Turn238.剣聖『解き放たれたミイラ男』
──ハァ……。
ようやく棺桶の中から解放され、自由を手にしたアルギバーは大きく深呼吸をした。
あんな窮屈な場所に長らく閉じ込められていたのだ。ストレスは半端なかった。
オマケに一度ならず二度までもコトハから攻撃を食らって──棺桶を大きく揺さぶられたのだ。棺桶の中で揺さぶられて、不愉快な思いをさせられたアルギバーは相当に鬱憤が溜まっているようであった。
ギロリと、アルギバーはコトハを睨み付ける。
──コトハは何かを察し、後に跳んでアルギバーとの間合いを取った。
「……ミイラ男風情が隠れていたなんてね……」
──ミイラ男。
コトハの言葉で、アルギバーは改めて自分の格好を思い出し、恥ずかしくなってしまったものだ──。
魔物の野営地に侵入するに当たり、アルギバーも魔物っぽい変装とやらをピピリに施された。
──と言っても簡単なもので、全身を包帯と鎖でぐるぐる巻き──。
「う〜ん……、なのね……」
出来上がったミイラ男に納得がいかないようで、ピピリは顎に手を置きながら首を撚っていた。
「こんなんじゃ、すぐに正体がバレてしまうのね」
「いや……なら、バレないような変装をさせてくれよ……」
──結局、臭い物には蓋理論。アルギバーは棺桶の中に閉じ込められることで変装をなきものとされてしまった。
剣を構えたアルギバーは、コトハと対峙する。
「ただのミイラ男だと思って掛かると、痛い目を見ることになるぜ?」
「……威勢だけは良いようね……」
先に動いたのはコトハで、アルギバーに向かって駆け出した。
「手加減はしないぜ!」
アルギバーも駆け出し、コトハとの間合いを詰める。
「てぇえええぇええい!」
「おりゃあぁあああぁああ!」
──雄叫びを上げた二人は、拳と剣を交えるのであった。
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