第171話 お風呂タイム!

「さて、そろそろ寝る時間だな。セツナ、今日の宿はどうなっている?」


「私達は、それぞれ個室で宿を取っています」


「へぇ…、ちなみに全員でいくらだ?」


「ちゃんと節約していますよ!全員で1日銀貨2枚です!」


 おおいっ!金貨50枚渡したのに1日銀貨2枚だと?

 飯もそんなにいいの食ってる感じがしないし、何に使ってるんだ?いや、使っていないのか??


「それで残金いくら?」


「金貨48枚と銀貨1枚ですね」


「お前…さては貧乏性だな?」


「えええっ!?でも、グラムと一緒の時から比べればこれでも良い方ですよ?!」


 ダメだ、グラムとの過酷な生活に慣れてしまい(グラムは多分豪遊していたはずだが)お金の感覚が渋すぎる。

 特に、女子なのに清潔感が感じられない状態はあまりよろしくないな。


「よし、今日は俺らも泊るから、一緒の部屋にしよう。付いてこい」


「ええっ!?いくら世話になるからってユート殿と一緒なのは、女子として色々と心の準備が…!」


「何を言ってるか分からんが、お前にはお金の正しい使い方を教えてやる!レーナ達も一緒に来い。ライ、また明日打ち合わせしたい事があるから、朝になったらギルドに来てくれ」


「えっと、良く分からないけど行けばいいのよね。じゃ、ライ様ごきげんよう~!」


 いきなりの展開についていけず、ぽかーんとしていたがいつもの事かと切り替えて、ライも分かりましたと全員を見送るのだった。


「やあ、店主お久しぶり」


「これはこれはユート様。お屋敷を買われて以来ですね。今日は、お泊りになるので?」


「ああ、あのタイプ2つ空いているか?」


「ああ!はい。丁度、ある貴族様が引き払ってしまったので、借りる方をお待ちしていたところですよ」


 タイミングが良かったようだ。

 俺とリンはすぐに帰るが、セツナ達はもう少しここにいて貰う事になる。

 

「じゃあ、朝飯付きで2部屋で1週間日2枚でいいか?」


「ええ、もちろんです。では案内させますので」


 ここの宿屋はこの町で一番いい宿なんだが、注目すべき点はそこじゃない。

 そう、王国の宿屋にも無かった風呂がある事が一番の売りなのだ!

 と俺は思うんだ。


 屋敷の風呂とは比べるべくもないが、あると言うだけでかなりの価値があると俺は感じる。

 それにこの世界に来てからもしかしたら、まともに風呂に入っていないかと思うと、女の子3人が不憫に思えてならなかった。


「俺と男子3人は俺と一緒な。あと、女子四人とニケはそっちな」


「ここ、最上階の部屋ですね」


「うおー、すっごいいい部屋!あれ、でもベッドなくない?」


「そこはリビングだ。奥にそれぞれ使える寝室があるから適当に割り振って使っていいぞ」


「わぁ…ハワイのスイートルームを思い出しますわ」


 各々感想を口にし、分かれて中に入っていった。

 俺は一応両方の部屋の鍵を渡された。


「ユート殿!こんな部屋…一体いくらしたんですか!?」


「二部屋で1週間金貨2枚だね。しかも朝飯付きだぞ?安いもんだよ。あと、ここの部屋だけ風呂あるからちゃんと使えよ~。あ、これセッケンね。予備の持ってきてたから渡しておくわ」


「!!?」


 セツナは驚きのあまり言葉を失っていたが、あとはリンがなんとかしてくれるだろう。

 リンは一緒に寝れないの?と言ってたが、今日は友達と一緒の部屋に寝なさいと言ったら素直に頷いていた。


 最近、家を空けていたせいですっかり甘えん坊になっているなぁ。

 まぁ、悪い気はしないんだけども。

 自分の娘も、そんな風に甘えるのは小学校低学年で終わってしまったからな。


 ちなみにニケも涙目で一緒の部屋にと駄々をこねたが、お前のボディは少年の目に毒だと言って却下した。


「ショウタ、ユウマ、ダイキ。お前たちもちゃんと風呂は入れよ。そんなんじゃ女子にモテないぞ?」


「やったー、久々に洗えるぅ!」


「うあ~、モテないのは困るね」


「わぁ、お風呂とか数か月ぶりだねぇ」


 3人も概ね喜んでいるようだが、まずはその汚れた体を綺麗にしてからなと部屋に押し込んでおいた。


「明日の朝食はこっち側に運ばせるから、朝起きたらこっちに来てくれな。じゃあ、おやすみ~!」


 そう言って、女子たちとそこで別れた。

 きっとあっちでは、久々に会った友達同士で話が盛り上がる事だろう。


 男子たちを風呂に入れて、石鹸とタオルを使って背中を綺麗に洗ってあげたりした。

 もし息子が生まれてたらこんな感じだったのだろうか。


 はしゃぎながら入ってた男子たちも、風呂からあがるとすぐに眠りについた。


──女子部屋では


「ああ、お風呂に入れるだなんて幸せだわ」


「レーナちゃん、ふたりで湖見つけたときに沐浴して以来だね。体を洗い流せるの」


「え、二人でそんな事してたの?」


「うんうん、もう体拭くだけの生活とか耐えれなくて。でも、なんか良く分からないイキモノが泳いでてすぐに出たのよ」


 リンとレーナとアーヤは、先に風呂に入らせてもらっていた。

 セツナはニケとその後に入る事になった。


「石鹸まであるのね。これどこで買ったの?王都では見かけなかったわ。なんかハンドソープみたいな濁った液状のは売ってたけど」


「固形の石鹸は、まだあんまり流通してないって言ってたよね~」


「えーと、これはサニアの錬金術師さんが作ってるのを買ったみたいだよ?ガントさんが見つけて全部買い占めたって言ってた」


「そうなの?でも、こんな物でもありがたみを感じる様になるだなんて、ちょっと前まででは、考えれなかったわね…」


「うふふ、そうだね!でも、それはそれでいい経験だと思ってる」


 3人はその後も他愛の無い事を話つつも長風呂する事無く、スムーズに入浴を終わらせた。

 早く終わらせるために、お互いの体を洗いあったりしていた。

 もちろん、あとに二人が待っているからであるが。


「わー、リンの肌すべすべ!ずるいわよ!私なんて、最近カサカサしてきて泣きそうだったのに…」


「でもレーナちゃん、一回洗っただけで髪の毛艶々だよ?いいなあ、私まだごわごわする」


「じゃあ、お風呂あがったらとっておきの使ってあげるね?」


「え、本当?何かしらね…楽しみだわ!」


「うんうん!」


 3人があがると、ニケが綺麗なタオルで拭いてあげる。

 ついでにドライヤー代わりに風魔法で水気を飛ばしてくれた。

 3人に流石ですね!と褒めちぎられたニケはとっても上機嫌になってたという。


 その後にセツナとニケ(本当は入らなくても汚れないから必要ないらしい)が入浴した。


 風呂から上がったセツナは、汚れと一緒に若干の険が抜けたみたいで、3人から『セツナさん、綺麗になったというか可愛くなった?!』と誉め言葉を頂戴して、しきりに照れていたらしい。


 後でそれを聞いて、その顔を見れなかったのはとても残念であった。 


「ユート殿はずるいわ!こんな、こんな生活を既にしていただなんて!でも、久々に自分の髪が生き返ったから…、許します!」


 というつぶやきは聞けたけど。

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