第65話 オーマン国へ

 統治者や国民を失ったヒアリ国を俺が一応統治する事になった。

 俺が対サンドスネーク用に設置した迎賓館はそのままヒアリ国の王城となった。

 この王城の中には魔法生物のゴーレムが多数働いでいるので、ゴーレム国家としたのだ。

 迎賓館の中には多数の掃除用ゴーレムやだけでなく、メードゴーレムやガーディアンゴーレムがいるが、魔法生物のゴーレムは魔石を食べて活動するのだ。

 魔法生物のゴーレムが食べる魔石の量はそれ程必要ではないが、亜人どころか人類、魔獣や魔獣植物も遠慮する砂漠地帯なので魔石を手に入れるのは難しいのだ。

 この魔法生物のゴーレムの食糧事情を救ったのは、皮肉にも大量発生した魔獣のサンドスネークの亡くなった後に残された何十万、何百万もの魔石だったのだ。

 俺と俺の妻達は残された何十万、何百万もの魔石を回収してゴーレムの食料にする事にしたのだ。

 食糧事情も改善されたことから、しばらくの間は、王城の中にいるゴーレムを使って国家の再開発を実施することにしたのだ。

 このゴーレム国家の当座の運用資金としては、前住民のトカゲの亜人族が築いた砂の城の地下に埋まっていた宝物庫から見つかった、金銀財宝や宝箱の数々で、それを当てることにしたのだ。

