その後

 思ったより長居してしまったため、お暇しようとしたところ。


「あーぅえ……」


 行ってしまうのかと大きな目が潤むのを、無下にはできなかった。

 周防から義母上の食が細いとの話も聞き、本日はこちらでおやつを食すことにした。


「ほら。そなたの好む南瓜だ」

「あ!」


 小さな匙を今若丸の口元へ持っていくと、上に乗っている南瓜を口へ入れた。離れると帰ってしまうと思うのか、いまだ私の膝の上にいる。


「よく噛むのだぞ」

「ん!」


 こくりと頷き、もぐもぐと小さな口を動かす。小動物のようで愛らしい。


「さ、姫様も」

「……えぇ……」


 周防に勧められた義母上も、賽子さいころのように小さく切られた南瓜をひとつ、口に運ばれた。

 本日のおやつは、小豆と南瓜の薬膳料理。薬膳といっても苦味はない。高い栄養価を持つため『薬膳』と称しているのだ。

 小豆と糖度の高い南瓜を柔らかくなるまで煮て、昆布と少量の塩で味つけをするこの一品。弟たちも好んで食し、我が家のおやつの一翼を担っている。

 やさしい甘さに、今若丸はもちろんのこと、義母上の顔もほころんだ。


「……美味しい……」

「それは良うございました」


 ほっとする周防は、母のような顔をしていた。



 おやつを食し終え、主殿に戻った私を待ち構えていたのは……


「……兄上と、おやつ……」


 目を潤ませた弟と、


「むーっ」


 最大限に頬を膨らませた妹だった。

 本来の、主殿にて弟妹とおやつを……という予定変更を知らせなかった私が悪い。


「すまぬ。抱っこで許してくれぬか?」


 この提案に、弟は頷いてくれたのだが。


「むうっ」


 妹の機嫌を直すには、少々骨が折れた。


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