第267話 獣王への謁見の筈だったのに。②
───そして、2時間後。
「よーし、良く逃げずに来た!その心意気だけは褒めてやるぜ!」
今、俺はなぜか闘技場にいる。
そして、観客席は沢山の獣人達が俺らの戦いを見る為に座っていた。
「えーと、これは?」
「娯楽が少ない国だからな、定期的に闘技場でイベントをやってるんだ!普段は、武器もありだが今回は殺し合いじゃねーし、俺との戦いだからな。お互い素手とスキルだけの勝負だ。あ、魔法もいいぞ?俺には大して効かないからな」
いつのまにか、俺と獣王の戦いが興行化されている!?
よく見ると賭けの対象になっているらしく、みんな予想合戦で白熱している。
しかも、その掛けの内容が酷い。
俺が何分立っていられるかで競っているみたいだ。
因みに超大穴は俺が勝利するで、オッズは3000倍らしい。
確かに俺が勝てる見込みは、ほぼ無いだろうけどさ。
こうなったら、勝てないとしても必ずチカラを認めさせてやる!
「主!我等はここで見守っております!その獣王とやらの鼻をへし折ってきてくださいっ!」
と会場の熱に当てられたのか、興奮気味に大声で応援するカルマ。
「主様!頑張って下さい!」
「ユートさん!頑張って下さ〜い!」
「パパ頑張って〜!!」
ニケ、アリア、リンも周りに負けじと声援を贈ってくれた。
「こうなりゃ、やってやるわっ!」
もう、この目の前の獣王を倒すつもりで挑むことにする。
奥の手を見せていいのかって?
それをしても勝てるかどうか不明な相手に、出し惜しみしてどうする!?
それくらいしないと、対等な関係にはならないのは明白だ。
それなら…。
「スキル『覇王』開放。『覇王の神眼』開放、『覇王の盾』開放、『覇王の号令』発動、魔法"アークブレス"!そして…」
竜玉を取り出して、中のイドラに念じる。
(最初から全力を出すからチカラを貸せ!イドラ!)
「ほう、そのオーラは正に『覇王』のオーラってやつだな。あの女は嘘を言ってなかったか。こりゃあいいなっ!いくぞ!!」
カアアアンッ!と始まりの合図で鐘の鳴る音があたりに響き渡った。
鳴ると同時に、ラーザイアがユート目掛けて飛び出した。
「〈幻体龍神〉!」
掲げた竜玉が光った瞬間に今までとは違う金色のオーラが俺を纏った。
次の瞬間、ラーザイアの拳が俺を捉えようとするが、そこでそれの姿がゆらっと消えた。
「なっ!?俺が見抜けない幻覚だと?!」
「そんな生易しいものじゃないさ。はっ!!」
消えた筈の俺が直ぐ横に現れて、オーラを纏った一撃をラーザイアの横っ腹を殴りつけた。
「ごはぁっ!なにぃっ!!」
自分の鋼の肉体を貫通してダメージを食らったことに驚くラーザイア。
しかし、すぐに持ち直し衝撃をいなす為に横に飛んだ。
「カカッ!いいね、そのチカラ。到底、人間には思えんぞ!さぁ、お楽しみはここからだろ?」
獣王も魔力を内に溜めて、そのチカラを解放した。
ゴウッと風が吹き舞い上がる。
「〈獣神解放〉!」
次の瞬間、会場が地震かと思うほど歓声で揺れる。
「おおおおっ!!!ラーザイア様がもう本気の姿に!!」
「あの人間、もう塵も残らんぞ!こりゃ、賭けに勝ったな!」
「なんと神々しい!あの人間に感謝するぜ!あのお姿を見れるとは!!」
もやは、俺の事などみな眼中に無く、その姿を見た事に感極まるものや、既に勝負が付いたと思っているものが殆どだった。
(なるほど、あれが獣王の本気か。流石だな…だが、カルマがチカラを解放した時と同じくらいか?感じるプレッシャーは同じくらいだな…)
俺が幸運だったのは、カルマが闇の精霊を宿し本来の姿を取り戻した時に、自分よりも格上の存在と対峙する事が出来た事だ。
そのおかげで、恐怖で足が竦むという事が無かった。
そうでなければ、今この時点で俺は負けていたんだろう。
そして、今俺は『覇王の神眼』により相手のステータスを視る事が可能だ。
名前:獣王ラーザイア ランク:SSS クラス:魔王
HP:398000/428000 MP:150000/150000 SP:12500/14500
STR:3200+2000 VIT:1800+1000 INT:1500 SPD:1500 MGC:800
耐性:火、風
弱点:水、氷
ははは、さすが魔王ってとこだろうか。
笑えないほど、ステータスが高い。
しかし、倒せない程絶望的ってわけじゃない。
俺も今かなり能力を底上げしているから、あれだけある耐久を貫通してダメージを与えているのだ。
ならば、ここからが本番だ。
〈
さらに〈
「「〈
ここで渾身の〈
「ふうんっ!!」
しかし、それをラーザイアは正面から受けようとする。
幻術による〈隠蔽〉を使って幻体の気配を消しているため、そっちは気が付いていないようだ!
これなら!
正面からの俺”本体”からの攻撃はそのままガードされる。
しかし、”幻体”からの攻撃が直撃した。
「があぁはっ!」
その体に穴を空けるつもりで放った〈
あの攻撃を受けて、その程度!?
というのが俺の正直な感想だった。
ステータス見て分かってたけど、やはり魔王というだけあって尋常じゃない硬さだ。
「いってぇ~っ!かっかっか、すげーなお前!うーし、滾ってきたぜぇ!!」
いや、これ以上元気にならないでいいんだけど!?
「一応、本気の一撃だったんだけどな。それでそれしかダメージ食らってないのかよ」
「俺にダメージを与えれるだけ、誇っていいぞ!人間からダメージ貰うなんて、何十年ぶりってくらいだから!!そらっ、くらえっっ!!」
拳に闘気を集めて極小まで圧縮すると、ブオオッ!とこっちにまで音が聞こえるほどの剛腕を振るう。
勢いに乗ったその闘気の弾は、高速でこちらに飛来してきた。
(あれは、受けたらヤバイ!)
本能的にそれを察知し、その場から〈
ドゴオオオオオオオオオオン!!!
さっきまで俺が居た場所に、巨大なクレーターが出来る。
土埃が巻き起こり、観客たちは俺が消し飛んじまったぞと勝手な事を言いながら歓声を上げている。
「「とっておきだ、〈
幻体を1体作り出し、回避不能の至近距離で特大攻撃を同時に放った。
ゴオオオオオオオオオオウッ!!と放たれたオーラがラーザイアを包み込んで、クロスする。
ラーザイアが装備してた防具(と言っても、ただの服にしか見えないが、どうやら普通の服じゃないみたいだ)が吹き飛んで散り散りになった。
しかし、肝心のラーザイアはというと。
「がはあっ!おー、お前マジで強いんだな。認めてやるよ、その強さは本物だ。…お前は、本物の『覇王』だと認めよう」
そう言うと、構えを解いてスタスタとこちらに近づいてくる。
今度は近距離で肉弾戦するのか?!とか、警戒していると。
「これ以上は、本当に命の取り合いになっちまうから、これで終わりだ。お前にチカラがある事をこの俺が認める!」
といって、肩をガッシリ組まれるのだった。
会場はおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!と大歓声と、うあああああああ!!という悲鳴(多分、賭けで大損したヤツだな)の二つが巻き起こるのだった。
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