第43話 隣国プロバイダル王国との開戦

 今回の件でクリス達が作り上げた転移装置については、今のところ上手く作動することが確認された。

 この転移装置は魔の森の湖畔の館と、カンザク王国の王城予定地、世界樹教の社務所、山岳エルフ族が以前住んでいた洞窟は噴火の後に再度設置してある。

 残りは真正カンザク王国の重要都市である、南カンザク地方城と城塞都市、オアシス城壁都市に設置することにした。


 俺は北カンザク地方の以前山岳エルフ族の住んでいた洞窟に転移した。

 この洞窟の中に転移装置を設置するためだ、その理由は、この洞窟の山頂からの眺望は最高で、宇宙エルフ族の開発した大型の特殊望遠鏡を使うとヤマト帝国の王城の状況がある程度見えるからだ。

 対仮想敵国の諜報活動も重要な仕事だ。

 それで、この場所を北カンザク地方山岳警戒所と命名し、常時50人以上の警戒員が詰める事になった。

 ここの警戒員に任命されたものは、連絡の為に転移装置がすぐ使えるようにしたのだ。


 ただ、この山頂付近は万年雪で寒い。

 火山活動の影響で、洞窟内の毒苔の毒素どころか胞子まで焼き尽くされて、これに悩まされることはなくなった。

 ただ、毒苔が繁殖すると熱を発生させて、酸素まで供給していたがそれが無くなったので、とてつもなく寒いうえに酸欠になりそうだ。

 このきつい環境で耐えるのだから転移装置ぐらい使わせてあげなければならない。

 酸欠と凍傷の治療のため人数分の簡易型医療ポットを設置している。


 最下層のサルにまで退化した山岳エルフまで全ての山岳エルフが火山の噴火騒ぎで、半ば強制的に世界樹の周りに住むことになり転移装置で転移し終わっているのだ。

 山岳エルフ族の毒苔の毒素を抜くために簡易型の医療ポットがこの洞窟の中で使われていたが噴火騒ぎで、その簡易型の医療ポットも世界樹の社務所の横に病院を建築しその中に移設して使いやすくしてあるのだ。

 世界樹教のお参りだけでなく、近くに温泉があったので湯治客とともにこの病院で怪我を治していく人も多くなった。


 洞窟内の毒苔は火山で駆逐された。

 山岳警戒所で警戒員が常時駐屯することもあり、噴火前に洞窟内で100基もの簡易型の医療ポットを設置していた医療用の大型テントを再利用して、その中で安全で食用になる苔や野菜類を栽培することにしたのだ。


 山岳警戒員のヤマト帝国の監視以外のもう一つの任務が、洞窟内の毒苔が再度繁殖しないように見回り、毒苔を見つければ駆除して変わりに安全で酸素を発する育成した苔を植え付けていくのだ。

 徐々にではあるが洞窟内での酸欠事故が無くなり安全になって来た。

 また寒さ対策としては、最下層のマグマ溜まりを利用して温水を作って床暖房や風呂場を作った。

 これは山岳警戒員の士気向上に寄与した。


 山頂を整備していく。

 洞窟内は最下層のマグマ溜まりの熱を利用して、床暖房など改良していったら、毒苔の時以上に暖かくなったので洞窟内に山頂ホテルをつくた。

 冬山は過酷な環境な為、比較的穏やかな夏に夏山スキーを楽しんだ。

 夏山スキーのためにふもとと山頂ホテルに転移装置を作った事から、この山頂のホテルに泊まって、夏山スキーを楽しむのが俺たち家族の楽しみになったのは子供達が大きくなった後の話である。


 転移装置については、最初の内は俺達の家族や腹心の部下、山岳警戒員だけが使用を許可することにしている。

 ただ、安全だと思われた転移装置で不幸な事故が起きた。

 カンザク王国の王城予定地から山岳エルフ族の以前住んでいた洞窟への移動者と、山岳エルフ族の以前住んでいた洞窟からカンザク王国の王城予定地への移動者が偶然にも一致して移動してしまい、次元の狭間に漂って、戻って来た時は肉の塊になっていた。

