Turn246.魔界演奏家『投げやりな言葉』

 ドリェンに半ば担がれるように、グラハムは山道を引っ張られて歩かされていた。

──どうなったのか戦局が分からない。

「コトハは……コトハはどうなったでやんすか!?」

 グラハムは状況を知ろうと何度も叫んだが、ドリェンに無視されてしまう。

 しばらく歩かされた後、ドリェンが口を開いた。

「先生、もうすぐ宿ですから我慢して下さい。お疲れでしょうけど、そこまでは頑張って下さい……」

 心なしか、ドリェンの声は震えているように感じられた。

「コトハは? コトハはどうしたでやんす?」

 再度、グラハムは繰り返す。相変わらず、ドリェンは答えてくれない。

「そうで、やんすか……」

 それでグラハムは全てを悟った──。

 コトハは敵の足止めをするために──グラハムたちを逃がすために自らの身を犠牲にしたのだろう。


「俺っちの、せいでやんす……」

 グラハムは足を止め、その場に屈み込んでしまう。ドリェンはグラハムを元気付けようと首を横に振るった。

「先生のせいなんかじゃありませんよ。相手がコトハより強かっただけですから」

「いいや、俺っちの……俺っちのせいでやんすよ……。俺っちが、ちゃんと弾いていれば……」

 俯いたグラハムは、手で顔を覆う。


「終わりでやんすよ……。もう全てどうでもいいでやんす。『消エロ』!」

 全てを投げ捨てる様に、グラハムは自暴自棄になって叫んだのだった。

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