第268話 獣王は〇〇〇出来るのかしら
───1時間後
再び俺は王宮に呼ばれてきている。
レオナルドは、お咎めなしとなったらしく、王の横に佇んでいた。
ラーザイアもさきほどの戦闘服から王らしい服装に着替えていた。
「ユート、お前ほどの強い人間に俺は初めて会ったぜ。あれでも、まだ奥の手はあるんだろう?」
一瞬、ギクっとするが表面上は何のことか分からないという顔をしておく。
さすがに奥義まで、必要がないのに見せても特はしない。
「さて、何のことでしょうか?俺はあれで全力だったさ」
「くくくっ、じゃあ今はそういう事にしておこう。俺も十分楽しんだからな、約束通りノームに会わせてやる!」
「本当か!」
「ああ、俺にあれだけダメージを与えれるやつなんざ、この国でも殆どいない。最強こそがこの王座に座る。それがこの国の掟。だからこそ、絶対強者である俺様がやってるんだが…。最近俺に挑んでくる奴が少なくてな。丁度退屈していたんだ、いやー、いい運動になったぜ」
こちとら死ぬかも知れないくらいの攻撃されまくってたので、素直にそれは良かったとか言えないわ!
一体どこの戦闘民族なんだよ…。
「最近だと、近くに新しく魔王になったクロってやつくらいかな?お前も会ったことあるんだろう?」
「クロ?いや、その名前は知らないかな。というか、うちのペットと同じ名前だけど」
「んん??ああ、そうか。正確には、魔王クロノス。それがアイツの名前だ」
「!!」
「お、その顔は知っているみたいだな。アイツもかなり強いからな、いい遊び相手だったんだが同盟結ぶ事になっちまってな…。中央の魔王達を倒すまでは、お預けなのさ」
「ラーザイア様!?」
「いい、いい。隠してもしょうがない情報だ。どうせルキデウスは分かっているだろうからな」
ラーザイアの隣にいる、いかにも大臣みたいな髭を生やした獣人が窘めようとするも、手をひらひらさてけむに巻くラーザイア。
その様子を見るに本当に大魔王ルキデウスに挑む気でいるようだ。
「だがその妻のルーティアが、俺らを唆そうとする理由はまだ不明だが…、いや、なんとなくは気が付いているがな…。おっと、今日からユートならびにその配下達をこの国に自由に出入りする事を俺が認める!異論があるものはいるか!」
レオナルド以外の将軍達は、顔には不満ですと出しているが言葉にして反論するものは居なかった。
「よし、ないな?ユート、今日からお前は俺のダチだ。好きにするがいい。ノームに会うのはしばらく待て、今はいいタイミングじゃない。そのうち使者を寄こすから、サーバンの宿にでも泊まって待っててくれ。1つ宿屋を貸切にしておくから、そこで仲間を含めて自由に使え。あとは、レオナルド!」
「は、陛下」
「お前らの身代金は、いくらだ?」
「全員で、金貨40万枚かと」
「ふん、安いな。お前の命と比べればな。よし、コワン大臣。金貨を用意出来たらユートに持っていけ。ちゃんと証書とれよ?その際に、預けている武具も回収したい。それでいいか?」
「問題ないよ。武具は飛行艇に保管しているので、町の外で構わないか?」
「ああ、カーゴタートルを数匹連れていく。それで回収させよう。分かったなコワン」
「はっ、仰せのままに…」
額から汗をだらだらと流しながら、部下に指示をだすコワン大臣。
普段からこの獣王には無茶ぶりされているんだろうな…。
少しだけ同情するよ。
「では、明日にでも引き渡しを行おう。そのあと、兵士は解放してもらう。まぁ、サーバンで寛いでいると聞いてるからあいつらにしたら、休暇中と変わらんだろうがな」
「一応監視しているとは言っても、そっちの町の中だからね。ほぼ、今でも自由みたいなもんだな」
「そうだろうな。まあ、そこはいい。ノームの神殿にいくまでは、監視という名目でレオナルドを付ける。お前たちは客人扱いだが、人間だからな。良からぬ事を考える馬鹿が出て、無駄に民が減っても困るからな。特に、そこにいる大魔王の息子とかよ」
あたりがざわッとする。
全員の視線が、カルマに注がれた。
「ふん、余計な話を…」
「お前は忘れているのかもしれないが、俺はお前に会ったことがあるんだぜ?」
「なるほど、あの時の獣人の王子がここまで成長したのか…」
「もう百年くらい前だからな。まぁ、お前の母親もそこで会ったのだがな」
「カルマが魔王の息子?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「いや、魔王城にいたのは知っているけど、息子とまでは…」
そもそも、俺が知っているカルマはナイトメアが本体だ。
魔族側のカルマの情報をすべて教えて貰っているわけではない。
ただ、なんとなくだが気が付いてはいた。
黒の女神の化身である、闇の女神。
そこから生まれたであろう、闇の精霊。
その化身であるカルマは、間違いなく闇の女神より生まれたものだ。
そして、あの星の侵略者が隣にいて何もしていない筈がない。
となれば、必然とそこに辿り着く。
考えないようにしてた、…というよりは、別にそうであっても関係ないからという方が大きかったかもしれないが。
「まぁ、だからなんだって感じだけどね」
「主…」
「ほう、ルキデウスの傀儡では無いかと疑う気持ちはないのか?」
「だとしたら、俺はとっくに死んでいるさ。だから、そこはラーザイアも心配しないでいいぞ?」
「ふふ、はははは!やっぱ面白いな、お前。まぁ、そうまで言うなら気にしないさ。ただ、暴れられると困るっていうのは本当だからな?まじで暴れさせるなよ?」
「分かったよ。そっちの方もちょっかい掛けないようにしてくれな。流石に襲われたら反撃するからな」
「そこは、厳命するさ。破ったら、俺が直接処刑するとな」
それを聞いていた、レオナルド以外の将軍たちの顔がウッっとなった。
なんというか、ある意味で素直な人たちだな。
「じゃあ、話はこれでしまいだ。今日は用意した宿でゆっくりするといい。諸々の手続きも明日以降だ」
「わかりました。ありがとうございます、獣王様」
「今更取り繕われてもキモチワルイ。ダチなんだから、気軽な呼び方でいい」
「分かったよ、ラーザイア。しばらくよろしく頼んだ」
「それでいい。ああ、任せな」
そうして、妬まれたような視線を浴びながらも、最後はなぜか獣王と仲良くなってしまうのだった。
「獣王もテイム出来るのかしら?」
と、そんな事を宿屋についてからアリアが呟いたとかついてないとか…。
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