Turn74.姫『悪魔の群れ』
「て、敵襲ですっ! お姫様!」
血相を変えた兵士が、叫びながらお姫様の部屋へと飛び込んできた。
お姫様も、窓から外の様子を見ていて既にそのことには気が付いていた。凶悪な顔をした悪魔たちに城の周りを包囲され、お姫様の表情は強張る。
「これは……やるしか、ありませんね……」
お姫様の声は怯えで震えていたが、それでも覚悟は決まっているようであった。
「姫様のことは、私がお守りします。ここに居て下されば、問題ないでしょう」
テラの言葉に、お姫様は頭を振るった。
「そう言うわけにもいきません。私の身寄りも、勇者様のために……依り代様たちをお守りしなければ……。私は、広間の方へ向かいます」
「何ですって!?」
傍らで聞いていた兵士が、お姫様の言葉に驚かされて声を上げた。
依り代たちは、所詮は寄せ集めのメンバーである。
確かに必要な人材たちであるかもしれないが、お姫様の方がずっと位は高いのだ。
──それなのにお姫様は、自分よりも身分の低い依り代たちのために動こうというのだから、一介の兵士に理解できないのは無理もない。
「この世界を救えるのは勇者様だけなのです。そんな勇者様を身に宿すことのできる依り代様たちもまた、同様に大切な方たちです。……この世界のためには、私の命よりも優先して依り代様たちをお守りせねばならないでしょう……」
お姫様の言葉に──決意に、テラすらも反論ができないようであった。
そんなテラを、お姫様は見据える。
「私は依り代様たちのところへ向かいます。テラ様は兵たちに指揮をお願いします」
お姫様はテラに全てを託し、部屋から飛び出していった。
「よ、よろしいのですか……?」
兵士が困惑した表情を浮かべ、テラを見る。
「城の中ならば、大丈夫でしょう。私達が、魔物たちに攻め入らせなければ済むことです。私達も、覚悟を決めねばなりませんね……」
テラは窓から飛翔する悪魔たちを睨み付け、ギュッと手にした杖を握り締めた。
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