第91話 旧王城での戦い

「じゃあ、ボス参加メンバーを発表するぞ。参加者は…」


 ボス戦は俺とカイトのチーム全員、ニケとカルマと、ピューイだ。

 ルベルをリンに預けて、ピューイと乗り換えてもらう。


 Bランクメンバーでは一撃で吹き飛ぶ可能性が高いので、今回は道中までの参加と説明をした。

 外の戦闘指揮と、素材回収をガントに頼んだ。

 すっかり板に付いてきたようで、『おう任せろっ』と言っていた。


 しかし”鍛冶屋の指揮官”か…、なんかの物語の題材になりそうな響きだな…。


「くそー、悔しいけど次回までお預けだね。ユートさん帰ってランク上がったらすぐスキル上げとステータス上げするから手伝ってよね!」


 とシュウが頼んできたので、勿論手伝うよと返事した。

 というか、ばっちりシゴキしますけどね…。


 シュウはここに来てかなりの成長を見せている。

 あのダメージ配分は狙っていたと思われるし、さすがゲーム大好きなだけあり、分かっている。

 

「じゃあ、私はパパ達が帰ってくるまで外でスキル上げするね」


「ああ、『空中戦闘術エアリアル』は特に上げておくといい。『騎乗戦闘ライドバトル』とも相性がいいから、戦略が広がるからな」


「分かったよパパ。でも戦略とか言われても良く分からないから、後で色々教えてね?」


「ああ、勿論さ。ただ、俺じゃ実演は出来ないから、そこら辺はカイトに実演して貰おうと思っているよ」


「!! はい、俺に出来ることなら協力惜しまないですよ。リンちゃんも気軽に言ってくれていいからね?」


 とイケメンスマイルでカイトが言うが、花が咲くような笑顔で『ありがとうお兄ちゃん!』と言われて、逆にカイトが轟沈していた。


 あの笑顔は、破壊力抜群だな。


「じゃ、準備出来次第に出発するぞ!各自最終確認してくれ」


 そう言うと、全員装備やアイテムストレージを確認してから立ち上がった。


 俺は、予めバフを掛けてから先頭に立って進む。

 決戦は旧王城の奥なので、そこまでは余計な手間を掛けたくなかった。


 先頭の俺とニケとカルマが、新スキルの『闘気法』と『練気術オーラ』で敵をボコボコにしていく。


 "デーモン"すら瞬殺していく様子を見て、若干引いていた。

 殿に、カイト達を置いているので後方にも被害はなく目的地まで到着した。


「こんなに早いものなのか?!」


「ダン、ランクというのはそれだけの差が生まれるのだ。気にしてもしょうがないぞ」


「ザイン…そうだな。自分が力をつけて追いつければいいだけだよなっ」


 二人はそう言いながらも、キッチリと横から来る雑魚を処理していた。


 ここで予定通りに二手に分かれた。

 ボス討伐チームが城の中に入っていくと同時に、城門前を残存チームで固めた。


「よし!全員気を引き締めろ!!ユート達が帰ってくるまでここが俺らの戦場だ!気を抜いて大怪我とかすんなよ!」


 ガントの号令と共にザザっと展開した。

 うん、あっちは大丈夫そうだ。


「頼んだぞ、ガント!」


「おうよ、そっちこそしっかりやれよ!」


 ガントの気安い返事を聞くと逆に安心する。

 軽い激励と共にリン達をガントに任せて、俺らは城の中に入った。


 

 中は正に化け物の巣窟と化していた。


 ”デーモン”が雑魚としてそこら辺をウロウロしてて、それを顎で使うかのごとく指揮している"アークデーモン"が複数いた。

 

 "アークデーモン"は、"エルダーデーモン"よりも肉弾戦に強い悪魔で、魔法の脅威はそれ程じゃないが『武技アーツ』によって強化した肉体でボコボコにしてくるのが特徴だ。


