Turn229.勇者『バスケットボール遊び』
アミューズメント施設──スポーツラウンドの玄関口。
「やっほー!」
先に到着していたらしい紫亜が、聖愛の姿を見付けるなり手を振りながら駆け寄って来た。
「……あれ? 一緒に来たの?」
そして、聖愛の隣りに居る僕の顔を見て、紫亜は首を傾げた。どうやら、僕が同行することを紫亜には伝えていなかったようだ。
「彼はボディーガードに来てもらったの」
「ふぅーん……。まぁ、人数多い方が楽しめそうだから良いけど」
うんうんと紫亜は自分で納得して、急な飛び入り参加の僕を受け入れてくれた。
「でも、いーい? これは、聖愛を元気付けようって集まりなんだから。しっかり盛り上げてよね」
「ああ、うん……尽力よ……」
◆◆◆
そうしたやり取りを終えた後、僕らは自動ドアを潜ってスポーツラウンドの施設内へと入った。
ドアが開いた瞬間、スピーカーから流れている陽気なバックミュージックが聴こえてきて胸が踊ったものである。
僕らは取り敢えず、施設の全貌を知るためにフロアーマップが掲示されているエレベーター前に行った。五階建てのアミューズメント施設は一階が受付になっていて、他にもUFOキャッチャーなどの気軽に遊べるゲームが設置されているようだ。地下一階には音楽ゲームやアーケードゲームなど、やり込めるゲーム機が置いてあるフロアーとなっているらしい。二階三階はダーツやビリヤード、ボウリングなどが遊べる。ここまでは大型のゲームセンターならよく見る光景である。
ただ特徴的なのは、三階以上に野球やサッカー、釣り堀などのちょっとした体を動かせて楽しめるアトラクションのようなものがいくつかあるというところである。
「どこに行く〜?」
「うーん……。まぁ、上からかなぁ〜」
──そんな簡単なノリで、僕らは手始めに最上階に上がって遊ぶことにした。
屋上はフットボールコートやテニスコートなどネットでブースが区切られており、好きなスポーツで遊べるようになっている。
「バスケ、やりましょうよ」
「いいね、いいね!」
聖愛が目についたバスケットコートを指差し、僕らに促した。当然、断わる理由もないので僕らも聖愛に続いてコートの中に入った。
聖愛は肩慣らしとばかりに置いてあったボールをバウンドさせる。
3on3用のコートでゴールは一つしかない。僕らは三人組だったのでチーム分けは難しいところであった。
「……女子チーム対男の子に分かれましょうよ」
予想はしていたけれど、紫亜の提案で僕は一人チームにされてしまう。二体一の、人数的に不利な試合が始まった。
ジャンケンで決めることも特になく、先攻の聖愛が速攻でボールをバウンドさせながらゴールコートへ向かって走った。
僕は──バスケットボールのルールは漠然としか分かっていなかったが、取り敢えず聖愛の動きを止めるように、前に立ち塞がって両手を広げた。
聖愛は動きを止めるしかなかったようだ。シュートを打つためにボールを両手で持ったので、させるものかと僕は跳んでそれを防ごうとする。
──が、フェイントだった。シュートをすると見せかけただけで、横に居たノーマークの紫亜にパスを繰り出す。
「甘いわっ!」
「うわっ!」
予想外の事態に対処しきれず、僕は慌てた。一度跳んでしまえば、後は重力に従って地面に着地するまで何もすることはできない。
「いっけー! スリーポイントシュート!」
紫亜が勇ましく叫び、思い切りボールを放り投げた。
──入れられる……!
そう思ったが──ボールはバックボードにぶつかって盛大に吹っ飛んだ。そのまま場外へと飛んでいってしまう。
「あっちゃ〜」
「どんまい、どんまいよ」
大胆な紫亜のシュートに、聖愛は苦笑をした。
──まぁ、お遊びだからこんなものか……。
もしも試合であれば叱られそうな紫亜のトンデモシュートを見て、改めてこれがお遊びであることを思い出す。その割に、真剣な聖愛を前に僕も少し本気になってしまっていた。
その後もバスケットボールは続いて、疲れを感じた紫亜と聖愛は交代交代に抜けて体を休めた。
──勿論、一人チームの僕は、ぶっ通しで二人の相手をさせられたのだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます