第77話 ライの提案

「しかし、シュウ達の時も思いましたけど、ユートさん達って今まで何処にいたんですか?こんなに強い人達が急に何人も現れたとか聞いたこと無いですよ。父もそう言ってましたから、こんな事ないと」


 ギルド支部長も同じことを言っていたな。

 やはり、俺らは異質なようだ。


「そうか。ま、お前らには言ってもいいか。別に困る事じゃないし。異世界から来たんだ。俺の場合は、1ヶ月前くらいかな。だから、それまでは違う世界で戦ってたから、俺らの事を知らないのは当然だよ」


 とあっけらかんと暴露した。


「異世界…、普通なら冗談でしょうって笑うところなんですが、ユートさんたちの場合は納得いきます。やっぱりSランクのテイマーとか、Aランク5人組とか、Bランクの子供二人とか、登録してなかったとはいえ、噂にすらなってないのは不自然ですから」


「まー、そうだろうなぁ。俺らが思っているよりも、町の冒険者のランクが低いと思っていたが、こっちの基準だと俺らが高いんだよな」


 ちなみに、ランクがあがると冒険者としての格も高くなり、有名になる。

 なので、高ランクになればなる程人に知れ渡っていくと言う事だ。


 なおランクが上がると、ステータス上限やスキルの覚えれる数と熟練度の上限値が変わる。

 ランクアップの認定が下ると、儀式の間で不思議な力に包まれてパワーアップする感じだ。


 ランク毎の各上限値は決まっていて、以下の通りだ。


 G: 駆け出し 一番最初のランク ステータス最大値100 スキル最大値60 習得可能スキル数4個

 F: 初級冒険者 ステータス上限値120 スキル上限値70 習得可能スキル数5個

 E: 一般冒険者 ステータス上限値130 スキル上限値80 習得可能スキル数6個

 D: 熟練冒険者 ステータス上限値150 スキル上限値90 習得可能スキル数7個

 C: 上級冒険者 ステータス上限値200 スキル上限値100 習得可能スキル数8個

 B: 一流冒険者 ステータス上限値300 スキル上限値110 習得可能スキル数9個

 A: 超一流冒険者 ステータス上限値400 スキル上限値120 習得可能スキル数10個

 S: 超人クラス ステータス上限値600 スキル上限値150 習得可能スキル数12個

 SS: 英雄クラス ステータス上限値800 スキル上限値200 習得可能スキル数15個


 ちなみに、SSSランクはは到達出来ない神の領域と言われているので、実質SSが最高ランクとなる。


 また、魔族や魔物たちのステータスは、初期値が人間よりも高いので最大値も高いらしい。

 ここら辺もLBOの設定とは差分が無かった。


 ランクによる力の差は歴然だ。

 だからこそ、冒険者はランク上げを頑張るのだ。


 しかし、ランクアップクエストを受けるにも条件がある。

 それは1つ以上のスキルをカンストすることだ。


 その条件を満たし、ランクアップクエストをこなして初めてランクアップとなる。


 ゲームと違って、本当の死が待っているこのアストラでは、なかなかランクアップ出来ないのは当然とも言える。

 誰だって死にたくないからね。


「条件満たしたら、俺がランクアップクエスト手伝ってやるから、死なない程度に頑張れよ!」


 それを聞いて、おおおお!と歓声が上がった。


 高ランク冒険者の俺が居るだけで、成功率はかなり高い。

 と言うか、無駄足はしたくないので達成するまで帰さないけどね…。


「何故でしょう、一瞬ユートさんが悪い顔になった気がします」


 危ない危ない、サナティは勘が良さそうだからな。

 顔に出さない様に気をつけねば。


「ユートさんに提案があります」


「ライ、なんだ?」


「はい、私達がランクアップする前提で話をしますが、我々のチームと同盟を組んでユニオンを設立しませんか?」


「へ?ユニオン?…ってなんだ?それ創って、何かいいことあるのか?」


「はい、正直に言うと恩恵は自分たちの方が多いのですが、ユニオンを結成するとチーム合同で大型生物の討伐依頼を受けたり、相手の情報を確認出来たり、商売をした場合は利益の分配が出来たりします」


