第227話 魔将バルバロスとの闘い
「おや?私に歯向かうというのですか?ふふふ、愚かな人間ばかりだな。私は魔将バロバロス。これまで私に歯向かって生き残れた人間はいないぞ?さあ、苦しみと共に死ぬがいい!」
魔法の詠唱も無く、あたりに無数の魔法陣を呼び出すバルバロス。
自分で言うだけあり、かなりの実力者のようだ。
リンは、相手の攻撃が始まる前に既に動いていた。
煌めく剣閃が相手を捉える。
「ただの剣技で私に傷を付けれると思っているのか?」
見えない障壁に阻まれ、全て弾き返される。
さらに待機していた魔法が狙ったかのように発動した。
魔法で作られた黒い槍が無数に飛び出してくる。
「ぐうぅっ!」
なんとか回避をしてみせるも、数発が体を掠めた。
たったそれだけでHPの1/3が失われる。
「リン!?…グレーターヒール!」
すぐさまレーナが回復魔法でリンを治療する。
魔法でHPはすぐに回復するが、痛みや奪われた血が戻るわけではない。
失う血が多すぎれば、いくらHPが残っていても意識を失う。
つまり、何度も食らえばいつかは力尽きてしまう事になる。
「私が前に出るよ!リンちゃん、レーナちゃん攻撃をお願い!」
壁役(タンク)として、前に出るアーヤ。
盾スキルが高い彼女の防御は、魔法ですらも防ぐことが出来る。
「ふむ、その程度を貫けないとでも思っているのか?」
バルバロスは手を重ねて集中し、何かを呟きながら魔力を一点に集めていく。
先ほどまでは詠唱すらしなかったのに、今度は詠唱付きの魔法のようだ。
「嫌な予感がするよ。二人とも私の後ろに!〈ダブルガード〉!」
半透明の大きな二重の盾が、アーヤの目の前に作られる。
そこにバロバロスの魔法が撃ち込まれた。
「全てを貫け悪魔の鉾。デビルスピアー!」
魔法で作られた一本の黒い槍。
見た目に大きな威力を感じさせないが、それが逆に恐怖を醸し出す。
フィィィィィィィン!と高周波の音を発しながら飛んできた槍は、アーヤがスキルで作った盾を簡単に打ち砕く。
更に2本目、3本目と次々に発動させて、アーヤのガードを打ち破った。
「あああああああぅっ!」
スキルどころか、手に持っていた大きな盾すら破壊され、ついにはアーヤの右腕が魔法で貫かれてしまった。
「アーヤ!…直ぐに治すわ!グレーターヒー…」
「吹き飛べ、ダークネスバースト!」
「ぐぅあああああああっ!」
治療するために魔法を使おうとした瞬間に、バロバロスの魔法で吹き飛ばされるレーナ。
あっという間に二人ともHPが半分以下になっている。
「レーナ!アーヤ!…ドルガーさん、二人にポーションを!」
「嬢ちゃん、一人じゃ無理だ!」
「大丈夫、一人じゃないからっ!」
そういうと、リンはピーっと口笛を吹きながら壁を走っていく。
すると、ぬるりと影から何かが出てきた。
『呼ンダカ?』
それは、いざという為に護衛に付けられていたクロであった。
「クロ!アイツを倒すのを手伝って!」
『承知シタ』
壁を蹴って、クロに飛び乗るとリンはカタナを片手に集中力を高めた。
クロはリンを乗せたまま、口から黒いブレスを吐きだす。
「ち、そんなブレスで・・・なっ!?なんだこれは?」
その黒い炎は、単なる炎ではない。
そう、カルマが使っていた〈黒炎〉のブレスバージョンだ。
纏わりつく炎が徐々に相手の体力を奪う。
カルマからいくつかのスキルを伝承されることで、クロも使えるようになっていた。
それだけではない、クロも中級までとはいえまた無詠唱で魔法を撃てるようになっていた。
バロバロスを3つの魔法陣が取り囲み、そこからダークブラストが発動。
バロバロスは直撃を受けて、一瞬よろめくが。
「鬱陶しい犬め!しかし、この程度ならかすり傷よ」
