Turn256.剣聖『戦場はどこ?』
「……それで、お前が勇者様に手を出している魔物なんだよな?」
ドリェンを探し当てたアルギバーだが、当てずっぽうなので一応再確認のために聞いてみる。
ドリェンは口を噤んでいた。
もう既に正体はバレているのだから別に嘘をつく必要もないし、いらぬ事を口にしてわざわざ相手に情報を与える必要もないと考えたからである。
「まぁ、そうなるか……」
当然であろうが、素直に教えて貰えそうにない。
通りの真ん中で揉め事を起こしているアルギバーたちの周りに、徐々に野次馬たちが集まってきて周りを取り囲む。
「ここだとなんです……。場所を変えるとしませんかね?」
ドリェンの方からクスクスと笑って提案をする。
「僕は別にここで多くの犠牲を出しても構わないですけれど、そちらは都合が悪いでしょう?」
周りに集まった人間たちをドリェンは睨み、殺気を放つ。それに気が付いた野次馬たちは悲鳴を上げて後退るが、呑気な何人かはその場に留まっている。
「おい、待て……!」
無関係な人を傷付けるのはアルギバーとて本意ではない。
「そうだな。場所を移して貰おう。ついて来い」
アルギバーはドリェンに背を向けて歩き出した。不用心なその背中にドリェンは襲い掛かろうとしたが──しっかりと警戒されていて、隙がまるでなかったので諦めた。
「……少しはやるみたいですね……」
ドリェンはボソリと呟き、口元を歪めた。
「……まぁ、僕としても、そちらの方が都合良いので……」
チラリとドリェンが送った視線の先には、人混みの中で状況が分からず困惑し、立ち尽くすグラハムの姿があった。
グラハムの存在は、まだアルギバーたちには気付かれていないようだ。
「……先生さえ逃がせれば、それで構いませんからね……」
ドリェンはグラハムを逃がすために、この場からアルギバーたちを遠ざけることにしたのだ。
その策にまんまと乗ってしまい、アルギバーたちは目的の人物から遠ざかってしまうことになるのであった。
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