 スピードもあるし、油断は出来ない相手だ。

 いつもの通り、〈生物鑑定〉してみる。 


 上位悪魔アークデーモン ランクS 種族:上位悪魔 HP:4000/4000


 中々タフな感じだな。

 雑魚はカイト達に任せて、俺とペット達はアークデーモンを狙い定めた。


 既に全バフは掛けた状態なので、戦闘準備完了だ。

 さて、どう攻撃を仕掛けようかな…と思ったら。


「貴様ら下っ端が、我らの邪魔をするとは…身の程を知るがいい!!」


 とカルマが言ったと思うと、重力魔法"グラビディホール"を発現させて、目の前の悪魔達を吸い寄せた。


 グオオオオオオ!!?と悪魔達が焦るも時既に遅し。


 さらに上空へ駆けていき、そこから更に魔法を撃ち込んでいく。


「そのまま、潰れろ!そして主に平伏せ!!」


 その言葉と同時に、"アンチグラビティフィールド"と"ダークネスバースト"を撃ち放った。


 圧倒的な攻撃により、相手は地面に這いつくばる状態になっていた。

 この時点でデーモン達は魔法の威力に耐えきれず塵になって消えた。


 その中心から魂のようなものが溢れてカルマに吸い込まれていった。

 スキル〈吸魂〉が発動し、カルマの魔力が回復したようだ。


 だがそこで終わりではない。

 

「ふん、まだ耐えるか。これに耐えたら我が眷属にしてやろう。〈ホラーナイト〉!」


 アークデーモン達の周りに恐ろしい形相の影がグルグル回りつつ、鋭い牙で喰らいついていく。


「ほぅ、耐えたか…。ならば合格だ!」


 なんとか起き上がろうとするアークデーモンに、止めとばかりにカルマが急降下して闘気を込めた前脚で踏み抜いた。


 グオオオオオオ!と断末魔をあげて塵になり、カルマに吸収されていった。


「凄い!圧倒的ですね」


 カルマの一方的な攻撃による勝利に驚くカイト達。

 しかし、驚きはそこで終わらなかった。


「〈眷属召喚〉”アークデーモン”!」


 なんとカルマが今倒したばかりのアークデーモンを召喚した。


『ご命令を』


「我らの前に立ち、歯向かうものを屠れ」


『承知しました』



 召喚された”アークデーモン”は、ユート達の前に立ち他のデーモン達を倒している。


「こりゃあ、楽でいいな。どのくらいの時間召喚しておけるんだ?」


「はい、倒した敵の魂を与え続ければ、ここにいる間は大丈夫でしょう」


 なるほど。

 カルマが吸収した魂を与え続ければ半永久に召喚したままに出来るわけだ。


 HPは元の”アークデーモン”よりも遥かに低いが、”デーモン”達は問題なく倒してくれそうだ。


「このまま一気に階を上がるぞ。カイト達も遅れるなよ?」


「「「はい!」」」


 1階にはそれ以外には出なかったので、そのまま近くの階段を上がっていく。

 途中に”デーモン”が数匹出てきたが、召喚された”アークデーモン”に瞬殺されていた。

 さすが武闘派デーモン、殴るだけでどんどん倒していく。


 2階に上がり、大きなフロアに出た。

 そこにもやはり、”アークデーモン”と”デーモン”がいる。


 流石にアークデーモン同士だと召喚した方が分が悪いので、カルマが相手をする。

 武闘派のアークデーモン相手に、魔法を使わずに闘気を纏った攻撃だけで相手を圧倒していた。


 なんだろう…、ナイトメアってこういうのだったっけ?

 LBOの時は、張り付いて攻撃させつつ回復して互角くらいだったはずなのに、明らかにこっちに来てからカルマのスペックが格段に上がっている。


「ふむ、いいサンドバックだ。これならスキルの練習に丁度いいな」


『カルマ、もう一匹は私にやらせなさい。私も丁度いい相手が欲しいと思っていたのです』


 とカルマのみならず、ニケまで参戦し闘気だけのラッシュで”アークデーモン”を圧倒していた。


 うん、気にしたら負けだ。

 元から強かった、そうだ、きっとそうに違いない。


「…よし、召喚悪魔だけに頼ってないで俺らも戦うぞ。スキル上げにいいのは間違いないからな」


「了解です!さあ、俺らも行くぞ!」

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