第72話 キツネの宰相の残党討伐と大迷宮

 オーマン国の財務大臣であり豪商が双子の兄妹に広い世界の見聞を知るために俺とプロバイダル王国に行く事になった。・・・俺がトラブルメーカーであるからではない!事件が向こうからやって来るのだ‼

 その二人の子供達の護衛に傭兵部隊の隊長さんと豪商とよく似た顔立ちで二十代の十番だか十一番だかの番頭さんも一緒に付いてくることになった。

 傭兵部隊の隊長さんはそこそこ武力的には強いが、それよりも指揮能力が高いようだ。・・・今回のキツネの宰相の妻の反乱で熊の守備隊が豪商宅を襲ってきたのに適正な判断力と寡戦の中での高い指揮能力を見せていたのだ。

 番頭さんについては親戚の子供と言っているが、豪商の隠れた長男さんで

「セバス」

という名前だ。

 豪商さんが若気の至りで亜人族のメードに手をつけて生まれた子で、その時は結婚したばかりの正妻が豪商の子供として認めなかったそうだ。

 彼が亜人族との間に生まれた子供だという事もあるのだが・・・。

 セバスは亜人族特有の尻尾は生えていない。

 セバスも利発そうだが産まれるとすぐに里子に出されたので、識字率の異常に低いこの国の御多分にもれず文盲なのだ。

 最近、里親も亡くなったことから豪商に引き取られたのだが、亜人族を嫌っている正妻の目もあり番頭として豪商の双子の兄妹とともに送り出されたそうなのだ。

 ただ彼はめげない性格であり、二人の弟や妹に対しても明るく振る舞っている。

 二人の弟や妹に対して文字を教わっているようのだ。

 帰国準備を進めていく、その前にヒアリ国の女王となるルウの仮の戴冠式を行わなければいけないのだが、その場所等の準備も考えなければいけないのだ。

 オーマン国において白神虎の仮の戴冠式を終えて、新しい国王が誕生したとはいえ、未だにキツネの宰相の反乱の後で政情が不安定である。

 オーマン国内の政情の安定の為にはまず治安を安定や各種施策や、不文律の法律が多い事から各種の法整備などを行わなければならないのだ。

 治安上問題になるのが、王城内のキツネの宰相の残党を排除したとは言っても、王城の地下にある大迷宮内に逃げ込んだキツネの宰相の残党までは排除しきれていないのだ。

 いつ出てくるか分からないキツネの宰相の残党の為に、その大迷宮前はライオンの近衛隊員の小隊によって封鎖されているのだ。

 この世界では一分隊が分隊長以下12名、3個分隊で1小隊で36名、それに小隊長と副官、2名の伝令を含めて小隊は40名が大迷宮の前に詰めていることになるのだ。

 熊の守備隊員がいなくなった今ではライオンの近衛隊員が治安の要なのだ。

 兵士の増員が望めない今は一人でも二人でも治安要員が欲しい時期なのだ。

 オーマン国の治安の安定の為にも王城の地下に潜んだキツネの宰相の残党を討伐しなければならない。・・・実はそれよりも気になっていたのだ。

 オーマン国の白虎が囚われていた、オーマン国の王城の地下にある大迷宮自体のダンジョン探索を!

