Turn80.魔王軍魔導師『動き出す強者』

 遠目に戦局を見ていた魔王軍幹部の魔導師ペデロペは、事態の急転に驚かされた。

 城を包囲し、続々と城内に押し入ったデスサタンの群れ──。こちらが優位であることは、明らかであった。

 ところが、そんな優位な状態でデスサタンの群れは一瞬にして消し去られてしまった。


 ペデロペ自身も放たれた未知の魔法に身の危険を感じたものだが、少し離れた場所に居たので運良く魔法の標的にならなかったようだ。

「あれは、何だったのだ……?」

 長く魔王軍の幹部として席を置くペデロペであったが、あんな強力な魔法を見るのは初めてであった。

 もしも、そんなことができる人物が居るとすれば──。

「まさかな……」

 ペデロペの頭に不安が過ぎる。

「勇者が再び、この世界に現れたとでもいうのか? 魔王様の恐れていたことが現実に起こっただと……。いや、そんなはずがあるわけがない……」

 ペデロペは唇を噛んだものである。

「しかし、だとすれば雑兵などでは役不足だろう。勇者にとどめを刺すとすれば……私が直々に行かねばなるまいか」

 ペデロペは城を睨み付ける。


──今らならば、戦いが終わった後で、油断をしているかもしれない……。


 そして、草むらに身を忍ばせながらガサガサと城に向かって移動を始めた。

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