 なる程、複数のチームが集まって会社作るようなもんかな。


「ユニオンに代表者を立てるのですが、その者が全ての権限を持つことになります。もちろん、それはユートさんになってもらう予定です。そうすれば、利益の分配の権利は基本はユートさんとなります」


「なる程なぁ…、それでお前達にはどんなメリットがあるんだ?」


 お金稼ぐのは何も冒険だけでは無い。

 商売する事で、さらにお金を稼ぐことが出来る。

 その利権を俺に寄越したら、ライ達は大して稼げなくなるかも知れないのだ。


「それこそ、大型生物の討伐やランクアップクエストの助力など、今の実力以上の事が出来るようになります。今のユートさん達と一緒に冒険するのは、王国の英雄とパーティ組むような事と同じ様なものなんです!」


 さらに自分達では手に入れれない素材やアイテムを依頼ではなく、同行する事で手に入る。

 実力以上の敵と戦う事でスキル上げが効率的になる等、様々なメリットがある事を正直に言ってくれた。


 情報をテーブルに上げて俯瞰的に見ても、双方に利益があるな。

 強さだけが全てでは無い。

 まず手数が欲しいって言う時も多々とあるからだ。

 採取なんかがいい例だな。


 うん、断る理由はないな。

 まぁ、俺を騙すような真似をしたら、死ぬよりも辛いお仕置きがカルマ先生から待っている。


 想像してみたら、ゾッとした…うん、忘れよう。


「よし、分かった。その申し入れを受けよう。条件は、ライ自身が言ったとおり、ランクアップだ。いいな?」


 俺らもですかー!?と後ろのメンバーが騒いでるが、流石にCランク以下は必要がない。

 屋敷のメイドを連れて行ったほうがいいとか笑えないからな。


「分かりました!死ぬ気で各自の得意スキルを上げてきます。全員90くらいまでは上がってるスキルがあるので、2、3日待っててください!」


「ああ、任せたぞ?ライとサナティはさらに上を目指して貰うつもりだからな?」


 うぐっと言いながらも、望むところです!と気合を入れていた。


 サナティは、ただ喜んでいた。


 その後は、せっかくだからと全員を訓練場でしごいてから(俺は素手で。)、昼時になってからリビングで料理長の特製ランチを馳走した。


 いい運動をしたおかげで、より美味しく感じた。



 ───それから3日後


 俺は、相変わらずのんびりしながらも、設備の入替えや、備品の購入やらをゼフやメイアと共に進めていた。


 一気に大所帯になったので、色々揃えないといけない。

 男だけなら適当で良いんだけどねぇ。

 幸い、メイドが5人もいるので困ることはないみたいだが。


 そういや、試しにメイアに買い物を行かせてみた。

 外に出て行けるのか、行ってもバレないかを確認したかったのだ。


 結果は、問題なし。

 どうやら気配を抑える事が出来るみたいで、誰も鬼と思わないようだ。

 いいな、そのスキルと言ったら、スキルでは無く技術ですと言われた。


 それは何が違うんだ?


 銀色の瞳でジッと見つめてから、旦那様ならコツを掴めばすぐ出来ますよと藍色のポニーテールを揺らしながら笑顔で言われた。


 メイアは鬼人だけど、普通に美人なのでこの笑顔は反則だ。

 あの怒り狂っていたのが嘘のようだよ。

 

 見た目もかなり変化があった。

 出会った時には、血の気が無く精気を感じられなかったが、肌が薄桃色になり、血色も良くなり生きているように見える。

 というか、鬼人になった時点で別の種族に生まれ変わったと言える。


 ゼフは、元々白髪なので変わらず、瞳は同じく銀色で、肌は白人のような白だ。


 メイド達も、前まで幽霊だったのでモノクロだったのが色が付いた。

 髪の毛が全員銀色となり、瞳の色はバラバラで赤、青、紫、黄、緑と全員違うようだ。肌は陶磁のように白い。


 また、一緒に生活するようになってから、表情に柔らかさを取り戻していた。

 もはや、ぱっと見は人と変わらない。


「旦那様のお陰で私達は新しい人生を得たかのようです。これからは精一杯尽くさせていただきます」


 と笑顔で感謝するメイアがとても印象的であった。

 彼女らとの生活も、ここから始まるのだと改めて感じるのだった。

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