Turn226.小悪魔『傷ついた魔物』

 テントから出たピピリは、魔物の野営地を偵察することにした。歩きながら少しでも情報を得ようと、キョロキョロと視線を動かした。

 野営地には様々な種類の魔物たちが滞在しており、見掛けたのはガーゴイルやゴーレム、デスワームやコンゴなど──強力な魔物ばかりであった。

 そのどの魔物も負傷していて、まるで戦地から帰ってきた後のようである。

 恐らく、オールゴーの町で負った傷なのだろう。やはりあの町に、魔物たちを倒せるような強力な能力を持った何者かが居たらしい。


『おおっ、ちょうど良いところに!』

 ここまで道案内をしてくれたガーゴイルが、ピピリの姿を見付けるなり駆け寄ってきた。

 いくら友好的とは言え、モンスターに接近されれば本能的に体が強張ってしまう。

 そんなピピリの態度に気にした様子もなく、ガーゴイルは声を上げた。

『勇者の仲間を仕留めたアンタに、実は折言って頼みがあるんだが……。裏切り者を討伐するのを手伝ってもらえないかね?』

「裏切り者……なのね?」

 ピピリが首を傾げると、ガーゴイルは頷いた。


『ああ、そうだ。あのクズ野郎、許さねぇ! ただじゃおかねぇ!』


 ガーゴイルとは違った別の苛立った低い声が建物の中から聞こえてきたので、ピピリは視線をそちらに向けた。布で片腕を吊ったサイクロプスが、建物から出て来てギリギリと歯軋りをした。

「西の町だ。……どうやら、そこに奴らは居るらしい。調査に行った連中が、それらしき人物を見付けたらしいぜ」

『おおっ! そんなら、やっつけに行こう!』

 サイクロプスの言葉に、魔物たちは活気付いた。余程その三人組とやらに恨みがあるのだろう。

 血気盛んに武器を掲げて、咆哮を上げ始めた。


「人数は多い方が良いだろう。お前もついて来い、新入り!」

「は、はぁ……なのね……」

 サイクロプスにギロリと睨まれると嫌とは断れず、仕方なくピピリも血に飢えた魔物たちの一行に加わることにした。

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