の妻達以外の土魔法使い達は次々と道路と運河造りから撤退していった。・・・オーマン国の土魔法を使える者は、重鎮達に止めるように家族を通じて言われたようだ。

 俺は道路建設反対の逆境の風が吹き荒れる中道路を造くっていった。

 道路を造っていたある日の事、俺は道路のルート確認とルートの状況確認のために風魔法を使って上空に舞い上がった。

 上空から地形を確認して分かったのだが、オーマン国からプロバイダル王国の間の深い森のために、よく見えていなかった多数の水量が豊富な川が流れているのを見つけることが出来た。

 そして極めつけは深い緑の森が山脈に囲まれた盆地だが、その中央付近が窪地になって流れ込む川の水によって湖や沼が構成されその水はカンザク川の支流へと流れ出しているのだ。

 急遽直線の岩盤のある深い緑の森を切り開きながら舗装道路を造る計画が、水も豊富にあることから、地形を利用した運河を造る事にしたのだ。

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