Turn67.勇者『絡まれ事』

「ひゅ〜っ、ひゅ〜!」

 なんという場違い。

──このタイミングで、僕と聖愛の会話に茶々を入れて来る者があった。

 坊主髭面にサングラスをかけた男である。


 僕らが視線を向けると、彼はのっそりと僕らに近付いてきた。その背後には、金髪少年ハチとオールバック少年ブチの姿もある。

「ずいぶんと見せ付けてくれんじゃねーか。お嬢ちゃん〜、俺らも混ぜてくれよ」

 坊主髭面にサングラスの男が、聖愛の手を掴む。

「ちょっと、やめて下さい!」

 聖愛が拒むが、坊主髭面サングラスの男はニヤニヤと黄色い歯を見せて笑うばかりである。


──パシンッ!


 聖愛の平手が、坊主髭面サングラスの男の頬にヒットする──。男は頬を押さえながら、その場にドカリと尻餅をついた。

「何しやがるんだ、コラァッ!?」

 怒声を上げるハチを、坊主髭面サングラスの男が手で制する。

「いやぁー、威勢がいいってぇのは最高だねぇー」

 平手打ちをされた当人は、怒るどころかどことなく満足気である。

「おーし、お嬢ちゃん、気に入ったぜ! 一緒に遊びに行こうや!」

「きゃっ!」

 再び強引に坊主髭面サングラスの男から手を引っ張られたので、聖愛から悲鳴を上がる。


「待て!」

 これ以上、見過ごすわけにもいかない。

──いても立ってもいられなくなり、僕は思わず声を上げた。すると、坊主髭面サングラスの男は動きを止め、眉間に皺を寄せながらこちらに顔を向けた。

「あぁぁん?」

 かなり不機嫌そうな、ドスの利いた声──。

 どうやら、男には容赦する気がないらしい。僕に対しては、完全に敵意剥き出しだ。


 坊主髭面サングラスの男は顎をシャクった。

 それを合図に、ブチとハチが睨みを利かせながら僕に近付いてきた。

「んだよ、テメェ。文句あんのか、コラァ!」

「やんのかぁ? あぁん?」

 かなりの威圧感や圧迫感である。でも──それに足が竦むことも──怯えることもなかった。

 何故なら、僕には自身があったからだ。こんな連中、簡単にちょちょいとやっつけることが出来るだろう。

 聖愛に危害を加えようとする彼らに、僕は怒りが沸いてきたものである。拳をきつく握り締めた。

「あぁん?」

 さらに至近距離まで迫って来た金髪少年ハチを殴り飛ばしてやろうと、握った拳を振り上げた──その時であった──。

 不意に、視界がブラックアウトする──。


──真っ暗闇。

──音も消える。

──何も感じない。


 しばらくして、徐々に視界がハッキリとしていく。

 僕は、山道に立ち尽くしていた。

——しかし、先程まで居た場所とは景色が違う。

 それより何より不可解なのは──目の前に鋭い牙を剥き出しにした、巨大は獣が居たことであった。

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