 ダンジョン探索をしながら実力をつけて来た俺としては血が騒ぐのだ!・・・俺はやっぱりトラブルメーカーなのかもしれない⁉

 ここは、建前はキツネの宰相の残党退治という事で、オーマン国国王の白神虎を頼って大迷宮の門を開けさせてもらった。

 俺と俺の妻達とルウや白愛虎も連れて大迷宮に入ることになったのだ。・・・後ろから破壊神の剣を持った金ぴかの鎧の中に入った子供達もついてくるのだが。

 大迷宮を守るライオンの近衛隊員の見守る中、扉が開けられた。

 大迷宮は王城の地下にあることから、今まで冒険者が入った事がないのだ。

 軍隊の訓練で部隊を送り込んでも、怪我をさせないという事で最下層までたどり着いた部隊は未だにいない。

 大迷宮自体が、幾つかの層に分かれているようだ。

 最初の層の牢の前でたむろするキツネの宰相の残党達を見つけた。

 彼等はダンジョン内に住むネズミを捕まえて食べていたのだろう、肉が焼ける臭いと骨が散らばっているのだ。

 普通の魔獣を外で倒すと魔獣は消えずにそのまま残り毛皮や肉等が手に入るのだが、ダンジョン内で出現する魔獣を倒しても光の泡になって消えてしまうのだ。

 消えたその跡に魔石や何か肉などのアイテムが残っていれば良いのだが、ダンジョン内の魔物では普通はあまりアイテム等が手に入らないのだ。・・・俺が異常なのかアイテムを良く手に入れることが出来るのだ。

 特に最初の階層ほど良いアイテムがでないのだ。

 所々にある部屋の主を倒すと、この場合は必ず宝箱が出現して、この世界の通貨のギリ金貨かアイテムが貰えるのだ。

 時々宝箱の化け物が出ることがあるのだ。

 こいつは手強い、倒してもギリ金貨の入った宝箱が残るだけなのだ。

 空腹でダンジョン内に普通に住みついたネズミばかり食べていたためか半分野獣化して、目が黄色く濁ったキツネの宰相の残党達が襲ってきた。

 面倒なので守り刀の雷神を使って退治する。

 呆気なく捕まったキツネの宰相の残党に他の残党がいないかを尋問する。

 キツネの宰相の残党もダンジョン内が怖いので、夜は白虎が囚われていた牢の中で過ごし、日中は全員でダンジョン内のネズミを狩って食料にしていたそうだ。

 それでここにいたのがキツネの宰相の残党のすべてだった。

 捕まえたキツネの宰相の残党を大迷宮の門前で警備しているライオンの近衛隊員に渡す。

 これで大迷宮の門前を警備する必要が無くなったとライオンの近衛隊長は喜んでいた。

 俺達は再度迷宮内に戻って最初の層を探検する。

 最初の層はスライムだが強くないうえに、あまり出てこない。・・・ダンジョン主が倒されてしまったためだろう?

 そのうえキツネの宰相の残党共で最初の層は調べ尽くされていたようだ。

 部屋の主を倒した後の、お宝の再生時間は十年位の単位なので中身はたいした物は入っていなかったのだろう。

 キツネの宰相の残党は多額のギリ金貨を持っていたので、お宝はギリ金貨ばかり入っていたのだろう。

 キツネの宰相の残党の所持金は全額没収されるのだが、金を取られまいと暴れるその姿は哀れでもある。

 没収されたギリ金貨は今回の騒動で亡くなった者の弔慰金等に使われるそうだ。

 この層のダンジョン主も倒されてしまっていた。

 層のダンジョン主は普通は再生するのだが、再生されずに第二層目に降りる階段だけが残っていたのだ。・・・どうやらダンジョンを踏破しないと再生されないようだ。

 階段を降りる、これからが本格的なダンジョン探索だ。

 ステータス画面でダンジョン内の地図を見ていく。

 いつも通り見える範囲で地図が広がって行く。

 地図表示にいきなり赤い光点が現れて、大ネズミの大軍に襲われたのだ。

 妻達が狂奔する、火魔法や氷魔法、土魔法までもがダンジョンの通路内を埋め尽くすのだ。

 旨味の無い大ネズミの大軍にこれほどの魔力を使わなくても良いのに!・・・今回は光の泡となって消えるだけでアイテムも出てこない・・・なんでや?

 等と思っていたら妻達に

「ダンジョン内はこんなものだ。」

と言われた。

 大ネズミの大軍を一瞬で退治して、一緒について来たルウや白愛虎はドヤ顔で俺を見ているが、他の妻達は恥ずかしそうだ。・・・魔力の消耗が激しい。魔力切れでしんどそうだ。

 ダンジョン内の魔力回復の為の部屋を探す。

 階層を降りる階段付近の部屋の幾つかは、キツネの宰相の残党達が部屋の主を倒したのか閉じられている。

 この部屋の再生時間が二十年位の単位だったので、ここも中身はたいしたことがないようだ。

 へとへとな妻達を連れて何とか部屋を見つけて、扉を開けるとネズミ将軍が待ち構えていた。

 それを見た途端、またも妻達が狂奔する。

 狭い部屋で色々の魔法が交錯する。

 可哀想に、またも一瞬で部屋の主のネズミの将軍は討伐されてしまった。

 ネズミ将軍の討伐の跡には、5万ギリの金貨が詰まった宝箱が置かれていた。

 もう妻達の中には魔力切れを起こして立っているのも辛そうにしている者もいる始末だ。

 魔法の袋から医療ポットを出して横になる。

 硬い部屋の床で寝ても魔力量は一晩で回復するのだが、最近では快適な生活になれたためか床の硬さで体の痛みが残ることがあるのだ。

 一緒について来たルウや白愛虎も不思議とレベルがあがっているようだ?

 俺が医療ポットで寝ようとしたらルウや白愛虎に抱き付かれた。

 俺の妻達はニヤニヤ笑って見ていた。

 子供達は金ピカ鎧の中でスヤスヤと寝ていた。

 この層はネズミの大軍と幾つかのネズミ将軍の部屋で構成されていた。

 次の層に降りる階段のある部屋はネズミの王が守る部屋で、ここでも妻達の魔法が炸裂した。

 ネズミの王の倒れた後には50万ギリの金貨が入った宝箱が残っていた。

 この部屋で一休みしてから下の層に降りるのだ。

 下の層、三層目は腐臭を放つゾンビだ。

 こいつらは聖魔法で消え去るので、わりと楽に戦えたのだ。

 今回はゾンビの死体の後は、ぼろ布が残るだけで面白みがないのだ。

 そのうえ、部屋の主はゾンビ将軍で、こいつを倒すと10万ギリの金貨が入った宝箱が手に入ったのだが、うまみのあるアイテムが出てこないのだ。

 下の層に降りるこの層のゾンビの王も聖魔法で倒すと100万ギリの金貨が入った宝箱があった。

 第四層目は骨だけのスケルトンで、魔法攻撃があまり効かない厄介な奴で、そのうえ物理攻撃でバラバラにしても奴の心臓部に赤く輝く魔核を破壊しないと倒れないのだ。

 俺や俺の妻達が槍や剣で魔核を突き刺して倒していく。

 時間がかかる割には、こいつらも旨味の無い奴なのだ。

 何せ魔核を破壊した衝撃で魔核の中心の魔石も破壊され、それに骨なので何も残らないのだ。・・・魔石も見える分何か腹が立つ!

 それでも部屋を守るスケルトン将軍を倒すと15万ギリの宝箱が手に入った。

 骨をサクサクと倒して、ダンジョン主のスケルトンの王が守る部屋についた。

 金ぴか鎧が動く、

『ポン』

と手に持つ破壊神でスケルトンの王の頭を叩くと崩れ去ってしまったのだ。・・・子供達も鬱憤うっぷんが溜まっていたのだろう‼

 スケルトンの王が倒れた跡には150万ギリの金貨が入った宝箱が手に入った。

 下の第五層に降りる。

 今度は犬の大軍が襲ってきた。

 実力をつけて来た妻や子供達、ルウや白愛虎によって、あっという間にこの層も終わってしまった。

 この層も義理堅くギリの入った宝箱ばかりだ。

 しかしこのダンジョンのお宝箱は、この世界の通貨であるギリ金貨が入ったものばかりだ、何か面白いお宝は出ないものか。 

 それでも妻達や子供達、ルウや白愛虎のレベルもでも上がっているので良しとするか。

 ギリ金貨も、これほど集まると段々と真正カンザク王国やプロバイダル王国両国の国家予算をはるかに超える天文学的な金額になっているのだ。

 しかしまだまだこのダンジョンは深そうだ。

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