 これ以後、今後このような事故が起きないようにするため、転移装置はそれぞれ双方向に設置する事にした。


 これで、カンザク王国の魔の森とカンザク地方や南カンザク地方、北カンザク地方の山岳地帯など全て俺の勢力下に入って、名実共に統一された真正カンザク王国になったのだ。

 俺は国内統一にともない、度量制度と貨幣制度を統一した。


 度量制度はキロとヤード、尺等の長さの違いやキロとポンド等の単位は統一した方が施政者としても国民達にしても使い勝手がらくになるからだ。

 また貨幣制度の統一などは、地方領主が勝手に貨幣を発行したりすることで、経済が上手く回らないことや

『悪貨は良貨を駆逐する。』

ということわざがあるとおり、国の乱れにもなることから、王国のみが貨幣の発行の権利を有することにした。

 王国の王都に造幣局を造り、貨幣を預けたり交換する場所を国営銀行のみとして、税徴収事務所を併設して各所に造ったのだ。


 地方領主の中には、貨幣発行権を取り上げられて、税制度の権もあったので反乱を起こす者が何人か出た。

 当然それらの者は鎮圧して地方領主を解任して、領地を王国の直轄領にしていった。

 ただし代官は地方領主の血縁の者か家宰を人物選考のうえ任命した。

 また、勝手に貨幣を発行する地方領主も同様に解任して領地を王国の直轄領にした。

 この場合は人物選考のうえ、できるだけ地方領主を代官に任命した。

 これらの者の領地ばかりではないが各領地の領主の館の一角に国営銀行の支店と税徴収事務所を設置して領主や代官の動向を確認した。


 俺はさらに国内統一と識字率向上のために、学校教育に力を入れる事にした。

 今までの冒険者予備校だけでは教育機関とはいえない。

 元南カンザク王国の反乱により、敗残兵が多数出たことから職業訓練学校を設立した。

 また、今まではこの世界では子供は親の所有物であり、その子供をすりつぶすように酷使して、幼くして亡くなる子供が多数いて平均寿命をさげていた。

 子供の命を守るために王立幼年学校を設立していた。

 今後は、王立幼年学校の卒業生の為の士官学校と、専門的な教育機関として士官大学と教育大学、税徴収大学等の設立をめざしたのである。


 前世の日本での幼年学校と呼ばれていた学校では満13歳から15歳の者が入校していたが、この世界で王立幼年学校には満6歳から15歳までのいわゆる小学校入学から中学校卒業までの小中一貫で教育するのだ。

 王立幼年学校の卒業生の大半は職業訓練学校に進んだり、冒険者予備校に進んだりする。

 また一部、成績優秀者等は士官学校で16歳から18歳までの前世での高校生生活を送り、その後は士官大学等で4年間送る事にした。

 その後は能力に応じて軍隊に籍を置きながら、王立幼年学校のアンドロイドの先生と交代したり、税金の徴収官として活躍する事になる。


 一応10歳以上は慣習法として成人と認められていたものを、冒険者予備校の卒業時や王立幼年学校の卒業時には15歳以上になることから、15歳を成人とすると法律で成文化した。

 これにより、真正カンザク王国においては士官学校に入学した生徒から成人兵として前線に出ることになる。


 今は学校制度を創ったところで士官学校の生徒は、俺の女官見習いや近衛見習いの子供などほんの数名しかいない。

 そういう俺も19歳になっているので、ユリアナとセーラとセレスとクロも同い年なので士官大学校に入学する事になった。

 前世では大学に行かなかった俺が士官大学校等の創始者で学校長でありながら、大学1年生などとは変な感じだ。

 その他の人達も年齢に応じて各学校に入学してもらった。

 カンザク王城や元南カンザク王国の王城にいた学者や宇宙エルフ族の医師や科学者、技師長達にも教授になってもらった。


 後日王城にいた一部学者の知識の無さには愕然とした。

 当然おやめいただいた。

 年を取るにつれて知能が落ちているのだ不思議な現象である。

 至急調査が必要だが、山岳エルフ族の際に見つけた毒苔の影響が考えられる!


