第199話 加護とスキル
「ニクス、炎の神殿はここからどのくらいでたどり着く?」
お披露目が終わったので、既に人化したニクスは気怠そうにしながら答えた。
「ここらだと…飛べば2時間程じゃろうな。だが、そう焦らなくても良いじゃろう?」
「まあ、そうなんだが。近いなら寄ってもいいかなと思ってな」
「お前、そんなコンビニでも行くかのように言うなよ…」
ガントがツッコミを入れるがスルーしておく。
ちなにみマイニャやサナティは『コンビニ?』と頭にはてなを浮かべていた。
「丁度昼過ぎだし、ちょっと遅いが昼飯にでもしておくか。メイア、準備してくれ」
「畏まりました、旦那様」
そういうと、メイアはサクサクとお昼の準備をしていく。
予め用意していた食材と、ここで取れた火の鳥の肉を渡して料理も任せた。
さすがにルガー程の腕前はないが、俺よりは上手なようで見る見るうちに様々な料理が出来ていく。
毎度思うのが、このメイアを筆頭にうちのメイド達の作業スピードは目を疑いたくなる速さだ。
的確に神速で進められる作業は、ランクが上の俺達ですら目で追うのがやっとである。
「うわ~、あのメイドさん凄い速さでご飯作っているわね。おじ様…あの人は本当に人間なの?」
「ん、レーナ。メイアはな、元々人間だけど、進化して
「…情報がありすぎてコメントに困るけど、凄いのはわかったわ」
『あんなに一番労働しているのにお姫さまってなんだかね』と呟いていたレーナはぼーっと見ているだけの自分に気が付き、『私も手伝います!』と言いながら走っていった。
ああやって率先して動けるのは、あの子のいい所だな。
レーナが手伝いにいくと同時に、アーヤもリンも手伝いを申し出た。
その点、何もしようとしない男子たちは…と思ったがレーナに指示されて働いているな。
あの歳でリーダー気質が備わっているとか、本当に優秀な子だ。
その頃、カイト達はというと討伐した火の鳥達の処理をしていた。
さすがに数が多すぎて道中で解体する余裕がなかったらしい。
シュウやダイキも手ほどきを受けながら、一緒に手伝っている。
血抜きをして、羽根を毟り肉を分けていく。
肉だけにしたものは、ミラやサナティが魔法で氷漬けにしていく。
この世界でも氷漬けにすると保存が効くのは常識らしく、長期保存する際はやはり凍らせてかららしい。
冷凍された鶏肉はゲンブの保存ボックスに収納して、あとで肉屋に卸す予定だ。
ギルドに売ってもいいが、皮等の素材と違って捨て値にしかならない。
もちろん食べるだけでステータスアップ効果があるような、価値が高い肉は別だがね。
火の鳥の肉は単なる鶏肉となってしまうので、肉屋に卸すのが一番高値で売れるのだ。
「肉だけでゲンブの容量半分いきましたよ。さすがに狩りすぎでしたね」
「全員合わせて400匹くらいいったか?」
「ええ、そのくらいですね。これだけ羽があれば全員分の羽マント作れますよ。耐火性もいいし、この地方では需要の高い装備品です」
「へ~、それはいいな。それなら俺らが使うよりも売りに出した方がいいんじゃないか?」
「あー、その考えは無かったですね。ガントさんが作れば高品質ですし、消耗品であるマントはかなり高値になりますよ」
「お~、マジでか。しかし、羽根マントなんてレシピあるのか?…お、あるんかよ!うん、作れるわ。ほぼ100%で高品質いけるぞ」
得意気にそういうガント。
まあ、確かに装備品のレシピなんてかなりの数があるから、全部を把握しろとは言わないが…。
出来れば、もう少し把握しておいてほしい所だな。
「ガント、もう少しレシピを把握しておけよ?それ次第でお前の給金変えるからな」
「ええ!?いきなり酷くないか!?今まで自由にやってきたのに…」