「じゃ、これならどう?」
一瞬の隙を突いて、目の前に躍り出たリン。
射程圏内に飛び出ると、自身の"奥義"を発動した。
「”
下段に回転しつつ2連撃、そこから上に真一文字で一閃しつつジャンプして斜め回転しながらの上段、中段、下段の3連撃のアクロバティックな攻撃を一瞬で打ち込んだ。
「が、はっ。なんだと…!たかが人間の分際で、私に傷を付けるとは生意気な!」
一気に頭に血を上らせたバルバロスは、腰に差していた剣を抜いてリンに斬りかかった。
「ドルガーさん!」
「任せろっ!」
ギイイイィン!とバロバロスの剣を弾くと、その勢いを使ってリンが後ろに下がる。
そして入れ替わるようにレーナ達の治療を終えたドルガーが前に出て、その大きな戦槌でバロバロスを吹き飛ばす。
流石Sランクなだけはある。
流石のバロバロスも、体勢を崩した状態からでは防げず、避難所入口に張ってある結界に突っ込んだ。
「がががっがっがあああああああっ!!!?」
いくら生命力の高い魔族でも、その結界に触れれば大ダメージは免れない。
背中から黒い煙を上げつつも、なんとか起き上がるバロバロス。
「くそっくそっくそっ!下等生物が舐めた真似を!!」
完全に見下していたニンゲン達にいいようにされ、我を忘れ怒り狂うバロバロス。
そこに追い打ちをかけるように、復帰したレーナとアーヤが追撃を仕掛ける。
「「聖なる鎖よ、悪しき彼の者に罰を与えよ!〈
二重詠唱により、高度な神聖魔法を発現する二人。
輝く鎖に囚われて、バロバロスは身動きが取れなくなるばかりか、聖属性の継続ダメージをうけもがき苦しんだ。
「その状態じゃ、格上も何もねーだろう? 地獄で後悔しな!〈グランドインパクト〉!!!」
ドルガーが威力を一点集中した槌スキルをバロバロスに繰り出した。
「や、やめろおおおおお!!! グ、ガハアアアッッ!!」
ドガアアアアアアアアアアン!!と、まるで岩を破壊したかのような音が鳴り響いた。
ドルガーの必殺の一撃でバロバロスは跡形もなく吹き飛び、灰となって消えるのだった。
「はぁはぁ、この歳で本気の戦闘は堪えるぜ…」
ドルガーのその言葉を合図に、兵士やギルド冒険者たちからおおおおっ!と歓声があがった。
「さすがギルドマスターね!」
「うんうん、封じ込めてたとはいえ一撃で倒しちゃうだなんて!」
レーナとアーヤもひとしきりはしゃいだあと、まだ任務中だった事を思い出しばつが悪そうな顔をした。
「はっはっは、嬢ちゃんたちもやるじゃないか。流石は、聖騎士だな。見事な神聖魔法だった」
「ありがとうございます、ドルガーさん!」
褒められて照れながらも、嬉しそうなレーナ。
アーヤもまんざらでもなさそうだ。
リンは一人、さっきまでそこにいた魔族に一人手を合わせるのだった。
ユートは言っていた。
魔族全員が敵なわけじゃない、彼等も生きているのだと。
街に攻めてきて、人々を害する彼らを許せるわけではない。
だがユートを見ていると、命を奪うという事に慣れないようにしないといけないと思うリンであった。
「さあ、街の人々の避難を手伝いましょう。後方の魔物も退治出来たようですし、早く戻らないと」
「そうだな。またすぐに違うのが流れ込んでくるかもしれん。さっさと大教会へ連れて行くとしよう」
リンの言葉にうむと頷きながら、ドルガーも賛成のようだ。
ギルド職員に手配せをして、結界の解除を行わせる。
数分後、1つ目の結界が解除された。
入口の門を開けつつ、入口を護衛するために数人の冒険者達は残った。
ドルガー達はリン達を引き連れて、避難所の居住区へと進むのだった。
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