第284話 魔王の能力

「主、安心してください。あんなことが出来るのは他にはルキデウスくらいです。全員がこんな事が出来たら、魔族領はとっくに滅んでいるでしょう」


「そ、それもそうだよな」


「にゃ~んだ、ばれたかにゃ。うんうん、冗談だにゃ。これはオイラと相棒が使えるユニークスキルなんだにゃ。1日に何回も使えないけど、相性がいい相手に成功した場合は、一生オイラの下僕になるスキルなんだにゃ~」


「何ツー恐ろしいスキル持ってんだよ!」


「え~、最初から持ってたわけじゃ無いにゃ。これは、前にお前達に遭遇時に偶々獲得したんだにゃ。いや~、あのときは感謝しているにゃぁ」


 相変わらず話の見えない事を言う猫魔王であるが、とあえず何度も使えるものじゃないという事だけ分かっただけ良しとしよう。

 それよりも、あのボス悪魔が仲間になったという認識でいいのだろうか?


「ん?ああ、あの悪魔達はもう襲ってこないにゃ。ここらの悪魔の支配権は、あのカースオブクイーンという悪魔が持っているからにゃ。心配はないんだにゃ」



 クロノスのおかげで戦慄したあとに、拍子抜けする事になったが、今はこの状況に甘んじるべきだろう。

 中に入ってからずっと戦いっぱなしだったわけだ。

 なので、ここで休憩出来るのはありがたい。


「それじゃ、扉の向こうで一旦キャンプを張ろう」


「了解だにゃ。オイラもそろそろ腹が減ったにゃ。何か食わせろユート」


「お前、自分で食料持ってきているだろう?自分で用意しろよ」


「嫌だにゃ!オイラは料理は得意じゃないにゃ!おまえんところの、メイドの飯がうまいにゃ!」


「旦那様、僭越ながら私にお任せください」


「おう、メイア済まないな。この我儘大魔王を唸らせる物を作ってやってくれ」


「承知しました、すぐに準備します」


 『まったく覇王はケチなんだからにゃー、最初から出せばいいにゃ』とぼやきつつも、尻尾が嬉しそうにぶんぶんしているので、本気で喜んでいるのが丸出しである。

 なんとも憎めない奴なので、そう言う意味でもこれからも仲良くしていきたいところだな。


「あ、クロノスさ~ん。一緒に食べるの?」


「お、ユートのところのリンだにゃ。一仕事終えたから、ご馳走してもらえる事になったにゃ」


「そうなの?あ、さっきの悪魔達のやつだね。すごかったね、クロノスさん!」


「いや~、それほどでもあるにゃ~」


 リン相手にデレデレなクロノス。

 なんというか、さっきまでの覇気はどこにいったのか・・・。


 しかし、リンに任せておけばゴキゲンのようなので、そのまま放っておくことにした。


「さて、問題はこの先だなぁ…」


 この先はクロノスに期待はしない方がいいだろう。

 さっきも、この先は手を出せないと言っていた。


 ここから先は、星の神殿らしいので、試練という意味でも俺達だけでなんとかしないといけなのかもしれない。


 だが、ここから更に敵が強くなるということであれば、この先はメンバーを厳選したほうがいいだろう。

 なので、Aランク以下のメンバーはこのキャンプに留まって貰うのがいいな。


「おーい、セツナ、カイト。ちょっとこっち来てくれ」


「はい、なんでしょう?」


「なんだユート」


 二人は呼びかけるとすぐにやって来てくれた。

 覇王のスキルで、この先に生息している魔物や魔獣のおおよその強さを伝える。

 正確にステータスが分かるわけではないが、どのくらいの脅威度かは判明している。


 その情報を二人には伝えた。


「なるほど。そう言う事であれば、子供たちは連れて行けないですね」


「ああ、残念だけどこの先に連れて行くと、流石に俺らが守っても死者が出るかもしれない。蘇生も何度も使えるわけじゃ無いから、ここに逗留するのが妥当だと思う」


 ここは最終決戦とかそういうわけでもないし、もしそうだとして子供たちを犠牲にしてまで戦いたいとか俺には無い。

 連れてきたのだって、子供達を成長させることでより生き延びやすくするためなのだから。


「ユートさんがそう言うのなら、しょうがないですね。そうなると、連れて行くのは…」


「俺と、聖女3人は必須だから、それ以外はカルマ、ニケ、ヘカティアとディアナ、あとはセツナとカイト達だが…」


「そうだな。ユートと一緒に高ランク全員が居なくなってしまった場合、ここの守りが薄くなる。かといって私一人では対処しきれないだろう」


「そうなると、必然的に俺らが残るという事ですね・・」


「ああ、そうなる。済まないが頼めるか?」


「そりゃあ、みんなの安全を守る為と言われば、残るしかないでしょう」


「ああ、頼りにしているんだカイト。念のため、ニクスは置いていく。彼女もSSランク魔獣だから、安心出来るだろ?」


「はい、わかりましたよ」


 そこで中華風ドレスを纏ったニクスが現れた。

 最近、戦闘以外はこの恰好でいる事が多い。

 いや、さっきの戦闘中もこの姿だったか?


「我が手助けしてやるのだ。カイトよ、感謝するのじゃぞ?」


「ああ、わかってるよ。実力だけは確かだからなぁ。でも、俺の方が先輩なんだからな!」


「なんじゃと!?我を新参者扱いするでない。これでも我の方がちぃーっとばかし主殿とは付き合いが長いのだからな!」


 なんか二人で不毛な争いをしているが、ここはスルーだな。

 とりあえず決まった事だし、セツナにも伝える事があったな。


「じゃあ、決まりだな。セツナは子供達に説明をよろしく頼む。帰りも激しい戦闘になるからしっかり休むようにともな」


「了解した。では、私は休憩を挟んだら出発の準備をする」


「ああ、頼んだよ」


 こうして、これで星の神殿の攻略チームが決まった。

 この先の強敵はどれほどなのか。


 そんな事を考えながら、俺は次の準備に取り掛かるのであった。


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