第192話 温泉宿③

 前回までのあらすじ。


 高級宿の温泉に入ったら、混浴だった。

 でも温泉自体は広いので、一応男女で別れて入った。

 男子達には、覗きにいくんじゃないぞーと言ったら、逆に女子の方からコッチにやてきた。

 

 ───

「むっ、なんだ。もっと騒ぎなってるかと思ったが、存外みな肝が座っているようだな」


 なんだろう、ここまで堂々とされると清々しさを感じるな。

 セツナに至っては、湯着こそちゃんと着けているものの隠す風もなく同等と胸を張っていた。

 そのせいで、形の良い胸が強調されてしまっているのだが、それよりも特筆するべきは、布の上からでも分かる腹筋だ。


 うおーすげー、バッキバキだな。

 流石SSランク騎士。

 ちゃんと肉体自体も鍛えているようだ。

 ここまでなると、美しさを感じるよ。


 どちらにしろ、邪な気持ちを抱いてこの子に手を出すのは命知らずか、余程の猛者かどちらかしかいない事だろう。


「あっ、皆さんここに居たんですね!急に居なくなるから何処に行ったのかと…きゃあっ、旦那様っ?!…あっ、そういえばここは混浴露天風呂だと言ってましたね…間違えて男性側に入ったのかと思いましたよ…あはは、良かったぁ」


 マイニャさん?驚くところそこでいいんですか!?

 たまに天然っぽいなとは思っていたが、本物だったか?


 そんなマイニャは普段から外仕事なので、こげ茶くらいに日焼けした肌が湯着から覗かせている。

 まだまだ成長期真っ盛りな彼女の女性らしい膨らみは、湯着からはみ出しそうなくらい立派で、なかなかに危険な状態だ。


 その状態で無防備にされると、こっちが心配になるんですが。

 あ、そもそもこの世界の一般人には風呂の習慣が無いんだよなぁ…

 LBO出身者は謎だが、こっち側の人はそこまで抵抗感が無いのかもしれないな。


「待ってくださいよー、みんな~おいていかないで〜」


 マイニャを追いかけて来たミラは、こちらを見て固まった。


「き、き、き、き…」


「き?」


「きゃああああああっ!」


 と叫んだと同時に前を隠すミラ。

 なんなく収まったソレを見てセツナが一言。


「ふむ、ミラ殿は栄養が足りないようだな。もっと食べないとな」


 と悪気もなく言うもんだから、ミラはそのまま轟沈するのだった。

 漫画なら『チーン』と効果音が描いてそうな感じだ。


 それを見たリンが、『うー、私はまだまだ成長期だもん!』と自分の胸とマイニャのを見比べつつ呟いていたのは、聞かなかったことにしておいた。

 小声でミラは『リンちゃん、私はもう成人しているの…』と自分の成長期は終わっていると魂が抜けたように呟いていた。


 うん、俺は聞かなかった。

 そういう事してしておこう。


 ───


 そんな喧噪とは少し離れた場所で、ディアナとへカティア達は二人で優雅に温泉に浸かっていた。


「みんなこんなに広いのに何故集まるのかな?ね、ディアナ」


「そうね、きっとマスターと一緒に居たいんでしょう?でも、私達は折角の初温泉ですし、心ゆくまで堪能するとしましょう、ヘカティア」


 騒いでいる仲間達を余所に、途中から一緒に入った他のペット達と泳いだり、潜ったりして夕食の時間まで十二分に堪能していたのだった。



 ───


 みんな慣れるのが早いもので、少し時間が経つとすぐに落ち着いた。

 その後は、普通に湯の感触と雑談を楽しんでいた。


 特に、俺が北の大陸に行ったときの事や今日のダンジョン内の出来事になると全員が真剣に聞いていて、最後には拍手まで沸き起こりちょっと照れくさかった。


 ここ最近も俺はあちこちに行ったり来たりしてたので、こうやってゆっくり話をする時間が無かったので、ちょうど良い機会となったみたいで良かった。


 温泉入りながらの美女たちに囲まれてお話するボーナスタイムはあっという間に過ぎ去り、夕食の時間が近づいたのでみんな温泉から出る事にした。


 その日の夕食は、とてつもなく豪勢だった。


 海鮮を中心とした料理になっていて、どれも新鮮で美味しかった。

 流石に刺し身は無かったが、カルパッチョみたいな生魚を使った料理はあった。


「!これ、おいしーわっ!これも!これもっっ!!」


 セツナに至っては、この世界に来てから初めての贅沢だったみたいでいくらでも食べていいぞと言うと、目をキラキラさせて色んなものを満面の笑みで堪能していた。


 若干キャラ崩壊しているが大丈夫か?


 俺とガントは【カルデリア】特産の"火酒"を堪能していた。

 その名の通り、火がつくほどアルコール度数が高い。


 少し口に含むとカァーッとするが、そのあと爽やかな風味がする特徴的な酒だ。


 帰るときにお土産で買っておこう。


 そして、一番驚いたのは…。


「ご飯おいしいーね!」


 リンもホクホク顔のその正体は、米だ。

 聞いてみると、大陸の東側の比較的涼しい地方では稲作が盛んな場所があるらしい。


 色がやや赤く、炊くとピンク色になるみたいで変わった米だなぁ。

 噛み締めると独特の甘みがあり、これはこれで美味しい。


 『この米を仕入れをしているのはこの宿くらいですから、お客様は運がいいですね!』と配膳していた従業員に言われた。


 買い付けれないか聞いてみるも、流石に売るほどは無いと言うことで諦めるも、仕入れ先の村の名前だけは教えてくれた。


 様々な魚料理を堪能しつつも、途中でラヴァクロコダイルのステーキが山盛り出た時は噴きそうになった(なぜか頭が中心に飾ってあった)が美味しかったので良しとした。


 腹がはちきれそうなほど食事を堪能したあとは、酒が飲める大人はラウンジへ移り、お子様たちは部屋に戻ってお話タイムとなったようだった。


 せっかくなので寝るまでロイヤルの方使うといいと、リンに言っておいた。


 その日、俺らは酔い潰れるまで飲み明かし、気が付いたら夜明け前になっていた。


 見た目に反してサナティがお酒強かったとか、ガントが先に潰されたとか、セツナとカイトが泣き上戸だったとか、ミラがまさかのザルだっとか、色んな事があったが詳しく語れる日は……たぶん来ないだろう。


 うん、ちょっと皆とはっちゃけ過ぎた様だ。


 最後に温泉に入りお酒を抜いてから、俺も床に就くため部屋に戻った。


 部屋に戻ると余程楽しんだのか、リンとレーナとアーヤの三人がソファの上ですやすや寝息を立てていたのでそれぞれお姫様抱っこして移動し、リンのベッドルームに三人仲良く寝かせておいた。


 子供の寝顔というのは、見ているだけでほっこりするよな。

 それだけで心が濯がれた気がした。


 男子達は既に帰ったようだな。

 シュウも既にベッドで寝ていたので大丈夫だろう。


 今日はそれぞれ思い思いの時間を堪能し、いい療養となったと思う。


 とても良い1日になったし、みんなを連れてきて本当に良かったと思う俺だった。

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