Turn264.剣聖『荒っぽい戦い』

「畜生……なんて馬鹿力だよ……」

 殴り飛ばされたアルギバーは、かなり森の奥にまで飛んでいた。

 多くの草木を薙ぎ倒したお陰で全身がボロボロになっていたが、それでも動けないほどではない。


「ウガァアアアァッ!」

 ドリェンが咆哮を上げている。


「クソッ、オーガ族か……」

──オーガは確かに戦闘能力が高くパワーに特化した魔物であるが、あそこまでの力を持つまでに成長はしない。あれはオーガというか──もっと別の魔物へと変貌しているような気がした。


「……ん?」

 ふと、何かが太陽光を遮ったので影が出来た。

 見上げると──何か空に丸いものが浮かんでいた。

──浮かんでいる?

 いや、違う──。

 それはこちらに向かって落下してきていた。

「うぉおおっ!」

 そのことを認識するのが遅れ、気が付いたアルギバーは慌てて飛び退る。


──ドガーンッ!


 巨大な岩の塊がアルギバーの元居た場所へと落下し、激しく音を立てたのであった。



 ◆◆◆



「ガァアァアアアッ!」

 ドリェンの血は滾り戦いを欲してはいたが、一撃を受けたアルギバーはなかなか姿を現さない。

 業を煮やしたドリェンは巨大な岩を地面から引っこ抜き、森に向かって放り投げた。


「ゴォオオオオッ!」


 咆哮を上げながら雨霰の如くドリェンは岩を引っこ抜いては投げ、石の飛礫を放っていった。

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