 その財宝の中で、持ち主が不明で返すことも出来ないようなもの・・・(ほとんど全てがそうなのだが)をゴーレム国家のヒアリ国の繁栄に使うことにしたのだ。

 しかし凄まじい程の金銀財宝や宝箱の数々だ。

 これだけの財宝があれば1年といわず10年あっても20年あっても普通の一国の国家予算としては使い切ることが出来ないほどだ。

 この金銀財宝の全てを新しい王城の地下に持って行く事にしたのだ。

 いくら人がいないとはいえ砂に埋もれたまま放置するような状態にはしたくないのだ。

 宝物を魔法の袋に入れている間に触られて光っている壁の窪みが気になって触ってみたら、隠し扉でいきなり開いたのだ。

 宝物庫の隠し扉の奥には宝玉で飾られた鎧や刀が置いてあった。

 見栄えが良いが禍々しいものを感じて中に入って調べてみると、ヒアリ国がトカゲの亜人国家になる前の国王のもので鎧の中には国王の遺体が眠っていたのだ。

 その宝玉に飾られた黄金の鎧を着た遺体がカッと目を見開き宝剣を手に取ると俺に打ちかかって来たのだ。

 俺は守り刀を抜いて対抗する。

 死して知能を失ったのか、無暗矢鱈と宝剣を振り回すだけだ。

 ただ宝剣に触れるものは粉々になってしまう。

 これでは守り刀が危ない、多数ある金銀財宝も失ってしまいそうな勢いだ。

 俺は守り刀を鞘に戻すと、幅広の日本刀を抜き出して構えた。

 俺が鍛えた日本刀は魔法の袋に山ほどあるが、この宝玉に飾られた黄金の鎧を着た遺体が振り回す宝剣に触れると粉々になるので数があっても危険なのだ。

 俺はこれ以上金銀財宝が失われる事を恐れて宝物庫から出て、広い砂漠地帯に宝玉に飾られた黄金の鎧を着た遺体を誘導する。

 外に出ると遺体は、立ち止まって周りを見渡した。

 彼の目には夏ではあるが、何も生えていない砂漠が寒々と広がって見えた。

 彼の生きた時代は青々とした草花が生え綺麗な鳥がさえずり、蝶が舞う世界だったのだ。

 彼は膝を落とすと

『我が良き時代に戻してくれ!』

と大声をあげると倒れてしまった。

 宝玉に飾られた黄金の鎧から光の輪が現れると天に向かってゆっくりと昇っていった。

 宝玉に飾られた黄金の鎧と

『破壊神』

という名の宝剣を手に入れた。

 俺の持っている

『雷神』

とは相性が悪そうだ。

 彼もまた神宿る刀なので魔法の袋に入れようとしたところ

『やめろ!お前のものになってやるので契約しろ』

と尊大に言って俺の刀になった。

 このまま置いてあっても誰かが手を触れると危険なので俺の刀にするのがどうやら良いようだ。

 ちなみに鎧の方は黄金で造られて豪華でクソ重いだけの代物だ。・・・以前の体力増強に使っていた鉄の小手等の比では無い!こんなもの着てよく動いていたものだ‼

 面白そうなので、それ以後時々この金ぴかを着て走り回っているのだ。

 砂の城の跡地に亡くなったヒアリ国のトカゲの亜人族やキツネの宰相そして遥か以前に亡くなっていたが恨みのみで闘いを挑んできた宝玉に飾られた黄金の鎧を着た遺体等に対する鎮魂碑を作り冥福を祈ったのだ。

 ヒアリ国の再開発を行うに際して、今後はサンドスネークによって魔獣や魔獣植物もいなくなったことから、大きな音を出す水車等を使った大規模な灌漑開墾等の農業や科学研究都市にするのも悪くないようだ。・・・亜人族や人類にとっても住みにくい場所だからこそ秘密に軍事研究等もできそうなのだ。

 サンドスネークとの戦いを終え破壊神を手に入れて、今日は迎賓館で皆で休むことにした。

 迎賓館の地下室には非常時を考えて転移装置を設置してあるのだ、転移装置は機密の塊なので地下室に入るには指定された人間のみで、宇宙エルフ族の高度な技術により指紋、網膜、骨格等の検査のある扉を通って転移装置のある部屋に入ることが許されるのだ。

 無理に侵入を図ると睡眠ガスで眠らされるのだ。それでも転移装置のある部屋まで侵入すると転移装置ごと爆薬で吹っ飛ぶのだ。

 いくらゴーレム国家を造るとはいっても、人がいないのは問題なのだが、今回は次の目的地のオーマン国に向かう事を優先にしたのだ。

 人を今後この地下室にある転移装置で送るにしても具体的には南北カンザク王国の山岳警備隊員のように、秘密を守って転移装置が使える者を配備するようにしたいのだ。・・・そのうえ、ここヒアリ国では最終的には秘密の軍事研究もする予定なのだから。

 破壊神を手にした翌朝、ヒアリ国の王城を後にしてオーマン国に向かう事にしたのだ。

 ヒアリ国の王城からオーマン国の王城まで、ここからは馬で五日ほどの行程だ。

 馬で五日間およそ400キロ程の行程だ。

 オアシスに逃げ込まないで、逃げ散ってサンドスネークに喰われなかった馬も戻って来た。

 紋章の付いた馬車は加護の影響で全て無事であった。

 そのうえサンドスネークに襲われた早い段階でオアシスの湖畔に逃げ込んだのが功を奏したのだ。

 もう少し遅かったらいかな紋章の加護の力があると言っても何十万、何百万のサンドスネークの大群の海に飲み込まれてしまっていたのだ。

 紋章が付けていなかったキツネの宰相等が入っていた檻を載せた馬車は馬ごとサンドスネークに食べられてしまっていたのだ。

 ヒアリ国の王女サマティーヌの乗っていた馬車も残されていた。

 馬車の数は沢山あり、馬の数が揃えられたのでヒアリ国に向かって出発することにしたのだ。

 馬車の紋章はオーマン国のウサギの国王の乗る馬車以外は真正カンザク王国とプロバイダル王国さらにはヒアリ国の三つの紋章が重なった紋章になっているので、普通に攻撃されても、逆に攻撃を相手に跳ね返してしまうのだ。

