第55話 領土の安定へ
プロバイダル王国の痩せた田畑の土地の活性化に、真正カンザク王国の肥料工場の牛糞や鶏糞を輸入して、腐葉土や魔獣や動物の焼いた骨などを混ぜて使う土壌改良を農民たちに提案する。
畑がやせるのを防ぐ方法として、同じ作物を作り続けないとか・・・輪作する場合この世界の植物どの様な順番にすればいいかわからない?
休耕田にするという方法があるらしいが・・・田畑があるのに使わないのはおかしいと農民に言われる!
それで今は肥料を入れて土壌改良することにしたのだ。
さらには、鉄製の鋤や鍬、牛の引く犂も真正カンザク王国から輸入した。
ただ、これらのものは高価ということもあって、直ぐには受け入れられなかった。
まずは手始めにプロバイダル王国の南と北、中央の王国の直轄領に、自領、他領の区別どころか、真正カンザク王国の農民や領主達まで集めて土壌改良という、今後の農業のあり方等について講義するが、識字率が異常に低い農民どころか領主達にも理解できない者が多い、理解が追い付かないのだ。
それで
『百聞は一見に如かず』
という、実際に土壌改良や耕作地の効率化を見せることにしたのだ。
プロバイダル王国には、まだ入植されていない広大な大地や効率の悪い変形で痩せ細った田畑が広がっているので、今までの農業の仕方がいかに非効率であったかを身をもって知ってもらうことにしたのだ。
入植されていない広大な大地では、牛の引く犂と、人の力で開墾する状況を見せた。
牛の引く犂によりみるみるうちに開墾される大地の差に領民は驚愕した。
また農機具、石器時代の石の鍬や鋤で耕すよりも、鉄製品の鍬や鋤で耕す方がはるかに効率的的なのをみせる。
鉄の鋤や鍬と従来通りの木製や石製の鍬やスコップでは耕す速度が違いすぎることが目に見えてわかる。
次に効率の悪い変形で痩せ細った田畑は、効率の良い四角い田畑にした場合の作業効率と、肥料を混ぜて鉄の鋤や鍬で耕した植物の実の付き具合と、従来通り耕し方での植物の実の付き具合を見せた。
当然、肥料を混ぜた田畑の実の付き具合や大きさが目に見えて違った。
これにより真正カンザク王国に引き続いてプロバイダル王国の農業にも革命を起こした。
直轄領地だけでなく地方の領主も牛の引く犂のような農機具と肥料の購入を希望してきたのだ。
まず、真正カンザク王国とプロバイダル王国、両国の国家的な事業として、南カンザク地方とプロバイダル王国の国境に鍛冶師のプロ集団ドワーフ族を集めて農機具作成の工業団地を造り、今までは野生の動物だった牛を集めた牧場を造ったのだ。
土地改良の手助けをする犂を引く牛たちを集めたのだ。
そのうえ集められた牛の管理が出来るようになったので、ここに念願だった乳製品の開発研究所や農業試験場等を建てた。
そこにはさらに、真正カンザク王国の肥料工場も移設した、肥料が両国に送られていく。
一月もしないうちにプロバイダル王国の田畑にも木の精霊や土の精霊達が踊りまわり秋には豊作が予想される。
領民が戻り、牛や新たな農機具、鉄の鋤や鍬によって耕され、効率の良い開墾された田畑に緑豊かに実が実り豊作の年を迎えた。
プロバイダル王国の領民に笑顔が戻った。
豊作により懐が豊かになった農民や、鉄製の鋤や鍬などが大量に売れて懐に余裕が出来たドワーフ族等により、商業や工業も盛んになってきたのだ。
ここで税収入や既得権益の関係で真正カンザク王国とプロバイダル王国の両国対商業ギルドと工業ギルドの二つのギルドとの間に摩擦が生じ始めた・・・。
後で大きな火種になるときがくるとはその時は分からなかったのだが。
まだ商業や工業も発達してきたと言っても、町や村の小さな店や村の鍛冶屋程度で農業が経済の中心であり、それほどその時は大きな問題でなかったからだ。
