第101話 祝勝の宴

 風呂上がりの支度をするのもメイド達の仕事だ。


 ディアナの金の髪とヘカティアの銀の髪を梳きながら、ドーラはキャンプ前の荒野で暴れていたあの恐ろしいドラゴンがこの二人とは、未だに信じられなかった。


 しかし帰ってくるときに変身したときの姿を思い出して、あの美しいドラゴンであればイメージと合うかと考え直していた。


 最初に紹介された時よりも大人っぽく清楚になった二人を見て、一度死んで成長することが出来なくなった自分と比べて少し羨ましいと思ったが、そんな事を考えてはいけないと、心の中にそっとしまっておく。


 過去の人生を恨んでも何も生み出さない。

 旦那様に与えてくれた新しい人生に感謝し、その気持ちを仕事で表していこうと気持ちを切り替えていくドーラであった。


 

 全員お風呂から上がり身支度を整えた後に食堂に集まり、祝勝会兼夕食会となった。


 今回は料理だけではなく、それなりの酒も用意してあるので、俺としてはそれも楽しみだ。


 さすがに夕食は他の人の迷惑になる可能性があるというとで、カルマは席を外してくれた。

 後でお裾分け出来るようにメイアに頼んであるので、ニケも少しは機嫌を取り戻してくれるだろう。


 まだ着替えをしているということで女性陣を待っていたのだが、食堂に戻ってきた彼女達を見て男達からおおー!と感嘆の声が上がる。


 メイアが気を利かせて用意してくれたようで、室内着として全員に薄手のワンピースを用意していたようだ。


 ワンピースとはいえ、ちゃんとサイズが合っているのが凄いと思った。

 なんでも、町の腕のいいおばちゃん職人と仲良くなったとかで、凄いスピードで仕上げてくれるのだそうだ。


 いつのまにか町の住人とも仲良くやっているようで安心だな。


 そんなわけで女性達は、普段の冒険者用の服から女性らしい姿になっており、俺が見ても一瞬見惚れる程に華やかだった。


 筆頭は、やはり竜族のお姫様でもあるヘカティアとディアナだ。


 若い女神様と言われても信じれるほどの美貌を備えており、見た目が最初より成長したせいで女性らしいスタイルの良さを兼ね備えたようだ。


 二人とも白のワンピースだが、襟元に金と銀の刺繍がしてあるのを見て、いい仕事したなおばちゃん職人!と心の中でグッジョブと称賛を送った。


 二人のあとには、アイナとミラが入ってきた。

 アイナはオレンジ色のワンピースで、ミラが淡い薄紫色のワンピースだ。


 若い二人にぴったりなパステルカラーで、帽子でもかぶればそのままショッピングに行けそうだ。


 その後ろからサナティとマイニャとリンが入ってくる。

 サナティは薄いブルーのワンピース、そしてマイニャが黄色のワンピース、リンが薄いピンクのワンピースだった。


 マイニャは最初は断ったそうだが、メイアが断固としてそれ以外着せようとしなかったそうで、しぶしぶ着たらしい。


 『お洒落なワンピースなんて初めて着たので恥ずかしいです~!』と顔を赤くして言っていたが良く似合っていると思う。


 普段の服の方が露出が多いのに、女の子というのは不思議なもんだな。



 サナティはさすがお嬢様だ。

 ただ着ているだけなのに様になっている。


 元々美人な上に普段は冒険服ばかり着ているので、たまにこういう服装を見るとグッとくるものがある。

 それに浅黒い肌に、綺麗なブルーはほんと映えるし素直に素敵だと思った。


 リンはスカート部分がフリルになっている可愛いらしいワンピースだ。

 よく見ると後ろにリボンがついていた。


 この世界の服にしては、随分と凝った作りだな。

 年相応なのにお洒落で可愛いとは、この世界の職人の腕は侮れない。

 これは一度、おばちゃん職人に会いに行かなくてはならんな。


 ついついファッションショーを見ている気分になっていたが、祝勝会がメインだったのを忘れそうになるくらいみんな見惚れていた。


 さてと気持ちを切り替えて祝杯の音頭を取ることにした。

 全員が席についたところで、今回の遠征に労いの言葉を掛ける。


「今回、ユニオンとして初の仕事を一緒にさせてもらったが結果は上々…いや、想像以上だ。参加してもらった全員に感謝する、本当にありがとう!

 今回、最後にちょっとアクシデントがあり、結果的に仲間が増えたわけだが、改めて二人を紹介しておく。

 竜姫りゅうきディアナと竜姫りゅうきヘカティアだ。

 二人は皇竜の娘で長い間魔王によって支配されていた。だが、今回俺のカルマが封印を打ち破り、俺がテイムを成功させる事で元の姿に戻れたわけだ。

 俺は二人とスキルにより契約状態なので、みんなに危害を与えることは無いから安心して欲しい。これからは心強い仲間として迎い入れて欲しい」


 そう言うと、二人はすっと立ち上がって深々とお辞儀をした。

 元々の育ちが良かったのか、その動きは洗練されていた。


「じゃあ、長い話はここまでだ。みんな、今回の遠征で受けたクエストはすべて成功だ!おめでとう!今夜は心ゆくまで楽しんでくれ!では、かんぱーーーい!」


「「「かんぱーい!」」」


 みんなは早速、コック長ルガーおススメの料理に手を付けつつ、嬉しそうに焼いたパンと一緒に食べていた。


 俺とガントのおっさん二人は、酒を飲みつつ今回の事や、みんなの成長した事とか、色々と話しに華を咲かせていた。


「そういえば、リンとシュウ。明日はついにランクアップだな。朝ギルドがオープンしたら早速行くからな」


「うん、わかったよユートさん。もう、久々のランクアップだから、実は今からウキウキしているんだ。ステータスも上げれるようになるし、もっともっと強くなりたいよ!」


「うんうん!私も!やっと、一歩パパに追いつけるよ。私も、もっと強くなって色んな所について行きたい!」


「そうかそうか、俺も二人がランクアップ出来るのは本当に嬉しいよ。今日は一杯食べて、早く寝て明日に備えるんだぞ?」


「「はーい!」」



 食事が終わったあとは、みんなとダイニングルームへ移動して歓談した。


 ユニオンの活動がある程度うまくいったら、みんなで旅行とかもいいかもなとか、そんな他愛のない話をしていた。


 マナティやライ達は旅行自体をしたことないというので、さっきカルマとの話で出ていた”温泉”もいいかもしれないと話をしたら、是非とも行きたいという事だった。


 カイト達のランクアップクエストの件もあるので、しばらくは行けないだろうが、それが終われば少し余裕が出来るだろう。


 そのあとに旅行がてらに、南大陸”サウサリス”へ行くのもありだな。

 南大陸と言えば火山だし、でもあるしな…。

 きっと、そこで会えるだろう。


 その後も、みんなで旅行へ行くのなら何処に行きたいとか、色々な話が飛び出し楽しいひと時を過ごすのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る