Turn159.薬学師『魔の森の毒植物』

 魔の森を突き進むお姫様たちの行く手を阻むかのように、突如として地面から現れたのは植物の茎である。それもただの植物ではなく、花を開くと牙のような鋭い突起を剥き出しにした獰猛な肉食植物である。

 肉食植物が葉を振るうとそこから胞子のようなものが放出され、辺りを漂った。

 それを吸い込んだ兵士たちはむせ返り、咳き込んでしまう。

「なんだ、これは……ゴホッ、ゴホッ!」


 それがどういった行動であるのか──いち早く気が付いたのは十三人の依り代の一人、デルガン・ピリーチェであった。

 その胞子には強い毒の成分が含まれていることを、デルガンは知っていた。吸い込んだ者は激しい毒症状に襲われ、徐々に生命を蝕まれていくことになる。

「吸い込んではなりません!」

 口元を布で覆いながらデルガンは叫んだが時既に遅く、この場に居る誰しもがその胞子を吸い込んでしまっていた。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」

 咳き込み、倒れていく兵士たち──。

 再び訪れた絶体絶命の窮地──。


「勇者様。どうぞ、我々をお守り下さい……」

 冷や汗を掻きながら、デルガンは天に祈りを捧げるのであった。

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