「ん?いや、減らすって話じゃないからな。把握して商売につなげれればもっと増やしてやるってことだよ」
「マジ!?やったぜ。さすがユートだ!話が分かるじゃないか。すぐに把握しておくよ。ようは行く地域の特徴に合わせたレシピが知りたいんだろ?」
お金が貰えると思うと頭が冴える辺りがガントらしいが、やる気になってくれて良かった。
よくすぐに減給だっ!なんていう上司がいるが、あれはダメだ。
生産性向上させるには、鞭よりも飴だ。
それを分からない何人もの経営者が、経営破綻していくのを今まで沢山見てきたので良く分かる。
やる気がある生産者や労働者がいない会社なんて、上手くいくはずがないのだ。
なのでうまくノせて、やる気にさせるのが一番の近道だと俺は思っている。
俺とガントも解体を手伝いつつ、あらかた終わった頃には昼飯の準備が完了していた。
火口付近で食べるわりには比較的涼しいのは、カイト達と一緒に来たセリオンとシュウを乗せてきたシロお陰だ。
氷のブレスで辺りを冷やして、その気化熱を利用して涼しさを作り出している。
岩の一部を綺麗に切り取って(包丁で岩をバターのように斬っていた)出来上がったテーブルにいろいろな食事が置いてあった。
焼いたパンに、温野菜サラダに、スープ、持ってきてたベーコンと一緒に今回討伐した火の鳥のソテーなどが置いてあった。
もし他の冒険が来てこの光景をみたら度肝を抜かすだろう。
なんせ危険な火の鳥の生息地のど真ん中で、呑気に座って食事を取ろうというのだから。
幸いなことに、こんな危険な場所に来れる冒険者は少ないので、遭遇することにはならなかったが。
一緒にニクスが食べているのを見て、一瞬ぎょっとしたが試しに『火の鳥は食べれるのか?』と聞いたことろ、『あれは妾の食料じゃよ?食べるに決まっておる』と言っていた。
「主様、フェニックスは悪食なので、なんでも食べるのですよ?」
「そう言えばそうだったな。体内ですべて灰にしてしまうので魔力を含むものなら何でも食べてしまうらしいですよ、主よ」
とニケとカルマも、当然かのように人化して食事の席についていた。
竜姫の双子も大人しいと思ったらもぐもぐと昼飯を食べていた。
他のペット達も焼いた火の鳥の肉を食べたり、持ってきている餌を食べたりしている。
リャマたちにも干し草と水分を与えておく。
それぞれが満腹になった頃…
「カルマ、ニケ」
「何でしょう主」
「はい、主様」
「二人からは加護を受けた筈なのに、スキルの覚醒が無かった気がするんだけど?」
そういや、最初に加護を与えてくれたのは二人のはずだ。
なのに何も覚醒していない気がする…
「主様…。やはり、気が付かれてしまいましたか…」
「ニケ。流石にこれ以上は隠せまい。ならば、我が話そう」
そう言うと、カルマはその理由を説明を始めた。
「スキルを獲得しなかった理由ですが。まずは、我らが加護を授けた時に主はまだ『覇王』を覚醒していなかったのがひとつ。もうひとつは、守護者の神殿で儀式を行う必要がある為です」
「お前達の神殿は何処にあるんだ?」
「我の場合は、【闇の神殿】ですから中央大陸【ウルステア】にあります。そして、ニケの場合はあの【嵐の神殿】にもう一度行く必要がありますね」
「じゃあもしかして、北大陸の【氷の大精霊】からも加護を受けられるのか?」
「加護は受けれる筈です。ただ、彼女とは面識が無かったので、主に授けれるスキルがあるかは、行ってみないと分からないですね。…もう一つ伝えないといけないことがあります」
「え、何だ改まって」
「それは『覇王』の真の覚醒条件についてです」
そして俺は、カルマから『覇王』の本当の力の解放条件について聞くのだった。
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