 真正カンザク王国は学校教育とともに軍の整備が進んでいる。

 真正カンザク王国の男性は王立幼年学校の卒業後の16歳から30歳までの間の5年間、徴兵制度を行っており軍籍に身を置くことになっている。


 士官学校に進み士官大学校に進めば徴兵制度の期間を過ごすことになるが、その他大学に進んだ者は卒業後残り2年間軍籍に身を置くことになっている。

 ただ、教育大学や税徴収官大学等の大学に在籍する者は、その大学4年間のうちに、別単位の軍隊に関する単位を2年間の間取っていれば、卒業後の残りの2年間軍籍に身を置いたことにしたのだ。

 卒業後は幼年学校の先生や税徴収官の仕事に専念してもらうためだ。


 近衛の団長と元南カンザク王国騎馬軍団長のクロ、そしてベックさん達三人が中心となって軍の整備と体勢が整ってきている。

 特にカンザク王国の近衛の部隊と南カンザク王国の精鋭部隊等を吸収合併して、真正カンザク王国軍としての整備が進められているのだ。


 当然、真正カンザク王国国王の俺が総軍団長で元帥。

 真正カンザク王国の王城等の守備隊等の常備部隊を第一師団として総司令官にベックさんを大将に任命した。

 ベックさんには巡検士部隊の総司令官も兼任してもらっている。


 地方の師団は屯田兵制度を採用して、元カンザク王国、カンザク地方を拠点とする第二師団を元近衛師団の団長が大将として指揮をする。

 元南カンザク王国、南カンザク地方を拠点とする第三師団を元南カンザク王国騎馬軍団長のクロが大将として指揮する事になった。


 俺の幕僚は俺の妻達が勤めることになり、全員が将官になってもらい有事の際には前線に出ることになった。

 ただ現在身重のモンとクリスは魔の森の湖畔の館において、皇后と宰相夫婦のもとで真正カンザク王国の国内の安定を図ることになっている。


 真正カンザク王国の統一後、学校教育や軍の整備が整い、農業だけでなく商業なども発達してきた真正カンザク王国であった。

 真正カンザク王国の発展は隣接する他国の脅威となる。

 それは隣国プロバイダル王国も例外ではない。

 4公6民のように納税が低く過ごしやすくなってきた真正カンザク王国に過重な税をかけられている隣国のプロバイダル王国の逃散した農民が流入する。

 それだけでもプロバイダル王国の国力が減少するうえ、真正カンザク王国の商業や工業力においてもプロバイダル王国のより上である。


 このことが火種となり、ついには真正カンザク王国と接するプロバイダル王国が国力による圧力に反発するかのようにして、領土拡大のために魔の森に侵入してきたのだった。

 魔の森の外周は、宇宙エルフ族の宇宙船R-1が不時着した影響で出来た山岳地帯が存在する。

 それは魔の森の帝王を中心に円形状に囲むように出来あがった3千メートルを超える山岳地帯で、このカンザク山岳地帯が魔の森への侵入を阻んでいたのだ。


 プロバイダル王国の魔法使い達が、そのカンザク山岳地帯の山の一部を土魔法で大きなトンネルを掘って俺の領地である魔の森の中に侵入してきた。

 魔の森の中にいた魔獣や魔獣植物が討伐されていると、魔の森に住む軍狼からも俺の元に連絡があった。


 俺は直ちに、魔の森は俺の領地であり、真正カンザク王国の領土であることから不法な侵攻は許さないとプロバイダル王国に特使を派遣したが、その返答が首だけになって帰ってきた特使の哀れな姿だった。

 これは隣国プロバイダル王国の実質的な宣戦布告であり、その結果隣国プロバイダル王国と開戦することになったのだ。

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