第103話 ランクアップ祝い
昨日の祝勝会に続いて今夜はリンとシュウのランクアップ祝いだ。
連日の宴となってしまったが、お祝い事はみんなでやった方が盛り上がるし楽しいからいいと思う。
みんなにおめでとうと言われて、二人は照れながらも満面の笑みで喜んでいたし、やって良かったと思う。
これで二人は、超一流冒険者として名を連ねる事になる。
若干12歳でAランク到達は、この世界では類を見ない早さということだった。
ギルドには更に注目されていくだろう。
しかも、リンは”ドラゴンライダー”としても成長していた。
相棒のピューイとの連携しつつ、『
狙い通り相性は抜群みたいで、往年のコンビかのように呼吸がぴったりだ。
シュウも、ここ最近の剣技には磨きが掛かっている。
コンビネーションと〈必殺〉の組み合わせ技がうまく繋がっているようで、かなりダメージを与えれるようになっていた。
ちなみにギルドの年上のお姉さま方には、少年剣士と言われてて、なかなかウケはいいようだ。
今回の遠征でユニオン【ウィンクルム】の成果は大きかった。
クエストクリアだけでは無く、ボスの討伐まで成功したのだ。
報酬は150金貨と、ユニオンのランクアップだった。
明日には、その事も町に知れ渡り知名度はますます上がるだろう。
個人で有名になるのは憚るけど、ユニオンという組織が有名になるのは全員の利益に繋がるのでガンガン評価を上げていきたい。
カイト達が全員無事にランクアップクエスト受けれれば、次はSランク冒険者が一気に5人も増える。
そうなれば、またユニオンの注目は上がるだろう。
これに合わせて何か商売とか出来れば、もっと稼ぎが楽になるんだろうけどなぁ。
そこら辺は、もうちょっと考えないとだな。
今度ガントとライに相談しよう。
取り敢えず、今夜は思いっきり労ってやろう。
ずっと訓練してたのを俺は知っていた。
ゲームの時と違って、本来は無茶なスキル上げなどは、死を感じた二人なら本能的に忌避する気持ちが出てもおかしくはない。
ましてや12歳という年端のいかない普通の少年少女が耐えれるような内容ではなかったはずだ。
それなのに訓練を兼ねて常に冒険に出ている二人は、かなり強い心を持っていると言える。
そこらの大人の冒険者ですら、一度死に掛けるとなかなか足が向かないとギルド職員も言っていたし、素直に褒めてあげたいと思う。
ただそういう意味では、カイト達も一度死に掛けた割に今回も死にもの狂いで戦っていた。
決して、俺達が一緒にいるからというだけでは、あんな危険な戦いに参加は出来ない。
これからの活躍はかなり期待できるだろう。
俺個人としても楽しみだ。
その日もみんなで楽しく食事や飲み物を堪能しながら夜遅くまで宴は続いた。
───翌朝。
相変わらず朝が早いガントと食堂で会ったので少し会話をしていた。
「おうユートおはよう。いい所に来たぜ」
「おう、おはよう。どうした?何かあったか?」
出会ってすぐに話があると言うので、メイアに朝食を頼んですぐ用意してもらい、食べながら話そうということになった。
「で、なんだい話って」
「ああ、昨日な。マリエル師匠のところに行って話をしてた中でよ、そろそろ鍛冶がカンストするって話をしたら教えてくれたんだよ」
「ん?何をだ?」
「Sランクへのランクアップクエストは、王都じゃないと発行出来ないって」
「はぁっ!?なんだって!? そりゃあ、…面倒くさいな」
「だろう?LBOの時は、どこで受けれたと思ったんだが、【アストラ】ではそうはいかないらしいな」
別にクエストを受けるは何処でもいいのだが、面識がないギルドへ赴かないと行けないというのは、結構というかかなり面倒くさい。
あっちでは顔パスという訳にはいかないだろうしな。
ただでさSランク冒険者が少ないこっちの世界で、一気に5人も受けるという事になれば注目が集まるだけじゃなく、達成後に王都から何か要請が来るかもしれない。
ギルマスが言ってたな。
王都に目を付けれらるというのは厄介だと。
「どっちにしろ、王都へは一度行かないといけないか」
「だろうなぁ。クエスト自体は手伝うんだろう?」
「んー、実は…」
そこで、ガントには今後の事について説明した。
今回の遠征で、かなり戦力が増強された。
なので、カイト達のクエストについてはアドバイスだけして、本人たちに任せようと思っている事。
サポートには、カルマを付けるという事。
俺は、双子とニケを連れて大陸の北へ向かわないと行けないと言う事を伝えた。
「なんで北なんだ?」
「あそこには、風と雷を司る嵐の神殿があるだろう?そこに向かおうと思う」
「ああ、あそこか。確かにこの大陸の最北端にあるな。…ちなみに俺らが一緒に行けない理由はなんだ?あそこのランクは高くないだろう?」
嵐の神殿は、王都の真北にある神殿で中には守護する精霊達しかいない。
精霊達は、こちらから攻撃しない限り攻撃してこない筈だ。
襲ってくるのは、中に棲みついた魔物達くらいで、その魔物達もランクはせいぜいBランクくらい。
なので、俺らにとっては、たいして脅威ではない。
「それはさ、ニケ以外に行く意味がないからさ。あそこで、ニケをランクアップさせる儀式が出来るらしい」
「うへっ、ニケもまだ強くなるっていうのかよ?!」
「ああ、そうらしい。カルマがそう言っていた。カルマに真の姿があったようにニケにも別の姿があるらしい」
カルマには、風呂に入っているときに教えてもらった。
例の暴れてる時に言い放った言葉が気になっていたのだ。
『力を取り戻すがいいぞ』という言葉がどういう意味なのか聞いたのだった。
「今でも過剰戦力なのに…いや、魔王幹部とかからしたら雑魚なんだろうけど…」
「そこなんだよな…。この先は狙われないなんて言えないしな。別に敵対するつもりも無かったんだけど、こうも遭遇するとなぁ」
「それは言えてるな。てか、なんで俺らばっかり狙われるんだ!?」
「カルマが一因だけど、それだけとは思えないよなぁ」
「だなー、そもそもなんでこの世界に飛ばされたのか分からないしな」
こっちに来て、2か月くらいだが、未だにそこは謎のままだ。
誰が俺らを呼び寄せたのか。
単なる偶然と思えるほど楽観的ではない。
朝食を食べ終わってから、兎に角気をつけろよ?といい残して、ガントは今日はマリエルが工房へ来るんだと言って自分の工房へ向かって行った。
「…誰に狙われようとも、皆を守る力を付けないとな…」
俺は誰に言うでもなく、ひとり呟いていた。
暫くして、皆が朝食を摂りに起きてきたので、全員食べ終わったら今日の予定を伝えると言ってリビングに向かった。
一人リビングでメイドのアイが入れてくれたコーヒーを飲んでいると、ゼフが話しかけてきた。
「旦那様、少しよろしいですか?」
ゼフが俺の耳に入れておきたい情報があるということだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます