Turn245.勇者『報酬の缶ジュース』

 ストラックアウトの結果は──。


──僕が五枚。

──松葉が一枚であった。


「……くっそぅ……」

 悔しそうに松葉は唇を噛んでいた。

 苦戦を強いられるかと思ったが、意外にアッサリと松葉に勝利してしまう。

 聖愛は四枚、紫亜は三枚と健闘しており、どうあれ松葉は最下位である。

「じゃあ、松葉君が罰ゲームだねー」

「……まさか、負けるなんてね……」

 松葉はブツブツと呟きながら自ら進んで自動販売機へと向かって行った。そして、戻ってきた松葉は両手に缶ジュースを抱えていた。

「いや、買いすぎじゃないかな。そんなにいらないよ」

「……違う……」

 僕が遠慮するように言うと、松葉にギロリと睨まれた。


「……聖愛ちゃん……ど、どどどど……どうぞ……」

 モゴモゴと口ごもりながら松葉は抱えたジュースの缶を聖愛に差し出した。

「どういうことかしら?」

 首を傾げる聖愛に松葉は「負けた方がジュースをおごる……せっかくだから、どうぞ……」と、聞き取りにくい小さな声で言った。

 どうやら気を利かせて女子たちの分も買ってきたらしい。

「そんな、悪いわよ……」

「……うーうん、いいのさ……」

「貰わないと残っちゃって悪いから、私達も貰っちゃいましょーよ」

 横から紫亜がヒョイと、炭酸飲料の缶を手に取る。

 松葉の顔が少し曇ったのは、初めに聖愛に選んでもらいたかったからであろう。

 だが、先に紫亜が動いてくれたお陰で、取りやすい雰囲気にもなっていた。

「じゃあ……それ貰おうかしら。ありがとね」

 聖愛もそれに続いてお茶の缶を指差す。

 すると、松葉はニンマリと嬉しそうに笑い、お茶の缶を手渡した。


 そして松葉は、残り物の一つ──紫色のパッケージに英語で文字が書かれている謎の缶ジュースを僕に渡して寄こした。

「なにこれ……?」

 自動販売機から購入したものであるから、ちゃんとした商品であることは間違いないのだが、自分でジュースを購入したとしてもとても選びそうにないものであった。

「ありがとう……」

──まぁ一応、何であろうと貰えたものだから感謝の言葉を述べる。

 松葉はプイッとそっぽを向いて僕の謝意を無視すると、残ったオレンジジュースの缶を開けて口を付けていた。

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