有能なお付き

 私室へ戻ると、


「申一刻から申二刻(午後三~四時)の間なら良いかも……とのことですわ」


 近江から北対の返答を伝えられた。

 ここ連日で、常盤の義母上が体を起こしていられる時間帯らしい。長くは無理のようだが。


「ではその辺りで、見舞いを取り次いでくれ」

「かしこまりました」

「そなたの有能さ、私も見習わねば」

「若様……ありがたく存じますが、できれば小出しにしてくださいませ。朝から心の臓が跳ねるようで、落ち着きませんの」

「心の臓が? 薬師殿に診てもらうか? そなたに何かあれば、私も落ち着かぬ。仲綱殿にも申し訳ない」

「ですから……わたくしが、慣れるしかないのですね」


 近江が困ったようにため息をついた。


「憂いごとは申せよ。そなたに、いらぬ我慢はさせたくない」

「若様……!」


 なぜか叱られてしまった。きっと私の精進が足りぬせいだろう。

 これは、体がだるいなどと言っている場合ではないな。午前の学問に励まねば。


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