第137話 カルマの提案

「主よ、ひとつ提案があるのだが」


 カルマは"幻龍"が、いくら幻術イリュージョンのスペシャリストとは言え、ユートの攻撃が全く当たらないのが気になっていた。


 しかも錬気術オーラを駆使してガードをしているのに、そこに全く掛からない事がより謎を深めていた。


 相手の攻撃はパンチばかりだったが、カルマの観察眼を以てしても攻撃してくる時に


 だとするならば、あれこそが幻なのではないかと考えた。

 そうなると、相手は最初から近づいて来ていない事になる。


 だから、カウンターを狙う事は自殺行為に近いという結論に至った。


 じゃあ、どうやって見つけるのか。

 そこはユートが精霊術スピリチュアルを習得していることが鍵になると考えた。


「いいですか、主よ。『幻術イリュージョン』というのは、”幻”属性精霊の魔法なのです。”幻”精霊というのは、”闇”精霊から派生した精霊で、当然上位にある”闇”精霊ならば見つける事が出来る。故に、開始前に我が闇の加護を与えますので、その状態で闇精霊を使えば見つけれる筈なのです」


 カルマが言うには、闇精霊であれば隠れているイドラを検知する事が可能だと言う。

 ただし、熟練度がまだ低いユートでは扱いきれないので、加護を与えないといけないという事だった。


「なるほど、そんな事が可能なのか。もっと他のスキルも鍛えていかないとだな」


「ええ、主はまだまだ強くれるだでしょう。そんな主に、最適な特訓方法があるぞ?」


「う…相変わらずスパルタだな。いいや、有り難いと言うべきか。スペシャリストに教えてもらえる機会なんて、そうそう有るもんじゃ無いからな」


 向こうの世界にいた時も、その道のプロから教えて貰える好機なんてそうそう無かった。

 あったとしても、とてもお金が掛かることが殆どだ。


 この世界だって、生きるためのスキルという意味では、本来なら大枚を叩かないと習得出来無いのは一緒だろう。


「わかった、早速始めようか。先ずは何をする?」


「では…、先ずは魔法スキルの強化です。私が実際にやって見せるので、その後で真似してみていただきたい」


 そう言うとカルマは闘気による壁を作り、結界を生成した。


 それから、中で精霊魔法を撃つ。


 反射した魔法を今度は呪霊魔法で撃ち落とすと、更に通常魔法を発動し今度は精霊魔法で打ち消した。


 それを延々と繰り返し、どんどん速度を上げていった。


 次第に中で何をやっているか分からないほど魔法が中で飛び交い、そしてついに結界が破られた。


「さぁ、主よ。このように結界が破れるまで中で魔法を撃ち続け、その魔法が自分に当たらない様に打ち消し続けるのです」


 えーと、要は練気術オーラでバリア張った後に中で魔法撃ちまくれと。

 例えるなら、中で銃弾を撃って跳ね返った弾を違う銃弾で撃ち落とすような感じだ。


 うおおい!なんつー、荒修行させんだ!


 …でも、これくらいやらないと幻龍には勝てないと言うことなんだろうな。


 もちろん、やってやるさ!

 

「〈錬気術オーラ〉発動、〈錬気結界陣〉!、〈連続魔法〉発動! ファイヤーボール!…マジックバレット!…ライトボール!」


 結界内を飛び交う魔法。

 それを別の魔法で撃ち落とす。


 跳ね返った事により速度が増した魔法を撃ち落とす事になるため、より難易度が跳ね上がる。

 

 数発が逸れて、自分の体を削った。


「ぐはっ!ってぇー。おおっと、やばっいっとな」


 一発外すと、すぐ次のが戻ってきて更にダメージを食らう。

 これは、結界を壊すまで自分の体がもつのか、そっちの方が心配になるわ。



 ───修行を開始して一時間が経過。


 あれからずっとやっているが、バリアを撃ち破ったのはたったの2回だ。

 

 途中、MP回復ポーションとか飲んで回復しているがそれでも枯渇するほど魔法を打ち続けている。


「マジックアロー!アイシクルエッジ!ライトアロー!」


 ひたすら、結界の中で魔法を撃ち続ける。

 段々速度に慣れてきたので、途中から中位魔法に切り替えた。


「フレイムウィップ!アクアスラッシュ!シャドウジャベリン!」


 当たれば痛いじゃ済まない威力。


 自分の魔法で死ぬとか勘弁したいので、ひたすら意識を集中していく。


 すると、段々と音が遠のいていく。

 そして、辺りがゆったりと動いているような感覚になってきた。


 まさか走馬灯!?

 と思ったが、逆に的確に相殺出来るようになっていく。

 更に、なぜかわからないがココに来るっ!というのが分かる。


 なんだ?!何か凄いスキルでも開眼しちゃったかなっ?!

 と気が緩んだと同時に…


 ドカガガガガッ!ドン!ドカーンッ!


 盛大な爆音と共に自爆するのであった。


「ごふっ…もう…無理…」


 そのまま俺は意識を手放したのだった。 

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