ギルドよりも当面の課題である軍事的に弱体化したプロバイダル王国の軍の再編成が急務だったのだ。
新女王セレスの戴冠式までの1年間にプロバイダル王国国軍の再編成を実施したかったのだ。
開戦前はプロバイダル王国には正規1個師団約1万五千人を有していたが、その1個師団のうちの大半の約1万人ちかくが戦場の露と消えてしまったのだ。
実際に戦闘に参加したのは国の老若男女を問わず、将兵として集めるだけ集めて2個師団約3万人もが参加したのだ。
特に、プロバイダル王国国軍の王を守る近衛兵や王城の守備兵等の多数の職業軍人やプロバイダル王国王都内で働いていた魔法を使える貴族達が亡くなってしまったのだ。
基本的に農民の土地は長男が継ぐ、次男、三男以下は、その長男の控えであるが成人して土地を受け継ぐと農奴のように扱われるのだ。
その為農民の次男、三男以下の者には職業的軍人になるものが多いのが現状だ。
また、農民出の職業軍人になった者でも戦場の働き次第では将官になるのも夢でなく、最終的には名誉職ながら騎士爵と言う爵位に叙爵される者もいるのだ。
職業軍人にも屯田兵制度で自ら開墾した土地を貸与えたり、開墾中の税を免除したりしたので、職業軍人の人員の確保をすることができるようになってきた。
真正カンザク王国の駐屯兵がプロバイダル王国直轄領で開墾作業を行い、開墾した土地を農民に渡したり、年季が明けた兵達には開墾した土地を譲渡したりしていた。
この噂を聞きつけて農地欲しさに逃散していた農民や山賊や盗賊になって隠れ住んでいた敗残兵が原隊に復帰したりして出身の領地に戻って来たのだった。
ところが原隊に復帰した者の中で、再び逃げ出す者が多い!
プロバイダル王国の軍隊内で行われている無意味な鉄拳制裁が主な原因だ。
理不尽な鉄拳制裁を行った者を傷害、暴行の被疑者として捕らえた。・・・貴族意識で一般兵をゴミのように思っている者が多いのだ。
貴族の地位を剥奪して王国の直轄領で犯罪労働者として働かせた。
これは貴族連中には衝撃的なことで、慌てて貴族の父親が大金を抱えて俺達のところに駆け込んでくる。・・・フッフッフ(悪い笑いがこみあげてきた。)
父親もついでに贈賄罪、賄賂罪で捕まえる。
貴族連中に激震が走った。・・・これで貴族連中の態度が改まれば良いのだが。
貴族の意識を変えるために将兵学校を建てて、そこで軍隊の規律違反者は鉄拳制裁ではなく、今までに無い方法で鍛えたのだ。
兵士の基礎体力作りとして走らさせたり、腹筋や腕立て伏せをさせて鍛えることを覚えさせたのだ。
戻って来た負傷した敗残兵にも開墾した土地を与えたので、多数の敗残兵が集まってきた。
真正カンザク王国と同様にプロバイダル王国の王都や新女王セレスの直轄領地等において識字率向上のために将兵学校以外に、王国軍付属の王立幼年学校を設立する事にしたのだ。
真正カンザク王国と同様に王立幼年学校の生徒は満6歳から15歳までとして、基本的には全寮制で食事等も官費で賄うことにした。・・・軍直属の補助兵士の待遇として扱ったのだ。
王国軍付属と言っても、戦場に出して戦わせるわけでなく、学業以外はやせ細って食事も十分与えられない子供達に食事を与え、柔剣道や弓道をやらせるのだ。
これで真正カンザク王国同様に年少期に少年が労働力として使いつぶされることが無くなり、死者の平均年齢もあがっていった。
王立幼年学校の成績優秀者は士官学校や士官大学に官費で進学することが出来るようにした。
士官学校や士官大学校での教育は、宇宙エルフ族の知識等この世界では極端な高度な教育が行われているので、保秘の関係から今のところは真正カンザク王国にのみ設置することにしているのだ。
