6
家に着くと、とりあえず血だけは拭いてから、ベッドに川上を寝かせた。
さて、頭意外の怪我の具合を確認するために脱がさないといけない訳だが、これはあくまで怪我の確認であって、下心は一切ありません。必要な作業なのです。信じてください本当です。下着を脱がすのも、漏れの無いように確認するためです。いや、怪我の手当ての御褒美に裸を見たって罰は当たらないでしょう。裸一つで命が助かると思えば、安いものではありませんか? というかもう何度も見てるんだから、もう一回くらい見ても良いでしょうが。もう俺のことを殺そうとしないと思うと、急に性欲が復活してきやがった。
私は服と下着を脱がします。
そして、怪我の具合を診てから適切な処置を致しました。
胸が苦しそうだったので、揉んでほぐして上げました。
数十分後、川上は目を覚ました。
その時には川上にはきちんと服を着せておいて、俺はプリティーなんとかというアニメを見ながらコーヒーを飲んでいた。
こういうアニメも、作戦のヒントになるから侮れない。
俺は川上が起きたのでテレビを消した。
「あれ、永井君? ……ここは?」
川上は部屋の中をきょろきょろしながら訪ねた。
「俺の家だ。血を流して倒れていた君をここまで運んできた。済まない、君の家が分からなかったんでね」
「い、いえ、そんな! 助けていただき、ありがとうございます!」
川上は頭を下げた。
ああ、普通だ。やはり心中のことは忘れている。
再び仲を深めると、また心中なんてことになりかねんかもしれんから、これからは普通の友達として仲良くやっていこう。
そんなことを思っていると、川上はもじもじし始めた。トイレか?
「――ということは、永井君が命の恩人ということになるんですよね?」
「まあ、そういうことになるな」
「でも、私が倒れたのはマンションの敷地内、外の道路からは見えないはず……。それに夜の住宅街に何の用が……」
「い、いやそれは、なんか急にそんな気がしたんだよね! ビビッと来たというかさ! あ、なんか居るわ! って」
我ながら苦しいか? とも思ったが、川上は瞳を輝かせる。
上手く行ったか?
「え、それってすごく運命的じゃないですか? 何かテレパシーとか通じた、みたいな」
「か、かもしれないな」
都合がいいので話を合わせておく。
「え……好き……」
「何で!?」
なんかいきなり告白されてしまった。
「だって永井君は命の恩人だし、私たちテレパシーで繋がってるんですよ? これもう運命の相手としか言えませんよ!」
「そうかな?」
「そうですよ! 言葉も要らず通じ合うって素敵、まるで私のよく読んでる本みたい――。憧れなんです、そういうの」
なんか聞いたことあるような感じのセリフ!
……なんかこの流れ、マズくないか? 絶対その先を言うなよ!
「きっと、永井君となら、本の物語と同じ様に、真実の愛を育めます。どうか、私と心中してください!」
またもや悪魔のセリフを言われてしまった!
やっと抜け出せたと思ったのに、また命を狙われる地獄の日々に逆戻りかよ!
――――どうしてこうなるの!?
後日、普通に警察に相談した。
おかげでこの件は解決した。
ある日の教室の朝。
「なあ永井、もう川上は心中をせがんで来ないんだろ? じゃあ、今なら付き合えるんじゃないか?」
「いや水島、それは違う。今はあいつの片思いだから何とかなってるが、これで付き合ってエッチしてみろ。相思相愛の仲だ。こうなると心中要求の、正当なる理由が立っちまう。これで心中を断ったら、裏切りとみなされて殺されるぞ」
「随分川上に詳しくなったな」
そこへ川上が登校してきた。
そこに居るのは、かつての川上ではない。
「おは、おはよう、永井君……っ! 今朝は良い心中びよ……じゃなかった」
川上は言いかけたセリフを我慢するため、身を捩じらせる。
しかし、我慢するのは相当苦しいご様子で、体中を搔いたり、つねったり、不思議な踊りを踊る始末。
「駄目、心中は駄目、心中は駄目…………心中――あんっ」
川上はなんか変に悶えるヤバいヤツになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます