第63話 迷宮《ラビリンス》に突入
サニアを出発して1時間半経過した頃、
飛竜のスピードに合わせて飛んでいたが、それでもかなりのスピードだ。
カイトは全速力で移動していたつもりだったが、カルマとニケが追い抜きそうになるので、かなり責付かれた感があったようだ。
「正直言うと、地上を走るカルマには負けないと思っていたんですが、こっちが急かされる羽目になるとは…」
カイトが顔を引き攣らせながらため息をついた。
「ランクの差は大きいよ?カルマも既にSランクの領域にいるからな。そこらの飛竜では追いつけないよ」
苦笑いしながらも一応のフォローをする。
まぁ本当のところは、これでも抑えめで走らせてたんだけどね。
なんせもっと遠い天使の塔が1時間だったのだ。
そこよりも距離の短い
「飛竜は体力が限界だろう?ここに待機させておけ。脱出する時にへばってたら置いていく羽目になる。ここで休ませるほうがいいぞ」
それに脱出してから町に戻るのに飛竜もいないと人数的に連れて帰れない。
「…そうですね。グラン、ここで俺らの帰りを待っていてくれ」
カイトがそう言うとクァーンと返事した。
飛竜のグランにギルドタグを付けてから2日間分の餌と水を入れた袋を足元に置いた。
「あいつらを救出したらすぐに町に帰るからな、頼んだぞ?」
そう言いながらグランの首を撫でてダンジョンへ入っていった。
【
地上階から始まり、地下5階まであると言われている。
しかも1フロアはかなり広大で、町一つがすっぽり入るほどの広さだ。
なので、一度迷えば同じ入り口に戻ることは不可能と言われている。
また、方向感覚を鈍らせる魔力の霧が充満しているため、中で遭難して命を落とす冒険者はかなり多い。
その分出現する宝箱やドロップ品が豊富だったので上級者には人気が高かったが、死亡率もダントツで高かった。
この世界でも他のダンジョンと同様に同構造だとすると、地下4階以降はかなりの難易度になるので注意が必要だろう。
「それで、ここからだが…マップで経路を見せてくれ」
俺がそう言うとアイナがストレージから地図を取り出し、マッピングしたダンジョン地図を見せてくれた。
「ここからですと、しばらく真っ直ぐいってから時計回りに右方向へ進む感じで地下へ進みます。そこからは結構複雑ですね」
地図上をなぞりながら説明してくれる。
これならば、地下までは騎乗したままの方が早そうだ。
「じゃあ、地下への階段までは飛ばすぞ?アイナはカルマに乗ってくれ。ニケには俺とカイトが乗る」
「え?はい、わかりました」
聞いていたカルマもアイナを乗せるために背を低くした。
「乗ったまま行くんですか?」
カイトは不安そうだったが、カルマとニケの上の方が安全だったりする。
「大丈夫だ、余程の事が無い限りは落ちないから。ここの階層のモンスターなら二人に触れることも出来ないさ」
さあ早くと言って急かし、カイトをニケに乗せた。
二人が乗ったのを確認し、俺もニケに乗った。
そこから目的地まで爆走した!
ドドドドドドドドドドドドっと地響きに近い足音を鳴らし、スケルトンやらゴーストやらを蹴散らしていく。
先頭はニケで、俺の指示通りに道を進んでいった。
カルマは後ろから余裕を持って走っていて、時折天井から湧いてくるゴースト系モンスターを低級魔法で蹴散らしてくれていた。
「なんというか、想像以上の強さなんですね」
アイナは相手が低級モンスターとはいえ、数体が一瞬で塵に還っていく様を見て唖然としていた。
「Bランクくらいまでの相手は、こんなもんだけど?」
と俺が返答すると、二人して顔を引き攣らせていた。
ほぼ全力疾走に近い速度で進行したため、地下に入るまでに15分と掛からなかった。
地下1階は、C~Bランクモンスターまでしか出現しないので、そのまま進むことにした。
先ほどとは違い、道が複雑になったのでダッシュで進むというわけにはいかなかったが、そもそも大精霊の化身のニケがいるために、殆ど道を間違えずに進んでいく。
『主様、この先にはスケルトンナイトが複数体いますね。蹴散らしますか?』
「ああ、そうしてくれ。速度を優先したいので先手必勝で行こう」
『承知しました』
ニケがそう言うと、トルネードを出現させて狭い通路内にいるスケルトンナイトをバラバラにして吹き飛ばしていった。
「スケルトンナイト10体近くを瞬殺!?」
とカイトをまた驚かせていたが、いちいち構っていられないのでどんどん進んでいく。
本来の攻略なら素材を拾っていきたいところだが、今回はそれもしないでおく。
奥地でカイトを待っているであろう3人を救うには、採算とか考えている場合ではないからだ。
まあ俺は報酬があるので、元々気にする必要はないのだが。
さらに20分程して進んでいくと地下2階への階段が見えた。
カイトの話だと階段を守るモンスターとかは居なかったようだ。
だが、地下3階への階段前にはボス部屋があったらしく、そこでの戦闘は余儀なくされるということだ。
ちなみにその時に出たのはカース・ナイトという鎧にゴーストが乗り移った敵だったらしい。
ランクは調べるれる人が居なかったので詳しくはわからないらしいが、多分AランクくらいでHPが気持ち多かったということだった。
まぁそれくらいなら楽勝だろう。
地下2階はシャドウというレイスの強化版やらスケルトンナイトやらが多かった。
たまにランクBのシャドウナイトというのが出てきたが、
「確かに、この程度ならお前たちでも楽勝だよな。油断してしまうのも分かる気がする」
思わずぼそっと言ったが、聞いたカイトは苦虫を潰すような顔をしていた。
「慢心せずに進んでいれば、残った3人を置いていくような事にはならなかったですよね…」
「そこは否定しないな。けど、過ぎたことを気にしても仕方がないだろう。今はとにかく急ごう」
そう言うと、ニケも頷いてモンスターの残骸を作りあげていった。
ちらっと後ろを見ると、カルマが自分の影にレイスとかゴースト系を吸い込んでいるのが見えた。
あ、魂を吸収して回復しているなアイツと、思ったが口にするのは止めといた。
アイナは必至にしがみ付いていたので、自分の後ろで行われている事には気が付いていなかったようだった。
(本当は、しがみ付かなくても落ちないんだけどなぁ)
バレたらカルマを浄化するとか言わないよね…と一抹の不安を覚えたが心にそっとしまっておいた。
もちろんアイナが返り討ちに遭うから、そんな自殺行為な事を考えないで欲しいという意味だ。
───地下2階を30分程で制覇して、例のボス部屋の前に辿り着いた。
念のために全員がニケとカルマから降りて戦闘態勢を整える。
ただし、戦闘させるのはニケとカルマと決めていたので、先行するのはふたりだけだ。
俺はいつでもスキルで
中を見ると中央に描かれている魔法陣の上に、
中に入った瞬間に魔法陣が光り、鎧に黒い霊魂みたいなものが集まっていくのが見えた。
だが、次の瞬間。
「流ちょうに待つ義理はない。〈吸魂〉!」
とカルマが言った瞬間に、鎧いに集まる前に黒い魂がカルマに吸い込まれていった。
次の瞬間にガランと音を立てて鎧が崩れて地面に転がった。
「「…え?」」
カイトとアイナが呆気に取られてぽかーんと口を開けている。
「あー…、終わったな。うん、よし先に進もうか」
二人と同じ感想だが気にしている暇はない。
カルマとニケに常識とはなんだ?とか聞いちゃいけないのだ。
「私たちの冒険ってなんだったの?」
というアイナの言葉が全員を代弁していると言っても過言ではない。
…気を取り直して階段を下りていく。
ここからは、Bランクのモンスターが多数出てきた。
その中でも状態異常を仕掛けてきたり、闇魔法系を使ってくる相手が増えてきたのでちょっと鬱陶しい。
しかし個体の強さがそれほど強いわけではないので、今までと変わらないスピードで先に進んでいく。
よし、このままいけば、あと1時間もしないで目的地の場所までたどり着けるだろう。
間に合うといいが…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます