2

 俺たちは一度家に帰って、昼飯を食ってから俺の家に集合した。

 二人が席に着いたのを確認すると、俺はテーブルに作戦計画書を広げた。


「まずは役割を決めよう。希望はあるか?」

 俺が問うと、


「我輩は女性教員の水着担当を希望する」

「俺は女性教員の水着を担当したい」


 即答だった。そして二人の返事は全くの同時だった。

 二人はにらみ合った。


「まあそんなことで揉めるなよ。じゃんけんで決めなさい」


 俺だって本当は水着担当が良いのに譲ってやってるんだからな。


 俺が言うと、水島と中野は渋々ながらじゃんけんをし、結果中野が勝った。中野は飛び跳ねて喜び、水島はテーブルを殴った。


「お前八つ当たりやめろよ。コップが倒れたら計画書が濡れちまう」


「……すまねえ」


 水島は代わりに自分の顔面を殴った。鼻血が垂れる。


「お前、鼻血垂らすなよ。計画書が汚れる」


「……すまねえ」


 水島は親指を鼻の右の穴に押し込んだ。ティッシュすら節約するのかこのドケチ。

 一悶着あったが、再度水島に希望を聞くと何でも良いと言うので、俺が教員担当、水島が補習対象者担当に決まった。


「よし、水島は明日、登校する生徒たちを狙えばいい。俺と中野は学校に戻って作戦を開始しよう」




 会議が終わると俺と中野は学校に戻り、各々作戦行動を開始した。


 俺は犯人が俺だとバレない様に覆面と被り、次々と男性教員に襲い掛かる。

 体育教師の顔なんて全員は覚えていない。それっぽい日焼けした男やガタイの良い男は全員ターゲットにし、合計二十人を泳げない体にした。これは明らかに体育教師の数より多かったが、俺たちが女の子と水泳をやるための必要な犠牲だったのだ。許せ。


 俺の仕事が終わると、中野との合流地点である校門に向かった。互いの首尾に問題が無ければそのまま解散である。

 校門に着くと、そこにはすでに中野が居た。両手いっぱいに水着を抱えている。袋に入れるとか何か出来なかったのか。

 合流すると互いに報告を済ませ、問題が無いことを確認し合った。


「よし、お互い問題は無いな。じゃあその水着は持ち帰って、分け合うか?」


 俺は再び水島を俺の家に呼び出し、中野を加えた三人で水着の山分けを行った。

 水着はデザインとサイズに若干の差はあったものの、どれもオーソドックスな競泳水着だった。それゆえ、価値というのは誰が着ていたかで決まった。つまりどれも無価値だった。

 優子先生以外の女性体育教師など、貧乳おばさんしか存在せず誰も欲しがらなかった。水島を除いて。中野が水着回収任務をやりたがったのは、他より楽だからだった。


 俺は水島に水着を全部渡すことにした。


「水島、なんでこんなものが欲しいんだ?」


 水島は答えた。


「売って金にするんだよ」


 やっぱり俺は水着をゴミ箱に捨てると、明日に備え解散した。




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