Turn114.偽勇者『一撃必殺の剣』
「勇者様にこちらを差し上げましょう」
そう言いながら、戻ってきたロエニーがロディッツィオに差し出したのは鞘におさめられた剣である。
「これは……?」
「我が家に伝わる、一撃必殺の剣です。特殊な魔法が掛かっていまして……意識を集中し、これを相手に突き刺せば、どんな相手でも必ず一撃で仕留めることができるという業物です」
「へぇ、そんな凄いものが……」
ロディッツィオは単純に興味本位でその剣を受け取り、あちこち見回した。
「ただ、これは消耗品ですので置きお付け下さい。どんな魔物であろうとも一撃で倒せますが、同時にこの剣も壊れてしまいますから……」
ロエニーの説明を聞いたロディッツィオの顔が強張る。
「そんな……家宝なんでしょ? 受け取れないよ。そんな、高価なもの……」
返そうとするロディッツィオの手を、ロエニーは掴んだ。
「お持ち下さい、勇者様。これは、勇者様にお持ち頂くべきものなのです」
「でも、使ったら壊れてしまうんだろう?」
「構いません」
ロエニーは、首を左右に振るってみせた。
「勇者様のお役に立てるのであれば、それが例え、野良のスライムであっても魔力の低いモンスターであっても構いません。必要な時に使って頂ければ構わないのです」
「そんな高価なものを、その辺の敵に使えやしないよ……」
「勇者様がそう思われるのでしたら、その剣を使わなくても済むように、力を取り戻していって下されば良いでしょう。貴方様には、その力があるのですから」
──なるほど、とロディッツィオは思った。
一回で消費される短剣を使いたくなければ、その分、自分が強くなっていかなければならない。
ロエニーのお陰で、ロディッツィオの中に目標ができたものだ。
「ありがとう。これは、有り難く頂戴するとするよ。そして……これを使わなくても良いように、僕も力をつけて頑張るよ」
頷いたロディッツィオの表情は生き生きとしていた。
「ふふ、良い顔ですね。私も、少しでも勇者様のお役に立てたのならば、嬉しい限りですわ」
「ありがとう。僕も、強くなるとするよ。……勇者として、相応しい器になれるように……」
ロディッツィオはそう決意し、そう奮起させてくれたロエニーに感謝をして握手を交したのであった。
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