また、今回の戦争での課題が、王立幼年学校に入ることが出来ない6歳以下の年少な戦災孤児が多数できたことだ。
この戦災孤児のために孤児院を病院や医療センターに併設して設立することにした。
何やかやと、プロバイダル王国内における戦時中という事を隠れ蓑に領民に高額な税率を課して私腹を肥やしてきた領主の粛清が終了した。
その後も私腹を肥やそうとした領主は地位を剥奪して身柄を拘束し、その領地は新女王セレスの直轄地としていった。
その他にも、この戦争で領地持ちの魔法を使える貴族が何人も亡くなっている。
その領地を継ぐことが出来る直系血族の貴族がいなかったために直轄領になったものを含めて、プロバイダル王国の全体領地の何と7割近くが、女王セレスの直轄領になったのだった。
これらの基本的な政策方針が整い女王セレスの名のもとにプロバイダル王国の平定統治を開始したのだ。
何度も言う事になるが、領地から領民が流出し流民になる原因の一つが重税である。
全ての地方の税率を4公6民と徹底したことから農村から逃散して流民になっていた農民達が元の領地に戻ってきたのだ。
そのうえ他国の流民がその噂を聞いて真正カンザク王国と同様にプロバイダル王国にも流入してきたことから両国の人口が急増していったのだ。
真正カンザク王国やプロバイダル王国に流入する流民に対しても、領地の開墾開拓作業などの仕事を与えていったのだ・・・流民が真正カンザク王国やプロバイダル王国の王都でスラム街を形成させないためでもある。
流民に対しても開墾開拓作業では今までの石製の鋤や鍬ではなく、鉄製の鋤や鍬を貸し与えて作業効率をあげていく。
また牛と犂も貸し与えて、牛が犂を引っ張って農地の開墾作業を行っていったのだ。
牛を扱う事によって畜産業が発達して、農業試験場において念願の乳製品、牛乳やチーズ等が作られた。
この乳製品を使った菓子製品が出来る事により、街中に菓子店やパン屋さんが出来、国内にまで商品の販売が広がって行ったのだ。
この事は農業だけでなく工業、鍛冶師の仕事が増えた。当然物の流れ、流通産業が活性化されてきた。
ただ、この事から、さらに真正カンザク王国とプロバイダル王国の両国対、商業ギルドや工業ギルドの二つのギルドとの対立が浮き彫りになってきたのだ。
この二つの商業ギルドと工業ギルドの存在が国の税収入への道を閉ざす存在としてたちはだかってきたのだ。
商業ギルドや工業ギルドは国とは別の独立した機関であり、ギルドが鍛冶師や商店に仕事を発注して、その利益の一部を納めさせている為、鍛冶師や商店に税金を課すと重税になってしまうのだ。
またギルドを通しているため、具体的な仕事量や販売量がわからないのも現実なのだ。
商業ギルドや工業ギルドから税金を取ろうとすると本拠地が別であるから払わなくてよいとか、投資がどうとか、利益があがっていないので駄目だ等と言って断られてしまうのだった。
商業ギルドや工業ギルドを通さないで、王立の工場や商業施設を建てると、既得権益がどうのこうのと言って横槍をいれてうやむやにしようとするのだ。
しかし、今までに無かった鉄製品の鍬や鋤を俺が製造したのだ、鋤や鍬を国が独占的に製造販売できる国営企業として立ち上げて、真正カンザク王国とプロバイダル王国の両国内の商業ギルドや工業ギルドの力を削いでいったことも事実である。
冒険者ギルドも商業ギルドや工業ギルドを調べていくうちに、それらのギルドの本拠地は魔王国にあるらしい。
その冒険者ギルドも商業ギルドや工業ギルドのトップが3Sの冒険者カードのただ一人の所有者魔王と呼ばれる男だった。
どうも色々なところで魔王は俺の弊害になってきているのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます