Turn273.剣聖『最後の一撃と自爆』

「……な、なんでやんすと……」

 勇者に向けて邪眼のグラハムは渾身の言霊たちを放ったが手応えがなく、愕然としてしまう。


 勇者にグラハムの力が通用していない──?


「駄目だったでやんすね……」

 追い込まれて動揺したグラハムは、とある結論に辿り着くのであった。

「勇者に……俺っちなんかが、手を出しちゃ駄目だったでやんす。勇者は……恐ろしい奴でやんす」

 ガタガタとグラハムは震え、勇者に恐れ慄いたものである。


「先生ぇええええぇぇええっ!」

──ドリェンの叫びが木霊するが、最早その声はグラハムの耳には届いていない。



 ◆◆◆



「隙ありだっ!」

 剣聖アルギバーが余所見をしていたドリェンに向かって剣を振るう。

「……あ……!」

 ドリェンがそのことに気が付くのは少し遅かった。

 アルギバーが剣をおさめるとドリェンの体は真っ二つに切り裂かれ、その場に崩れ落ちたのであった。


「これで終わりだな……」

 ようやく決着がついた──。

 そう油断していたアルギバーに、ドリェンは笑い掛ける。

「……終わり? それは違いますね。先生の脅威となる者は、……先生には近付けさせない……!」

 ドリェンの体が発光する。

「これは……!?」

 アルギバーはドリェンが何を考えているのか察して、大いに慌てたものである。


「我が魂と引き換えに、全てのものを焼き尽くせ──アームボトムボム!」

 ドリェンがその呪文を口にしたのと同時に爆発が起こり──周囲は爆炎に包まれたのであった。

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