 生半可な腕では攻撃を加えても、この紋章の力で傷付ける事ができないのだ。

 迎賓館をヒアリ国の王城にしたため、全員で野宿しながら亜人国家オーマン国に向かって進むことになったのだった。

 馬車の中で寝ると暑くて寝苦しい。

 外で寝ると砂漠地帯なのに何処からともなく現世のオニヤンマ程の大きさの蚊が襲ってくるのだ。

 刺されると大きな瘤になって人相が変わるほどだ。

 美人のユリアナとセーラが刺されて顔が前世の怪談のお岩さんのようになったのには驚いた。

 慌てて医療ポットに放り込んで聖魔法をかけて治療した。

 ついでに夏の暑い夜に怪談話で盛り上がった。

 今度はユリアナとセーラの従姉妹にあたるセレスとクロが顔を刺されて

「恨めしや~」

等と言って髪を振り乱して俺を脅かしてきた。

 俺は今度も二人を慌てて医療ポットと聖魔法をかけて治療したがお岩さんの祟りか直りに時間がかかって、皆背筋に冷たい汗が流れた。・・・俺も仕返しに聖魔法の力を少し抑えたのだ。

 後でばれて妻達に怒られたのだが、何か理不尽だ。

 二晩を砂漠地帯で過ごした。

 その砂漠地帯も砂漠の王国と呼ばれたヒアリ国から亜人国家オーマン国に近づくにつれて砂丘から岩場の砂漠地帯、そこを抜けると樹木が生茂る自然豊かな場所になってきたのだ。

 砂漠地帯から緑豊かな森林地帯に入ってきたのだ。

 砂漠地帯から緑豊かな森林地帯を進む、最近では俺が歩くと魔獣植物が避けてくれるので、オーマン国のウサギの国王の許可を取って、プロバイダル王国の場合と同様に馬車が2台並んで走れる石畳の直線道路が造られていくのだ。

 緑豊かな森林地帯に入ったので、俺は野宿が嫌いで大きな蚊にも襲われて大変なので、三日目の宿泊は自生している樹木を使って、大きなコテージを木魔法で造ったのだ。

 また森林地帯に入り魔獣も多くなってきたので、試しに軍狼を呼ぶと、集まって来てくれた。

 軍狼には、だいぶ馬が疲れてきているので野生の馬を替え馬として集めてもらったのだ。

 それに俺の魔法の袋の中には馬具や馬車の部品もあることから馬車を造って、全員が馬と馬車を交代に乗って休みながら進むことができるようになったのだ。

 三つの国の紋章が重なり合った紋章を付けた馬車は振動がさらに軽減されて、まるで風魔法の空気のクッションに座っているようで馬車の中で居眠りが出来る程なのだ。・・・以前は地獄の乗り物と言われていたのが隔世の感があるのだ。

 ヒアリ国からオーマン国の国境の河を超える、一段と緑が深くなった。

 国境の河沿いにはオーマン国の警備の砦が設けられている。

 砦から人の気配がしないのだ。

 砦の中に入ると、砦の警備兵どころか、生活用品も備品も残っていなかった。

 これだけの規模の砦であれば、三千人の将兵が寝泊まりしていても不思議が無いのだ。

 誰もいない、この砦を借りて一晩を過ごした。

 五日目の朝を砦で迎えた。

 これから馬で一日の行程でオーマン国の王都に辿り着くのだ。

 昼頃には王都の近くで昼餉を取って、午後3時頃には王城に入城したいものだ。

 亜人国家オーマン国の王城に近づくにつれて亜人国家と言われるだけあって、亜人の姿が目立ってきた。

 田畑で農業をしているのはウサギ族やキツネ族が多いようだ。

 俺が瞬く間に石畳の道路を造り、その道路を馬が引く馬車を見て驚いる。・・・地獄の乗り物によく乗っていると思われているのだろう。

 その地獄の乗り物の馬車の中からウサギの国王が手を振ると、さらに驚いているのだ。

 ウサギの国王によると、今まで良く見かけているウサギ族やキツネ族の二つの種族の人口がオーマン国では多いようだ。

 また狩猟を生業としているのは犬族が多いようで、夕暮れ時には獲物を下げた犬族によく出会った。

 丁度ヒアリ国の元迎賓館の王城からオーマン国の王都に五日ほどで入ることができた。

 王都を守る城郭の門を通り抜けて、王都の中にはいるのだった。

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